「命を狙われている?詳しく聞いた方が良さそうですね。」
タキガワはガッポから話を聞く事にした。
「オレは貯金箱なんだが……まず貯金箱って分かるか?」
「貯金の箱?という事は貴方の体内にはお金が入っているんですか?」
「そういう事だ。それも大量にな。」
タキガワはもう一度持ってみて納得した。
ジャラジャラとする金属音も硬貨が大量に入っているからだと理解した。
(この世界にも豚の貯金箱ってあるんだ………まぁクロスバイクあるし今更か?)
雅之も驚きながらも納得していた。
「で、命を狙われているとは?」
「それがな……貯金箱はお金を貯める物だ。でも無限に溜まるわけじゃない。限界までお金が溜まった貯金箱は……」
「貯金箱は?」
「中身を取り出すために破壊される!その時点でもうお金を貯めることは不可能になる。死んだも同然なんだ。でオレにもその時がやって来た。だがオレは死にたく無い!まだオレは生きたいんだ!」
ガッポは短い手足を懸命に動かしながら自らの生存を訴えていた。
「なるほど……ですから我々の事務所に来たんですね。」
「あぁ!ココって付喪神の問題解決してくれるんだろ!だからさ、何とかオレの命を繋ぎ止めて欲しいんだよ!」
だがそれを聞いてタキガワ達は難しい顔になり、目を瞑り額に手を置いて唸る。
突然の彼の変わりようにガッポは戸惑う。
「いや……どうでしょうか?もしかしたら、ここに来ない方が安全だったかもしれません。」
「おい、何で今更突き放す?そりゃないって!」
「いま厨房にいるウチの事務所の所長なんですが………金にうるさい人でして、多分見つかった貴方の命は無いと思います。」
「え?でもここ付喪神を救うところなんじゃ……」
言い切る前にタキガワが席を立ち何処かに行ってしまう。
その瞬間バカ医者がガッポに目を合わせながら一言
「ワタシ今腹減ってんだよ。トンテキと豚汁どっちがいいと思う?」
「ケンカ売ってんのか?」
タキガワは厨房に向かった。
「キンノミヤ様話があります。」
「何だ?」
キンノミヤはキュウリやトマトを刻みながら耳を傾ける。
「もし、貯金箱の付喪神の依頼が来たらどう対処しますか?」
「そうだな、副収入が得られるかもしれないから嬉しいなぁ。」
「副収入?何の事です?」
タキガワが耳慣れない言葉に首を傾げるとキンノミヤが振り向く。
「どうせ貯金箱の依頼なんて今ある貯金箱を壊されたくないとか壊したくないとかそんな所だろ?」
(さすがキンノミヤ様。金の事になると勘が鋭い……!)
「で、それを解決すれば貯金箱自ら金を差し出してくれるかも知れない。だから嬉しい。」
「…………どう……解決するつもりで?」
キンノミヤはタキガワを睨みながらも声色を変えずに答える。
「そりゃ……依頼先に赴いて解決するのはユーザの仕事だろ?なんでオレがやる事になってる?お前さっきからおかしいぞ。突然そんな事聞き出して………」
キンノミヤがタキガワに向ける視線は徐々に強くなっていく。
(………バレたか?)
キンノミヤはタキガワの瞳孔の微かな震えを捉え、そして気づかれない程に唇の端をあげる。
(なるほどそういう…………タキガワ、お前は全くバカだなぁ。まぁそんな所が可愛いくもあり使いがいがあるんだが。)
「そう言えば話は変わるんだが、今日の昼は冷製スープにしようと思うんだ。」
「え?あっはい……」
突然の話題にタキガワは戸惑ったが無視する訳にもいかなかった。
「汁の濃さはこんなモンでいいか?」
汁の注がれた匙を差し出す。
タキガワがそれを受け取った瞬間
「!」
目の前からキンノミヤが消えた。
「シャーバランさん!ガッポを持って逃げて!」
彼女は言われた通り机上のガッポを抱えて外に向かう。
だが
「アレ?無い?」
しっかり両手で抱えていたのに綺麗さっぱりなくなっていた。
そして目の前にもがくガッポとそれを掴むキンノミヤがいた。
「いつの間に!気配は無かったのに!?」
シャーバランは無意識にに武器を取り出し構えを取る。
彼からそこ知れぬ畏怖を感じたのだ。
「返せ!」
武器を振り回すのを見てキンノミヤは呆れながら、隠し刃で防ぐ。
「事務所で暴れるな。」
そして一瞬で彼女を切り捨てる。
「何してんだお前!!」
激怒する雅之を掴み投げ捨てる。
「鈴はリンリン馬鹿と戯れてろ。」
そしてキンノミヤはガッポを見やる。
「邪魔が入ったな。ようやくご尊顔を崇めたぜ。」
「待て、話せば分かる!だから放せェ!」
死に物狂いで何とか逃げ出したが結局捕まってしまう。
「そろそろ年貢の納め時だぜ豚さんよぉ。その贅肉搾り取ってやるよ!」
「あっあっぁああああ!」
するとガッポは何かを穴に突っ込まれて中身をグリグリ掻き回される。その結果
「合計で300カレンか……ナンジャコレ!!1カレン玉ばっかじゃねえか!!クソッこんなに重いのに……オレの期待を裏切るな豚!」
「オレに文句言うな!」
タキガワがやって来てみるとそこにはピクピク痙攣しているガッポの姿が。
「え?貯金箱壊さないんですか?」
「は?壊すなんて勿体無い事する訳無いだろう。オレレベルになればこれくらい余裕だ。」
「良かったです。」
タキガワはホッと息を吐いた。
「でもたった300か……やっぱ壊すか?」
「ダメですって!!」