スイングは師匠であるザッドの猛特訓の末宙を浮く事に成功した。今は師匠を乗せて空の旅に向かっている途中だ。
「うん?師匠!」
「何だ!」
「前方に未確認物体を発見!」
「構うな!進めー!」
2人は前方に怪人がいるとは微塵も思わず直進で突き進んでいく。
一方チェラキラはネイションの命令で彼らを追いかけることになっていた。
目標が前から向かってきているのでチェラキラは横に避ける。
「なな!?未確認物体、動きました!」
「何だってぇ!」
避けたチェラキラは彼らのしばらく様子を見た後一定の処理を保ちながら後ろにつく。
「背後を取られました!」
「問題無い。我が直々に相手してやろう!」
ザッドは振り向きチェラキラに呼びかける。
「貴様、何が目的だっだだ、あっああぁ!?」
ザッドはここで初めて未確認物体の正体を突き止めてしまった。
(不味い、とんでもない相手に喧嘩を売ってしまったぞ……!)
黄色と黒の肉体と鋭い複眼から発せられる眼光がとても恐ろしく見えた。
「……おいスイング。」
「何でしょうか、師匠!」
「戦略的撤退だ!」
それを聞いてスイングは耳を疑った。
「どういう事ですか?今更それは無いでしょうよ!」
「相手は怪人なんだ。我は怪人と戦った事があるから分かる、あの怪人は違う、今まで見てきた物とは纏っている気配が明らかに違うのだ……!」
ザッドがチェラキラが地力の時点で他の怪人凌駕している事を察知する。
「大丈夫ですよ!自分を信じて下さい!自分が今こうやって空を舞っているのも師匠のお陰です!不可能は幻想だと教えてくれたのも師匠です!ですから怪人だって倒せますよ!」
ザッドにその激励は響かなかった。
(我が怪人と渡り合えているのもユーザが自身を応用した戦法を取れるほどの実力があるからこそだ……)
ザッドは必死に思考を働かせる。
(だが今は自分しかいない。使える人間、ユーザがいないのだ…!)
ザッドはユーザがいない状態の自分の無力さを痛感する。
「弟子よ。世の中感情論でどうにかなる相手ばかりではない!戻るぞ!戻るったら戻るぞ!」
ザッドは撤退するという結論に達する。
「いや、倒してください!きっと行けます!」
「貴様、師匠に向かって指図をするな!」
2人は怪人を目の前の怪人を巡り言い争っていたが、チェラキラは自分の事で争っているとは夢にも思わなかった。
(何してんだ?)
彼は意外にマイペースだった。
単純に内容を知ろうと確かめる為。
自分の喋る言葉が通じるか確かめる為。
彼らに近づきスイングに手をポンと置いた。
「何してんだ?」
スイングは振り向いた。
「何ですかっあっあっあ………ああああああ!!」
チェラキラの顔が怖過ぎて腰が抜けたスイングはそのまま海に落ちてしまう。
「おい落ち着け!うああああ!」
ザッドも同時に真っ逆さまに落下する。
チェラキラは突然の事で訳が分からず開いた口が塞がらなかった。
「は?」
やっとかっと声を発したところで気がついた。
「目標見失った!どこ、どこ!」
見渡すが、スイング達は既に水面だった上、そこは独特な潮の流れから渦潮が頻発する地帯だった。
既に2人は潮の流れにのされ、視界から消えていた。
(終わった……)
ネイションの命令を果たせなかったという状況にしばらく硬直していた。
そんな中テレパシーが送られてくる。
「チェラキラ、ネイションだ。そっちはどうだ?」
「!!、、!、!?!?!」
チェラキラにとって最悪のタイミングで最悪の内容の通信がやって来る。
(あぁ神よ………言い訳を考える時間位くれないの?あっでも私にとって神様はネイションみたいな物か……そりゃそうか。ネイション様は言い訳を考える時間なんてくれる性格じゃないな。納得した。じゃなくて!)
チェラキラは脳内の訳のわからない思考をなんとか消し去ろうと頭を振り乱す。
そしてチェラキラは深呼吸し咳払いを一回する。
(正直に言えばまだいける。多分。)
「おいどうした?聞こえてるか?」
「………勿論ですよ!!」
「何だデカい声出して……」
チェラキラの第一声が妙に大きくネイションは思わず耳を塞ぐ。
「まぁいいや。その後どうなった?釣竿はどこいった?見失ったなんて報告は受け付けんぞ。」
(やっぱ無理だった!)
チェラキラの希望は打ち砕かれる。
「釣竿がどこいったかですね?えーまぁハイ。そのえー」
言い訳を考えようとするが思い浮かばない大ピンチのチェラキラの顔に何かが飛んできた。
「うわっ、何だ……手紙?」
チェラキラの顔に飛んできたのは手紙だった。
風に飛ばされたようだが、この辺りは陸地らしき物は無いし、そもそも風も吹いていない。
「ん?どうした?」
(コレはチャンスだ!)
チェラキラは一か八か手紙で自分の自らの不詳を誤魔化そうとした。
「ネイション様!釣竿は見失いましたが、ぜひ伝えたい情報がその、ございます!内容はですねえーと…」
手紙を開いたらそこには何と付喪神の文字があった。
「付喪神に関する手紙です!それもフュールラデディの物が!ライドエンプに!おかしいとは思いませんか?」
「そうだな、その2つの国はかなり離れているし、付喪神の手紙ならユーザに近づけるかも知れぬ。一応調べてみろ。」
「分かりましたでは!」
チェラキラは一方的に通信を切った。
そして首の皮一枚繋がったため深いため息をつく。
(魔法みたいな奇跡が本当にあるなんて!)
「何だったんだ?あのテンション……てかアイツ見失ったつった?」