使うモノ語り   作:イヤマナ ロク

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第43話 みんなを運ぶね?

ハーズの発言で場はシンと静まり返った。その後しばらく沈黙は続く。

 

「……いや、でも確かにそうだな。」

長い沈黙を破ったのはキンノミヤだ。

「え?」

ユーザはキンノミヤの一言に疑問を呈する。

「えって?冷静なって考えてみろ。ラッシング達って警備隊に言ってないんだよな?それに目撃者もラッシング達だけ。それってだいぶ怪しくないか?」

 

「でも付喪神の言う事が警備隊に信じてもらえないってのは事実だろ!」

「ああ。だからそれを逆手に利用した可能性があるんじゃないのか?」

ユーザは慌てて否定する。

「じゃあ何でオレ達に依頼したんだ!その説明が付かなくなるだろ。」

「そうだな。かなり大きな矛盾が生じる。でもその矛盾さえ説明出来ればこの上なくあり得る説だとは思わないか?……お前どうした?ちょっと落ち着けよ。」

 

キンノミヤはユーザの態度の変わり様を心配する。ユーザの態度はキンノミヤが付喪神を疑うような発言をした所から妙に焦りと怒りを含んだ口調になっていた。

「付喪神の事を信じたいのは分かるがオレ達がそれで真実を捻じ曲げてしまったら意味がない。それにオレ達の仕事の性質上こういう事もいつかはあり得る。ちょっと頭を冷やして考えれば分かるはずだろ?」

「いや……それは…」

ユーザはその場に崩れ落ちる。目は泳ぎ、言葉が出ては消え喋り出せないのをを繰り返していた。

 

「ま、オレは依頼料さえ抑えられればそれでいいんだけどな〜」

キンノミヤはそのまま行ってしまった。

「ユーザ……」

ハースの問いかけにユーザはいつも通りの表情で答える。

「いや、大丈夫だ。頭冷えたわ。」

そのままユーザは事務所を出る。

「一回店に戻って、とりあえず真剣に話す。まずそこからだ。」

 

「……綺麗だなぁ。」

「………そうだね。」

シャーバランと雅之は西の海岸で海を見ながら砂浜を歩いていた。広大な青が2人の眼下を覆い尽くし、さざなみが耳に絶えず飛び込んでくる。

「さっき、オレの代わりに言ってくれてありがと。」

不意に感謝を述べられて雅之はやや困惑する。

「えぇ、いやだってあそこで黙っててる訳にもいかなかったし…」

「いやいや!ほんとに嬉しかったんだって。あの時やっぱりマサユキってオレの味方でいてくれるんだな〜って思ってさ。」

シャーバランは心底嬉しそうに雅之の方を見やる。そこには屈託の無い彼女の気持ちが顔面に貼り付けてあった。

「別に……そんな感謝しなくても。」

ただそれは日本の世知辛さと異世界突如放り込まれ疲弊しきった雅之の心には眩し過ぎ、ただ素っ気ない返事を乾いた鈴音を交えながら返す事しか出来なかった。

 

「あ」

呆けた声と共に突然顔が別方向を向いたと思ったらシャーバランがとある方向を見ていた。

「何?……ってアレは!?」

2人の視線の先にいたのは大声で剣を振り回すチェンジャーだった。一気に先程までの空気が引っ剥がされる。

 

(げげっ!チェンジャーだっけ?あんま関わりたくないのが!)

「アイツはヤバい!逃げよう!ってえ?なんで動かないの!逃げるんだ!アイツはヤバいんだって、オイ!」

雅之がどれだけ呼びかけてもシャーバランは一向に動こうとしない。それどころか

「ねぇアレ……」

と言いながら指を刺し始めた。

(ちょっとちょっと!何指差してんの!?意味わかんないんだけど!)

雅之の気も知らずにシャーバランはずっと硬直したままだった。そして、

 

(えぇ、振り向いた?ヤバいバレた!!)

チェンジャーが剣を振り回すのをやめ、こっちを振り向いたのだ。

 

「あの者、こちらに指を刺して一体何をしてらっしゃるのでしょうか?」

「分かんなーいー?」

チェンジャー達は何故指を刺されているのか理解出来なかった。

「てか、水族館にいたよねー?確か無傷で怪人を……」

「はい。たしかシャーバランという名前でしたね。」

 

(あぁヤバい!何か話し込んでる……!絶対ヤバい雰囲気じゃん!)

互いの声が聞こえないくらい離れていたため雅之は彼が物騒な事を企ていると勘違いしてしまっていた。

「ほら逃げようって!戦って勝てるとは限らないし!」

(前の……あのカミカミ男みたいになる可能性もあるはずだし……)

 

「まさか……我々に対する宣戦布告でしょうか?」

「そうだとしても…どうかなー?」

クランボがそう呟いた瞬間チェンジャーは即座に否定した。

「ボクさぁ…少なくとも怪人を楽に倒せるようにならないと彼女には勝てないと思うんだー?超常大陸でもボクは足手纏いだったし。彼女はあの珍妙な武器で怪人を実質戦闘不能にしていた。」

それを聞いたクランボは咳をしながら

「………コホン、なるほど。確かに戦うだけが勝負ではありませんからね。」

「そう。クランボがいなかったらボクはじゃんけんを知らずに死んでたよー。」

チェンジャー達は冷静な分析をしていたがそれが雅之から見たら敵幹部の話し合いにしか見えなかった。

 

そんな中シャーバランがやや目を見開いて一言

「近づいてきた。」

「えぇウソ!もう終わりだー!………え?……あ

…アレ?」

 

「それにしても飽きないのかなー?ずっと同じ体制。」

「まさか……指している方向に何かあるではないでしょうか?」

クランボとチェンジャーは何気なく指を刺す方向を振り向いてみた。そこにあったのは

 

「船?」

そこにいたの一見漁船に見えるが物々しい雰囲気を纏った船だった。チェンジャーが船をしばらく見ていたら船上に何かを持った人影がちらほら見え始める。

「?」

その瞬間船上の人間が何かを投げてきた。

 

「クッ!」

チェンジャーは難なくそれを避けた。投げられた物は砂浜に落ちた瞬間、バンと弾けた。

「爆弾?」

「どうやら見られたら都合が悪い様ですね。」

 

「なぁシャーバラン?あれ……別の意味でヤバくね?」

「うん……でもほっとけなく無い?」

シャーバランは船の位置に向かって走り出す。

 

「ボク達に喧嘩を打った事をー」

「後悔させてあげましょう。」

チェンジャーは剣を握りしめ、船に向かって飛びかかった。

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