使うモノ語り   作:イヤマナ ロク

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第42話 風に乗ってやってきたのは

「何の用だ?」

ユーザはシャーバランに尋ねる。

 

「それは、その……何というか…」

シャーバランは最初は意気揚々と呼びかけたのに途端にモジモジと口籠もり出した。

「ん?何だよ。それじゃ分かんないだろ?」

ユーザは目を細めながら腕を組んでシャーバランに近づいた。

 

「いや……その…」

シャーバランは未だに口を開けずにいる。

「早くしてくれないか?オレ今急いでるんだよ!」

「この辺のさ、何か面白い所とかないか?」

「え?」

咄嗟に雅之が答え出す。

「いや、なんか彼女がこの世界のこと知りたいから色々見てみたいって言い出したんだけど……人と会話したことほとんど無いからどう聞けばいいのか分かんなかったぽくてさ。」

「イヤッ!そんなはっきり言わなくても……」

 

2人の今のやりとりを見てユーザとハーズはニヤニヤし始めた。

「ふーん………あぁそういう事?」

「あぁあぁ……なるほどねぇ?」

(マズイ!なんか勘違いしてる!)

「???マサユキ、なんでこの人達突然ニヤつきだしてんの?」

シャーバランはキョトンとした顔で雅之の方を見る。

(いっいや分かんねぇのか!てかオレに聴くなよっ!でも黙ってたらコイツらの思う壺だ!)

 

「いっいや別にそんなんじゃ無いですよ!そもそも彼女は人間でオレの体はベルだし?彼女は本当の本気でこの世界を!ウォータスを!知りたいですよ。分かりますか?」

雅之の物凄い剣幕にユーザとハーズはやや押された。

「あっそう?………湧水の森とか、ラジョーア一の海鮮市場とか色々あるけど、手っ取り早いのは海岸とか?ウォータスって言ったらやっぱそれかなぁ。こっから西に向かってまっすぐ歩けば辿り着けるし。」

「じゃあボク達はこの辺で、楽しんでね〜!」

ユーザは足早に去っていってしまった。

 

「………じゃあ海岸行こうか?」

「分かった。」

シャーバランは西に向かって真っ直ぐ歩き始めた。

 

走りながらユーザ達は2人について話していた。

「付喪神と人間のそういうのってアリなのかな?」

ハーズの疑問に対してユーザは「んーと……」と考えながら言葉を捻り出す。

「まぁ、その辺はオレ達が首突っ込む事じゃねぇと思うけどな?オレ達が出来るのはああいうのを災難から守る事だと思うだからさ。だからこそ」

「迅速に解決しなきゃって事だね?」

「そいこと。取り敢えず事務所に戻って色々考えよう。」

ユーザは事務所へと駆け足を早める。

 

事務所へ戻るとザッドとリンだけで無くタキガワとキンセツも戻っていた。

「ただいま。あぁタキガワさんもいるのか。」

「キンノミヤ様から話は聞きました。」

「それなら話は早い。実はさっき、実際に中古屋の店主と会ってきたんだ。」

それからユーザは店主の体調は良くなっている事。事件の裏にはチェインが関わっている可能性が高い事を話した。

 

「やっぱそうだろうと思っていた。」

「あぁ……チェインは一体何を企んでんだろうな。」

ユーザ達が考えているとキンノミヤが口を開く。

「なぁ?そのチェインって言うのキョクアからウォータスに、注射跡のある付喪神を持ってきた組織でもあるんだよな?」

「あぁ。その可能性は高いな。」

それを聞いたキンノミヤは首を捻った。

「そもそも、その注射って何の為の物なんだ?」

キンノミヤの疑問にユーザは

「少なくとも良いもんでは無いだろうな。でもコイツら見た感じだと何も無さそうだけど。」

外にいるザッドとリンの方向へ目を向けながら答える。

 

「そう。良いものでは決してないだろう。だとしたらおかしくないか?そんな怪しい細工がしてある物をよりによってこんな異国の地の中古屋に置いていくなんて。」

「キンノミヤどうした突然……」

ユーザの呟きを無視してキンノミヤは続ける。

「だから、傍から見れば怪しい物だというのは自分達でも嫌と言うほど分かってるはずなんだ。こういう裏社会の人間は外聞をより一層気にするからな。なのに中古屋に持っていくていうカタギの人間の手に広まるような、分かる人間には分かるような手段をとっている。まるで分からない。」

キンノミヤは自らの見解を展開していると

 

「何で広まったらダメなんだ?」

バカ医者が突然口を挟んできた。

「お前……理解できてないだろこの話。」

「いや出来てる。つまり中古屋で付喪神を売って儲けよー!って話だろ?」

「全然理解できてないじゃないか……」

ユーザが頭を抱えていると

「そうか!」

キンノミヤが声を上げた。

 

「つまり付喪神を売って儲ける。売られた付喪神はウォータスに広がる。つまり付喪神が広がる事が組織の狙いなんだ!………何故広めようとしているかは分からないが。」

「おぉっ!凄いな!」(理解してない)

バカ医者とキンノミヤが喜んでいるのを他所にユーザが冷静に口添えする。

「じゃあ店主が襲われたのはどう説明つけるんだ。」

「え?」

 

「付喪神が広がるのが組織の狙いだったとしても店主を殺そうとする事ねぇだろ。」

「確かに……」

ユーザの中では店主が襲われた事とキンノミヤの見解がどうにも繋がらなかった。

「もう売り切ったから用済みだったんだろ!文句あっか?」

現在の気分に水を刺されたキンノミヤが乱暴に反論するが

「でも店に付喪神は残ってたぞ?それにオレ達が狙われてないのは何でだ?オレ達も十分付喪神を広げるのに貢献してるだろ。」

ユーザは冷静に反論した。

 

「そういえばさ……今までの話を聞いていて、脳裏に浮かんだ結論があるんだけど……良い?」

ザッドが言葉を絞り出すように尋ねる。

「何だ?」

ユーザが聞くとハーズは恐る恐る言う。

「もしかしてラッシング達が…。店主をやったんじゃないのかな……」

「!」

それを聞いた瞬間そこにいた物たちは虚を突かれたような表情になった。

 

一方その頃西の海岸では

「傷も治ってよく眠ったしすごくスッキリしたよー。」

「チェンジャーの体調がご良好で何よりです。」

チェンジャーとクランボが立っていた。

「ユーザの戦いっぷりを見れたしそろそろウォータスを出ようと思うんだけど良いかなー?」

チェンジャーは拳を握り水族館や超常大陸での一件を思いだす。

「ボクは怪人相手に碌に戦えてない。これからの事を思うと……もっと強くならなきゃならない。ユーザを後ろから見てるだけじゃダメなんだー!」

そう言いながらチェンジャーは思い切り剣を振りまわす。

「知ってる?この海の渡った先には風の国フュールラデディがあるんだ。」

「それがどうかされたのですか?」

するとチェンジャーはニヤリと笑いながら

「……いるんだよー。いい特訓になりそうなとっておきの強者がさ。」

 

「何でしょうか?」

クランボは知的好奇心を刺激され聞かずにはいられなかった。

「今はダーメ。ついてからまた言うよ。ここからさらに北に行けば橋があるからそこに行こうー!」

「……そうですか。分かりました。」

 

彼らはまだ気づいていない。強者が風に乗ってやってきていることを。

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