使うモノ語り   作:イヤマナ ロク

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第66話 分からない!

例の杖はスモンの家の中で曲を流しながらその曲に合わせ騒いでいた。

「ハイハイハイサンキュー!!ひたすらにありがと〜!ハイアンコール!ハイアンコールキタキタキタキタ〜!!それでは次も引き続き手配書の女神で、『豚箱ラブキッス』!!」

 

「なぁチェンジャー、ずっとこんな調子なのか?」

「うん。つい1週間程前に付喪神に目覚めたんだけどそこからずっと不眠不休でこれなんだよー。ボクも辛くてスモンさんの家には入れないんだ。」

ユーザはそれを聞いて納得した。

何せ、その杖の発する声と音楽はぴしゃりと閉まった家の屋外からさらに離れていても耳を塞がないとまともに立ってられないのだ。

「何なら、耳塞いでても頭痛くなってきた。ちょっと避難しよう!」

「うん。」

 

2人はその場から離れると魔法使いの2人がユーザ達が探して歩いていた。

「おや、その様子だとゲットオンにやられましたね。」

どうやらあの杖の付喪神はゲットオンと言うらしい。

「すいません。あれをやはり何とかするのは難しいんでしょうか?」

 

「魔法で何とか出来ないんですか?」

「精製魔法を使えるウチの妹なら、何とかできるかもですが……いかんせん近づけないので。」

「精製魔法?」

ユーザが尋ねるとテイは手を仰ぐ。

 

「百聞は一見にしかずなので、見てもらった方が早いでしょう。ウチに来てもらえれば。」

そうして一同はテイの家にやってきた。

「お邪魔します。」

ユーザが玄関に足を踏み入れるや否や突然

「ユーザさーん!お久しぶりでーす!」

 

突然可愛らしい声が聞こえたと思ったらユーザは押し倒されていた。テイはそれを死んだ目でな顔で眺めていた。

「おっおぉ?キミ…だれ……」

「誰ってまたまたぁ〜ウィードですよ!ウィード!」

目が点になっているユーザと対照的に大きな瞳をキラキラ輝かせながらウィードは自己紹介する。彼女もまた右目が黄色で、左目が青で左右非対称だった。彼女も例によって黒のマントだが、2人の物に比べるとフリルやリボン等の装飾が増えていた。

「何か、違うマント……」

「はい、殺風景でダサかったのでデコりました!可愛いでしょ!」

 

「ちょっとどいくれるか?あの、杖について聞きたくて……」

「あっすいません!じゃあご案内しますね。」

すると一瞬でウィードはいなくなり、キビキビと家の中を案内し始め、キビキビとお茶を淹れた。

「あの杖はキミが作ったのか?」

お茶片手にユーザが尋ねるとウィードはニヤニヤしながら応える。

「はい、私の精製魔法で出来た魔術具です。私の魔法は少し特殊で、魔力を他のものに付与出来るんです。兄やスモンくんの魔力を付け足す事も出来ます。」

「じゃあ、あの手紙も?」

ユーザは例の手紙を出すとウィードは分かりやすく頷く。

「ご名答!その通り、これもただの紙に魔力を流してさらにこの球と接続する事で、手紙の行く景色を見られるスグレモノです!さらに、兄の属性魔法もプラスされてたんですが……ごめんなさい!」

ウィードは必死に謝りだす。

「兄の付与した魔力が強すぎて……ユーザさんがカチンコチンに本当にごめんなさい!」

彼女はそう言いながら一瞬テイを睨みつける。

「いや、大丈夫だよ。今こうしてピンピンしてるし。」

「ホントユーザさんが無事で良かったです。ていうかその帽子スタイルも似合ってますね!意外とユーザさんオシャレ何ですか〜!」

ユーザ達はさっきからウィードの態度に違和感を感じていた。さっきから一挙一動に落ち着きがなく、ユーザに対する視線も一々騒がしい。

「テイさん……妹さんのこれは一体どういう?」

 

「まずユーザさんの事情からどうぞ。5年前のジャスティス事件で我々は確かにあなたに面識があるのですよ。」

ユーザはボソっと告げられた真実に驚きつつもウィードの顔を真っ直ぐ見つめ表情を整える。

「今キミの兄さんも言ってるけど……オレはキミ達の事は一つも記憶に無い。いわば初めて会った感覚なんだ。」

「え?そんな訳……」

ウィードの顔が一瞬固まるが、すぐに戻りユーザに同意を求めるがユーザはそれを受け入れなかった。

「これは本当だ。実は今オレは自分の記憶という物が無い。わずかに残ってる記憶も、あてにならないものばかりで、オレはいろいろ動いてるんだ。」

ユーザの真剣な眼差しを見て嘘をついていないことを悟ったウィードは一転黙りこくりだす。

「だから、ごめん。キミはオレに何かあったみたいだけど、オレは全くわからないんだ。」

ウィードの手が動き出す。ユーザは歯を食いしばるとその手はユーザの思いもよらぬ方向に行った。

 

「こちらこそごめんなさい。」

机越しで突然抱き抱えられて耳元に消えありそうな儚い声が響き渡る。

「そんな…ユーザさんの気も知らないで……自分の思いばっかり勝手に……いって手紙も調子乗って、あんなこと書いちゃって………うぅ!……ほんとに……こちらこそごめんなさい!」

声が震え出しや鳴き声だけが響き渡る。それを聞いてユーザは実感させられた。苦しいのは自分だけではないと言う事を。

 

ユーザはウィードを引き剥がし肩を持つ。

「じゃあ教えてくれ!オレもそれを知りたくて来たんだ。これ以上、誰も苦しい思いさせちゃいけないから!」

ウィードは無言でうなずくがその顔には涙の他にも笑みがこぼれていた。

「私がユーザさんとあったのは5年前のよく晴れた日でした。」

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