使うモノ語り   作:イヤマナ ロク

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第48話 さらば潮風。初めまして猛暑。

「あなた……ユーザさんの知り合いなんですね?」

バカ医者の支離滅裂な言動を何とか解読し職員と市長達はその結論にたどり着いた。

「ユーザはなぁ強いんだぞ!怪人もギッタンバッタンやっつけちゃうんだ!この前の水族館とか凄かったなぁ〜。」

「あっあぁ〜そうでしたね……水族館に現れた怪人を一番倒していたとかなり胃の痛くなる報告が……」

市長がそれを思い出し、床に倒れ込む。

「うん。あと今も怪人がいるぞ。」

バカ医者はあっけらかんとした表情でさらっと言う。

「えぇ存じています。まさか……その現場にも?」

「いないって事はそういう事なんだろうな。」

「まずい、市長が倒れたぞ!」

「すぐに運ぼう!」

 

「いえ!ここで私が倒れてどうするのですか!」

一度泡を吹いて倒れた市長が状況を立て直すべく復活した。

「おおすごい!」

「過労死耐性がついたんですね!」

「ユーザさん達のライドエンプ行きを前倒ししましょう!そのためにも怪人をなんとかしなくては。」

職員を率いて市長は行ってしまった。その後すぐ1人の職員が戻ってきた。

「今すぐに帰しますね。」

装置を操作してバカ医者は診療所に戻された。

「物置は海の中だったのか………初めて知ったぞ。」

 

「バァァァ!」

「ゼリャア!」

砂浜では怪人軍団を相手にユーザ達が奮闘していた。

「ブブブブゥ!」

アブの怪人のチュウインがユーザに噛みつきにかかる。

「効かないよ!」

ハーズの装甲によって致命傷は塞がれた。すかさず槍で腹を殴りチュウインを吹き飛ばす。

「行け、ハーズ!」

ユーザの掛け声でハーズが腕から抜け、チュウインの頭目掛けて飛んでいく。

「ブブッ、ブブッ!」

チュウインは攻撃するが中々当たらない。

「今度はこっちが行くよ!」

ハーズが猛スピードでチュウインの顔に殴りかかる。衝撃で吹っ飛んだ体にユーザの飛び蹴りが繰り出され反対側に吹き飛ばされる。

「おっとっとー!自転車の前に飛び出したら危ないぜ!」

リンがハンドルの前に乗せて一気に運ぶ。

「ナイス、あとはオレが!」

ユーザは槍を突き立てリンが運んだ怪人を絶命させた。そんなユーザの背後からデアティスの鎌が迫るが、ユーザは前を見たまま左足を後ろに突き出す。

 

「マァッ!」

デアティスは吹き飛ばされその後何かに肉体を掴まれる。

「バアァ……」

プテラリーザが後ろに潜んでいた。プテラリーザは体を逆さまにして飛んでいた。デアティスはもがくが全く振り解けない。プテラリーザはテレパシーで問いかける。

『貴様らは何故ここにいる?ウォータスの怪人は全て超常大陸に行ったはずだ。』

『うるせぇ!オレ達はフュールラデディにいたんだよ!隣国のなぁ!』

『なるほど……何故そこにいた?』

 

デアティスは語り出す。

『オレ達はあのネイションとかいうやつが気に入らねぇんだ!何だよ人間の癖にふんぞり返りやがって!アイツが来てから大陸の中も細々して過ごしにくいんだよ!!まぁ超常大陸をでたら死ぬってのがただの迷信って知れたのは唯一の功績かもな!』

デアディスが笑うにつれてプテラリーザの表情が固くなる。

『そうか……今何故ウォータスにいる。』

『オレ達はいつの間にか居たんだよ!これに関しては知らねぇ!』

『それが無秩序に暴れる理由だと思っているのか?』

プテラリーザは腕の力を強める。

『黙れ、そういう所だ!なんでオレ達が人間の真似事なんかしなきゃならねえんだ!暴れて何が悪い?殺して何が悪い?』

『死ね。』

デアティスはプテラリーザの腕の中で弾け散った。

 

「アイツら何ブツブツやってたんだ?」

「分かんないなー。」

人間達からしたらただ鳴き声で罵り合っているようにしか見えなかった。

 

「チェンジャー様、後ろ!」

「おっと!」

咄嗟に剣で攻撃を受け止める。

「ブゥン!」

やってきたのはハチの怪人だ。

「アビーか……尻の所の毒針に気をつけろ!」

ユーザがそう言った矢先にアビーは間合いを詰め毒針を刺してくる。

「フッ……遅いなー!」

毒針の先に何か同じくらいの細いものが当たった。

チェンジャーのレイピアがそこにあった。そこからしばらく針と針の鍔迫り合いが始まった。アビーがそのままの勢いで針を刺した瞬間それは砕かれた。

「フェイント成功。ですね?」

「あぁ。」

針を失ったアビーは間も無くチェンジャーによって一刀両断された。

「こんなものかなー。」

 

チェンジャーもまた一体怪人を倒した。この瞬間砂浜の怪人は全て打ちのめされたのだ。

 

「やっと終わったなぁって眩し!えぇ何だこれ……ってあああーー!」

ユーザも一息つこうとした瞬間不意に顔に強い光が当たった。それはシャーバランの服に付いていた。反射板のものだった。

 

「コレって怪人に囲まれた時……てか下まで!?オレこんなん受け取ったっけ?」

「ボクに聞かないでよ!みんなあの時必死で覚えてないって!」

ユーザは冷や汗が止まらない。

「じゃあ今頃シャーバランさんは………早く返さなきゃ!ほらリンよそ見するな行くぞ!」

ユーザ達は大慌てでシャーバランを探す。

 

「ユーザアレ見て!」

ハーズが指差す方向に砂浜に下着姿で倒れているシャーバランがいた。

「やっと来たの!遅いですよ!」

雅之が憤慨していた。

「いやホントごめん!怪人倒すのに手間取っちゃって。今すぐ起こすから!」

ユーザの手を雅之が跳ね除ける。

「そんな血だらけの手で触らないで!汚いでしょう!おーいシャーバラン起きて!早く服着て!あっユーザさん達着替えてるトコ見ちゃダメですよ。一応………」

その後も雅之が必死に呼びかけるとシャーバランは目を覚ます。

「アレ……何でオレ下着姿で?あぁ服ありがとう。着なくちゃ。」

彼女は目を覚ましても特に何も言わずに服を受け取りいそいそと着だす。

(ハァ……この人も何というか…恥じらいとかないの?)

雅之は呆れるしかなかった。

 

「服も…届けたし次は……街の方に、うっ!」

ユーザはそのまま街へ向かおうとするがその場にへたこんでしまう。今までの疲れが一気に押し寄せてきたようだ。

「ユーザ、もう無理だよ。」

ハーズの呼びかけも無視してユーザは這いつくばるように街の方へ進む。

「ダメだ……!行か……な…ぁ…」

そのまま倒れ込み完全に気を失ってしまった。

 

「……ここは?」

ユーザはベッドで目を覚ました。その床はどこか既視観があった。

「やっと目を覚ましたか?」

キンノミヤの声が窓際から聞こえた。ふと目を向けると、そこには一面が青い空間があった。

「ここってバブルの診療所?何で?」

「動けるか?動けるな。行くぞ!」

キンノミヤはユーザに出発の支度をするよう促す。まだ頭が働いていないユーザはひとまずそれに従った。

キンノミヤに連れてこられたのは台の置かれたある一室だった。

 

「何するんだ?」

「ライドエンプへ行くための最終打ち合わせを市長とする。」

「えっでもここに診療所じゃん。」

ユーザが首を傾げていると台が光り出し市長が現れた。

「えぇ何で!」

「それは後だ。いますぐ始めましょう。」

その後すぐ話し合いは始まった。まずユーザはあの日から2日間寝ていた事を知らされた。

 

「えっじゃあ怪人は?」

「それに関しては問題ありません。全て対処しました。そしてライドエンプの件ですが、ユーザさんが目覚め次第早急に向かう事になりました。」

「え?は?」

ユーザは突然の知らせに目が点になった。

「もう手配してあります。行きましょう。」

ユーザが口を出す暇はなかった。あれよあれよと言う間にイルカ馬車に乗り込んでいた。

 

「えーと……」

「ユーザさんの疑問は私がお答えします。」

同乗している職員が一つ一つ答え始めた。

「まず怪人ですが、ジャスティスの傘下組織の仕業でした。水族館事件で慌ただしいウォータスでテロを兼ねた怪人を従わせる薬品の実験をするつもりだったようです。」

「なるほど……」

「中古屋の事件ですがやはりチェインが仕組んでいました。彼らの目的は付喪神を使った世界征服の様ですが詳しい事はわかりません。キョクアという国は国境が完全に断絶されていてなかなか情報が得られないのです。」

「ですが付喪神を生業している以上、我々も関わる事は増えていくでしょうね?」

「おそらく……」

キンノミヤの言葉に職員も応じる。

「そしてユーザさん。貴方はまだ理由は調査中ですが、確実にジャスティスとチェインに狙われています。なので今回の前倒しとなりました。」

 

「そうか……何か色々と迷惑かけちゃってるな。」

「黙れ。こっちは全て織り込み済みだ。オレ達もユーザに迷惑かけてチャラにしてやるよ!」

キンノミヤが笑いながらユーザの肩を掴む。

「こんな嬉しくない励まし初めてだ……」

 

「あぁあと、別の馬車にバカ医者とタキガワとシャーバランも乗ってるぞ。」

「え?シャーバランも?」

意外な名前が出てきてユーザは少し驚く。

「うん。なんかマサユキとかいう付喪神も一緒に世界を色々見てみたいんだって言ってた。」

「チェンジャーは?」

「アイツは目的があるからパスっつってたな……そのまま隣国のフュールラデディに行くんだってさ。」

「ふーん…色々あるんだな。」

 

ユーザは彼らの顔をと共にウォータスでのアレコレを回想していた。

「何かあっという間だな。毎日何かしら起きてる気がするぜ。多分ライドエンブレムでも何だろうな。」

「あぁそうだな。これまでもこれからも色々運んで来るだろうな。付喪神は。」

それぞれの思いの乗せ馬車は水底を進んでいった。

 

「うわぁーー!!何だこれ!暑い!あまりにも暑すぎる。」

ユーザは上に着ていたロングジャケットを即座に脱ぎ捨てた。

「ボクも溶けそうだ!」

「へへへ…金属製オレッちの熱伝導率を舐めるなよ!」

たどり着いたライドエンプは別世界だった。ウォータスのような潮風も無い。そこにあるのは灼熱その物だった。

「オレも初めて来たがよく人が住んでるな……袴なんて着てらんねぇ!」

「ですね……」

「オレは平気だけどマサユキは?」

「ヤバいわ……」

(この高い湿気と強い紫外線……日本の夏だ!なんで異世界でも味わにゃならんのだ!!)

 

太陽の国で果たしてユーザ達は付喪神と人間をハッピーに出来るだろうか?

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