使うモノ語り   作:イヤマナ ロク

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第72話 繋がりの左手

「囲め囲め!」

「…………………」

ユーザは自分の周りを取り囲む子供達をじっと見据えていた。最近依頼がそれほど来ないのでユーザは子供達と約束した20対1の鬼ごっこをしていた。

「お前行け!」

1人の子が輪から抜けユーザに向かっていく。ユーザはそれを難なく避けていく。

「ドンドン行くぞ!」

「ユーザ覚悟!」

輪の中で追いかける子供が2人、3人と続々と増えていく。

「どうした?一気に向かってこないのか?」

「むしろ1人ずつ抜けていって輪が小さくなっていくからユーザの動ける範囲も減ってくからこれでいいんだ!」

「なるほど色々考えてんだな……じゃあハーズ、行くか!」

「オッケー!」

するとユーザは体を突然その場で飛び上がり体を回転させる。そして左手で着地し、そのまま腕を上げる。

「よっ!」

ユーザの体は宙を舞い子供達の輪の外は抜けていく。

「何!」

「中にいるから出ればいいだろ?」

「付喪神なんて卑怯だろ!」

「使っちゃいけないルールなんて無いぜ?」

子供達が不満を垂らすがユーザはてんで気にしていない様子だすると背後から

「タッチ!」

「うえぇ!」

スイングに乗って空からやって来たショードがユーザの背中をタッチする。

「オレたちの勝ちー!」

「付喪神はユーザだけの特権じゃないぜ!」

「クッソー!」

「師匠やりましたよ!」

「うむ、特訓の成果が出ているな。」

「ザッド!お前どっちの味方なんだよ!!」

 

「とは言ってもそれならに楽しかったけどな。てか意外とキツイ……この暑さであんだけ走れるなんてライドエンプの子供はバケモンだぜ。」

ユーザが事務所に帰ってくると事務所が若干涼しくなっていた。

「ん?なんだこの感じ……何かすごいスッキリする!」

「あぁ別世界に来たみたいだ、まるで魔法のような」

「魔法ですよ。」

「え?」

背後から聴こえたのはテイの声だった。ウィードとスモンもいる。

「ユーザさん久しぶりです!いや〜この国暑いですよね!でもこれ涼しいでしょ!」

ウィードが指差す方向には廊下だが、見慣れない暖簾が掛かっていた。

「何だこれ?」

「氷の魔力を注入した周囲の気温を下げる魔術具です。こんなに暑いと必須ですよね?」

「いやそうだけど……そんな言うために来たんじゃないだろ。」

「その通りです。」

 

ユーザとテイ達は机で話を始める。

「依頼なら前みたいに手紙でオレ達を呼べばいいのに。」

「いや今回の話に関してはユーザさんとそちらの付喪神に関わってくるので直接話したく。後手紙を送るより直接来た方が魔力を消費しないので。」

テイはユーザとハーズを指す。

「え、ボク?」

「もしかしてお前の記憶に関する話なんじゃ無いのか?」

「もしかしたら、関係あるかもです。」

「ホント?ボクの記憶が……戻るかもしれないってコト!」

ハーズは喜びながら身を乗り出す。

「先日、大魔法使いの居城跡に行き調査をしていたらあるもの見つけたんです。」

「ほうほう」

「それが籠手なんですが……今実物をお待ちしたので見た方が早いかと。」

するとテイは木箱を取り出しその中から布に包まれている籠手を取り出す。布を剥がしその外見を晒す。

「それがこの籠手です。」

それを見てユーザとハーズは目を疑った

「え?….……えぇ!えっまっマジい!」

「この籠手の模様とかこれハーズじゃね?こっちの方がピカピカだけど。」

テイの持ってきた籠手は左腕用では造形や彩色がハーズの外観と全く同じだった。ただ一つ明確に違うのがハーズの外装は色褪せて所々傷もあるのに対しテイの持ってきた物はまるで最近作られたようなとても眩い輝きを放っていた。

 

「コレ……どういう事ですか?」

「ボクって元々魔法使いの元にいたって事?」

2人は尋ねるがテイは首を横に振る。

 

「まずこの籠手がどういう物かにもよりますね。大魔法使いが生きていた時代にはありふれたものだったのか、大魔法使いその人が作り出した魔術具なのか。まだ調べていないのでそれに関してはなんとも言えません。ただ、関連している可能性は高いと言えます。なので折り入った頼みなのですがしばらくハーズさんを預かってもよろしいでしょうか?」

「あっ…………それが……依頼?」

「はい、もちろんハーズさんは元の状態でなるべく早く返しますので!どうかお願いします。」

ユーザは預かるという反射的に手を引っ込めた。ハーズはその意図がイマイチ掴めず自分の意見を述べる。

「ボクは賛成だよ!だってこの籠手の事を調べれば自分の事が分かるかもしれないし、ボクだって自分の事ももうまともに分からないまま生きるのは嫌だよ。ユーザだってその気持ち分かるだろ?」

「え?いやそうだけど……」

そう呟く彼の目には動揺がくっきり漏れて出ていた。

 

「いやぁ何でだろうな?自分でもホント分かんないだよ……こんなドキドキしてんのが普通にテイ達は信用出来るし、戦いの時も別に何とかなるし、なのにさぁ、おかしいよな?おかしいよな!ハハハッ!分かったよハーズは預ける。どんだけ長い事研究してもいいぜ?正直他人が困ってるのを自分のわがままでさらに困らす訳には行かないしさ。」

「ユーザ……」

ユーザはそそくさとハーズを腕から外し、テイに手渡す。

「むしろハーズ?お前が迷惑かけんなよ?」

「そんな訳無いじゃん全く!」

ハーズは即座に否定する。

 

「ご協力頂きありがとうございます。それでは。」

そう言うとテイ達は一瞬で消えて行ってしまった。

 

「……………」

ユーザは本当に分からなかった。自分の心の真意を。

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