「うわっ!!」
ハッピー・マテリアライズの事務所の一室で寝ていたシャーバランは突然起こされた。それもベッドを何者かにひっくり返されたのだ。
「何なんだよ……って医者さん何してんの?」
同じく寝ていた雅之が目にしたのはベッドの前に立っていたバカ医者だった。バカ医者は上を向いて何かブツブツと呟いていた。
「「???」」
2人にとってそれは奇異でしかなかった。そして突然
「マヨネーズとタマネギだっひょーーーーんべべべべべべべべべべべべべ!!!!!!!」
と叫び気を失った。
「本当に何なのこの人………怖い……うぅ……」
シャーバランは恐怖でついに涙を流してしまった。この世界にきて初めての涙だ。
「何があった!」
キンノミヤとタキガワが慌てて走ってやってきたが気を失ったバカ医者を見て
「何だ。じゃいいや。」
「戻りましょう。」
と言い残し戻ってしまった。
「何なんだよこの事務所!助けてユーザさーん!」
雅之は叫ぶしかなかった。
「ハックシ!」
「ん?ユーザ風邪でもひいた?」
「別に?でもなーんかムズムズしたんだよなぁ。」
ユーザはショードとスイングと海に行く途中謎のくしゃみをした。何故海に向かうのか。それは約10分前に遡る。
「海に行くぞ。」
「え?」
不意にザッドが言い出したのでユーザとショードが理由を尋ねた。
「小僧、其方に問う。空を飛びたいのはその浮き輪か?」
ザッドはショードの方を向き始め、逆にショードに尋ねた。
「はい。空を飛びたいと言ったのはスイングです。」
ショードの問いにしばらくザッドは考えた後また尋ねる。
「ではもう一度問う。浮き輪は本来何に使う物だ?」
「海に浮かぶ為の道具です。」
ザッドはそれを聞いて今度はショードに向き直る。
「聞いたか?今小僧が言ったとおりだ。だが、其方は空に浮かびたいのであろう?」
「…………はい。」
スイングがやっと口を開いた。
「ならばまずは原点に立ち返れ。海に浮かび浮かび浮かびまくれ!浮き輪としての本分を徹底的に心身に叩き込むのだ!」
「わっ!!」
突然の大声にスイングはショードの後ろに隠れる。その後ザッドが優しく儚い声で
「……さすれば道は開けるだろう。」
と語りかける。
「ほっほっ、……本当で?しょうか?」
たとたどしく尋ねるスイングにザッドは胸を張って言い張る。
「当たり前だろう。何せ我は海の男なのだからな。」
「胸を張るって胸ないだろ?」
「自転車のお前が言う?」
ハーズがリンにツッコむ。
「ユーザさん、海の男って?」
「………オレにも分かんない。」
ショードの質問にユーザは頭を抱えた。
「という訳で海に着いた訳だが……どうするんだ?」
海にたどり着いたユーザは早速ザッドに尋ねる。
「言った通りだ。スイングに浮き輪としての基礎を叩き込む。スイング!」
「あっ……はい。」
咄嗟の応答でスイングは声が出なかった。
「声が小さい!」
「はい!」
上擦ったが大きな声でスイングは返事する。
「まず海に入れ。」
そこからザッドの猛特訓が始まった。
「何をしている!その程度の波越えねばどうする!」
「浮き輪じゃ………無理ですよ……」
「何か言ったか?」
「いえ、何も!」
波に乗る特訓。
「おい、5分間ショード濡らさずに乗せろと言ったはずだ!1分も経って無いではないか!」
「すいません!………って不可抗力水しぶきはどうしようもないでしょ………」
「あの釣竿、かなり熱血だね。」
「無駄話をするな!」
人を乗せる特訓。
「ほらほら動け〜。出ないとサメの餌だぞ〜。」
「浮き輪が、サメに追っかけられるってどういう状況!?」
大海原でサメから逃げる特訓。
「浮き輪というのは浮いてナンボだ!!絶対沈むんじゃ無いぞ!!根性で浮き上がれ!」
「……はい!」
(根性で空気の体積は変わんないでしょ!!)
石を括り付けられた状態で浮く特訓。その後も様々な特訓がスイングに襲いかかった。
「大丈夫かな?アイツ。」
「まぁホントに危なかったらボク達が助けようよ。」
ユーザ達は海の家で特訓を見守っていた。すると
「ねーねー!お前なんで物に話しかけてんの?」
「お前?」
ユーザの周りに子供達が寄ってきた。
「ナニコレー!見たことない!」
「ちょ待てよ!さわんなちゅっーの!」
ユーザ達に群がる子供にショードが注意する。
「皆やめて!すいませんユーザさん。ボクの近所の友達なんです。悪気がある訳ではないんです。」
ショードがユーザに謝っていると子供達の1人が
「ショード!この人達誰?」
彼に質問を投げかける。シャードが事の経緯も含め説明した結果
「ユーザ手加減してよー!」
「そーだよ!ユーザ鬼じゃつまんない!」
ユーザは子供達と鬼ごっこをしていた。
「手加減したら不公平だろ?じゃあ、お前ら全員鬼でオレを捕まえてみるか?7体1ならいい感じだろ?」
「良いよー!」
「負けねぇから!」
「本当にごめんなさい!友達が迷惑を!」
ショードはハーズとリンに謝るが2人はさほど気にしていない様子だった。
「ダイジョブダイジョブ〜!ユーザ楽しそうだし。別に良いよーん。」
「ショード君も混ざりなよ?ザッドならボク達がちゃんと見とくからさ。」
「いいんですか?」
彼が尋ねるようとした瞬間ハーズ達はザッドの暴走を止めるためいなくなっていた。
「じゃあ……いいのかな?ユーザさーん!僕も!」
「おっと8対1か。この熱さだと、キツイかも?」
炎天下の砂浜はとても賑わっていた。