使うモノ語り   作:イヤマナ ロク

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第56話 風の便り

海上を爆音で駆け抜ける黄色い物体が一つ。ネイションが遣わした怪人の一体、チェラキラだ。彼はライドエンプに向かっていた。

「……?」

何かを捉えた。真正面から何か向かってくるように見えたのだ。

「………浮き輪?」

無数の眼光に狂いはなかった。それは間違いなく浮き輪だった。ネイションから命を受けた怪人達は人間界の常識知識を一方的に海馬に叩きつけられる。その知識の中に確かにあった。子供や泳げない人間が水に浮かぶため使う道具、浮き輪の存在が。

「聞くか?」

だが訳がわからなかった。もしもあれが浮き輪だとしたら送られた記憶と違う。ネイションが間違った知識を送っているとは思えない。確認を取ることにした。

チェラキラはネイションにテレパシーを送った。

 

「ネイション様、至急確認したい事がございます。」

「何だ。ユーザの手がかりが見つかったか?」

「いえ、浮き輪が空を飛んでいるのです。」

カインを連れているネイションの足が止まった。

「……それは本当か?」

「はい、あっ今釣竿も見えました。浮き輪に上に釣竿が見えました。ん?待ってください?なんか聞こえます。間違いなく浮き輪の方から声のような音が!」

「声のような音……釣竿……そうか!チェラキラ、それはユーザの付喪神だからとにかく追え。絶対見逃すなよ。」

ネイションはそう言い残し通信を切った。

「何を話していたのですか?」

カインがネイションを睨みながら尋ねる

「ふむ………いずれ分かることだ。ハッハッハッ!」

扇動の笑みをカインは冷淡の眼差しであしらった。

 

「さぁて、洗いざらい吐いてくれよ。」

ネイションは自分の根城にカインを呼び出した。根城は木造の寺院のようでかなり古く、外の石畳から雑草と苔が生い茂り屋根は一部が潰れており内装も一部は朽ち果てていた。ネイションはカインを跪かせ自分は怪人の背中の上に座っていた。

「まず、ユーザとどういう関係だったんだ?」

「………仕事仲間といったところでしょうか。」

(割とすんなり口を開いたな……)

「具体的に言え。仕事とは何だ?」

「怪人をこの世から消す。」

カインは立ち上がり堂々と言い張った。見張りの怪人達が一斉にざわめくがネイションが錫杖を打ち付け静止する。

「初耳だな……そんな事ユーザは微塵も知らなそうだったが?」

「!」

明らかに表情が変わったのをネイションは見逃さなかった。

「じゃあ質問を変えようか?いつから知り合った?」

「10年前。」

「なるほど……蠱毒事件の8年後で、ジャスティス事件の5年前か。」

(まだあのゴミクズがのさばっていた時代か………!あぁ考えただけで反吐が出る!)

ネイションは必死に込み上げる感情を押し殺し意識をカインに向ける。

「どういう経緯で?」

「その蠱毒事件よりも以前、22年前に初めて怪人が超常大陸の外に現れたのを知っていますか?なのに世間はそれを『過去の事件』として扱い、まともに目を向けなかった。それが我々有志の心に火をつけたのです。世界は役立たずだと、我々の心こそが全てを解決する唯一の武器なんだと!」

ネイションはそれを聞いて頭を抱えた。

「糸口が見えない。何が言いたいんだ?」

「怪人を倒す秘密結社の結成ですよ。ユーザさんはそこの初期メンバーでした。」

 

「なるほど。それを最初に言え……ってちょっと待て。ユーザ何歳だ!?」

ネイションは訳が分からなくなった。カインが本当の事を言っているならばユーザは少なくともカインと同世代、50代くらいの中年だ。だが記憶の中のユーザの顔はどう頑張っても20代前半にしか見えない。付喪神の不満をぶち撒ける時の言動も中年には見えない。とにかく若過ぎるのだ。

「そうですよね。あの人は不思議です。ああ見えて私より年上です。怪人にも懐かれるし、時々人間とは思えない殺気を出す事もありました。」

「おい、何故謎を増やす!謎を解くつもりが余計分からなくなってしまったぞ!?」

 

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