使うモノ語り   作:イヤマナ ロク

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第71話 バカも杓子も関係ねぇ!

「これが……アイドル…?」

「只のアイドルじゃ無いです!メンバー全員逃亡犯の!アイドルなんです!」

「みんなの笑顔を見たくてシャバに飛び出しちゃいました。」

アージ達はユーザに近づき口々に言葉を投げかける。

「あなたがユーザさん?私達の為に来てくれたなんて感謝感激です!」

「はいホント心のボルテージが懸賞金並に上がっていきます〜〜!」

「ちょっと待ってくれ!いきなり畳み掛けられてもこっちが困る!まず連れを起こしてもいいか?」

ユーザが部屋にいる付喪神達を起こす。

「んーここ何処?」

「何故床が揺れている?」

「この振動って……」

雅之は床の振動に覚えがあった。それは前世で乗っていた自動車の振動のだった。

(何だよ!この世界車あんのかよ!?何でもアリじゃねぇか!目の前にいるのも……アイドルじゃん!マジのアイドルじゃんかよぉ………)

雅之はあまりの衝撃に悶絶していた。

「それでは皆さん起きたところですしこちらにおかけ下さい。」

エイメンはにこやかな顔でユーザを椅子は案内させる。そしてユーザ達にグループの概要を説明し始めた。

 

「今皆さんに立っているのが私が2年前からプロデュース兼マネージメントしているアイドルグループ『手配書の女神』です!では彼女達から自己紹介を。」

「はい!」

リーダーのアージが返事すると5人はユーザにやったような自己紹介を始める。

(〇〇担当とか言うのもアイドルっぽい!)

自己紹介の後、エイメンの説明が続く。

「まず始めにアイドルという物についてご存知でしょうか」

「キョクアで流行ってる歌って踊る美男美女の事?」

「まぁ……概ねその認識で間違いではありません。……ですが。」

「ですが?」

エイメンの語る表情が険しい物になる。

 

「もう流行ってはいないですね。キョクアでは既に私達の何倍も規模の大きいアイドルグループが幾つもありそれがもう文化として大衆に定着してしまっています。その上何十何百とアイドルがデビューし供給過多になり大きな飽和状態に陥っています。私が言っても説得力が無いと思いますが、現在新規のグループを立ち上げるのはかなり無謀といえましょう……」

「え?じゃあダメじゃないすか?」

ユーザが思わず口に出すとエイメンはその反応を待っていたかのように唇の端を上げはにかむ。

「そう思いでしょう!だから私は考えたのです。そんな時代だからこそ、今まで聴衆が感じ取ったことのない衝撃を与えれば、その効果は絶大な物になると!そして同時にこんな言葉が浮かび上がりました。」

エイメンは指を鳴らして一字ずつ読み上げていく。

「は ん ざ い 犯罪。」

彼はユーザの方をチラチラと見やりながら復唱して欲しいと目で訴えかける。

「……犯罪?」

「そうですそうです!そうですよ!」

エイメンは手を叩いて喜び出す。

(何か面倒くさいヤツだな……)

 

「メンバーが犯罪者のアイドル!これは無いでしょうと!もうね。シビレましたよ。こんな発想誰も思いつかないでしょうよと。」

「まぁ良くも悪くも思いつく物ではあらぬが……」

「その時あの人疲れたのかな?」

ハーズとザッドの指摘も耳に入っておらずエイメンは続ける。

「そこからは早かったです。直ぐに街中で声を掛け5人メンバーを集めコトに手を染めさせたのです。」

「何でこういうのに限って、無駄に行動力あるんだよ!」

「だからこそ“無駄な”行動力って事なんじゃないか?」

雅之の叫びとそれに対するユーザの粋な返しも耳に暮れず、話題はメンバーの話になる。

「ウチのメンバーの特徴はメンバーのありのまま!というのを一貫しておりまして。楽曲制作やライブの演出等、メンバーの個性を多く取り入れてとにかく埋もれない、模写にならない事を第一で取り組んでいまして。」

「最初に犯罪犯してんだから、後は何やっても誤差だろ。」

「ここからは彼女達に」

「何処までも他人の話を聞かねぇなアンタ!」

ユーザが叫ぶがもちろん反応はなくリーダーのアージが喋り始める。

 

「はい!プロデューサーの言う通り私達は個性爆発で活動に取り組んでいます。……以上です!」

「内容うっす!」

雅之が質問する。

「そもそも皆さん犯罪に抵抗は無かったですか?」

メイが首を傾げながら応える

「うーん、ほんのちょっとはありました。」

「ほんのちょっとしか無かったのか……」

「でもやったらスッキリしたよね。今更戻れないし。」

セーハが付け加える。

「もう人としてのプライドが皆無!」

 

「鈴に言われるって恥ずかしくないのかよ!やっぱ上が狂ってると下も狂ってんだな……」

ユーザが突っ込んだ瞬間部屋全体に衝撃が走る。

「うぉっと!何今の?」

「あぁこのトラック、強く踏み込まないと止まらないんですよ。」

「着きましたよー。」

向こうからユーザ達が乗っていた大型トラックの運転手が告げる。ユーザはトラック後ろに載せてあるハウスから降りると思わず声が出た。

「え?ここって……」

「おいユーザ!なんだこのデカいのは!」

キンノミヤが事務所の前で叫ぶ。

「事務所に戻って来ちゃったよ。」

ハッピー・マテリアライズの事務所だった。

「いやぁ予定を急遽変更しましてね。やはりトップ同士で話した方が早いかと。」

そして、エイメンは事務所に入りキンノミヤと別室で2人きり話し始める。

 

しばらく立つと2人のいる部屋から2人の怒号が飛び交い始める。

「何だ何だか!?」

ユーザ達が向かおうとするとエイメンが慌てて部屋を飛び出す。後から出てきたキンノミヤの手には刀が握られていた。

「そんな怒らなくても!」

涙目になりながらエイメンさ後ずさる。

「ふざけんな!お前ら犯罪者集団みたいなのの相手なんかこっちから願い下げだ!ハッピー・マテリアライズの名にキズが付くんだよ!」

床に座り込む相手の首に刃をを向けながら彼は叫ぶ。

「分かりました!出ていきますから!乱暴は辞めて〜!」

「プロデューサー置いてかないで〜!」

エイメン達はトラックに飛び乗った後すぐ行ってしまった。

「フン、ふざけた野郎どもだ。」

「何か嵐見たいなヤツらだったな……キンノミヤ大丈夫だったか?アイツ妙な薬を使うんだが?」

「カントの侍を舐めるな。あんな粉毒にも薬にもならん。」

 

 

──数日後のホウルホースト

窓から杖の付喪神ゲットオンが家に戻ってきた。彼はあの事件以降落ち着きを取り戻していた。

「ゲットオン〜暇だから早速何か流して〜。」

ウィードが呼び掛ける。

「今回はキョクアから音を録ってきたぜ。」

「えぇ珍し!早速聴いてみよ!」

杖の先端から音楽が流れる。

「速報です!キョクア各地で犯罪行為を繰り返していた逃亡犯6人全員がウォータスで逮捕された模様!グループはウォータスで診療所勤務の男性を拉致した所を警備隊に見つかり、今回の逮捕なら繋がったようです。男性は既に保護されており、特に目立ったがいしょうは無いようです。随時情報が入り次第お伝えします!」

「何これ、つまんないの。」

ウィードはガッカリしながら寝転がる。

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