使うモノ語り   作:イヤマナ ロク

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第79話 アイスの概念を超える

「それにしても新しい味って言われてもな……要望がぼんやりとしすぎていて何言えばいいか分かんないなぁ。」

ユーザはしばらくうなるしか無かった。それを見兼ねたバカ医者は

 

「今なら特別にワタシにじゃんけんかで勝てば今までの味のバリエーション教えてやってもいいぞ?」

「本当か?てかそういうのはちゃんと覚えてるんだな。左右と事務所の間取りは未だに分からない癖に。」

「じゃあ行くぞ!じゃーんけーん」

「いきなりかよ!」

 

「ぽん!っていったら手を出すんだぞ!」

「紛らわしいわ!」

こうして本番のじゃんけんが始まった。

「因みにワタシはグーを出すぞ。じゃーんけーんぽん!」

「えぇ?じゃーんけーんぽん!」

バカ医者は申告通りグー、ユーザはパーを出した。

「何ぃ!?!?!?負けただと!?」

「そりゃそーだろ!自己申告したんだからな。」

「ちょっと〜審判!」

「こんなじゃんけんに審判いる訳ねーだろ!」

リグは二人のやりとりを見てとても困惑していた。

「こいつらいっつもこんななのか……」

「そうっすね……」

(完全に会話じゃなくて漫才なんだよなぁ。)

雅之もリグと同感だった。

 

「じゃあワタシの話ちゃんと聞いてやれよ?」

「文がおかしくなってるぞ。ホントしっかりやってくれよ?」

ユーザの心配をよそにバカ医者がガリガリ君の味を紹介していく。

「現在売られているのは9種類。まず原点のソーダ味。双璧を成すコーラ味。」

(それは日本と同じなのね。)

「たそがれの甘橙(オレンジ)味、親戚からもらったメロン味、種ありの食べにくいブドウ味、憧れの高級白桃味のフルーツフレーバー。」

「何か……様子がおかしくなってきたぞ?」

ユーザは頭を傾げる。

(別ベクトルで狂っとる!。ここでもガリガリ君はガリガリ君なのかぁ………なぁ?)

雅之は何故か謎の安心感を覚えていた。

「で、最近発売されたのはズワイガニ味とベニザケ味と生牡蠣味だ。」

「うえっ!!魚介の……アイス!?」

ユーザはそれを聞き露骨に狼狽えていた。

 

「これが実際の商品だ。こんなにたっぷりあるぞ。」

「いや明らかに売れてないだけだろ!」

ガリガリ感などの氷菓はキョクアの技術で作られた冷凍貯蔵室内に設けられた専門店のみで買う事が出来る。

あまり人肌の熱を通さない木材に漆のような物を内側にコーティングした箱にピッタリと収まっている。

各味毎に仕切りで分けられておりソーダ味やコーラ味は他の味の2つ分の仕切りを占領しているにもにも関わらず品切れ間近だ。

 

対して魚介フレーバーは大量に売れ残っており半額値下げもされていた。

「てか生臭っ!」

「こりゃ魚屋やってねぇと耐えられねぇぞ!」

ユーザはすぐにソーダ売り場に避難し、リグも顔をしかめる。

「うおお〜!!こんなに濃密な海の匂いがこのような所で嗅げるとは思わなかったぞ!」

ザッドは匂いを嗅ぐなりイキイキとし出した。

 

「では食べてみよう!」

実際に3個の味を買って帰り実食してみた結果

「どうしたユーザ?頭キーンとしたのか?」

「いや、海鮮の生臭さと氷の冷たい感じが最高に合わなくてこれは……… ウ゛ォ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!゛」

 

ミスマッチな味の過剰摂取でユーザの胃袋は空っぽになってしまった。

「新鮮過ぎてこりゃ人を選ぶな……初めて食ってみたがこりゃダメだ!」

普段魚に囲まれて生活しているリグも完食に時間がかかった。

「ぐぬぬぬ……食してみたい……!これほどまでにこの身が付喪神である事恨んだ事は無いぞ!」

「いややめといた方がいいっすよ?」

雅之は暴れるザッドを必死に止めていた。

「こういう時ハーズがいりゃすぐ止めれんだけどな。」

ユーザはハーズがいない事を思わぬ所で実感させられた。

「なんでもいいから口直ししたい!なんか普通の料理食いたいな……」

 

「え?例えばコーンポタージュとか?ナポリタンとか?」

(何かガリガリ君の味料理出したちゃった……)

「うんうんそういうの。とにかく生臭いのを消したいんだよ!」

ユーザがお腹をさすりながら机にへたり込む。

「コーンポタージュ?ナポリタン?それだ!」

雅之が何気に口にしてみると、バカ医者が何かを閃いた。

「今すぐナポリタン食べに行こう!」

バカ医者の鶴の一声で一行は食堂に行きナポリタンを注文する。

 

「思いついちゃった。みんな不評の海鮮をおいしくするには方法即ち、こういう事だよ!」

するとバカ医者は箱からズワイガニ味のガリガリ君を取り出すや否やナポリタンの皿にのせ、フォークでガリガリ君を砕く。

その後麺全体に馴染むまでかき混ぜる。

 

「どうだ!これならユーザもイケるだろ!」

「くっ……!いくしか……無いのか!」

ユーザは目を瞑りながらパスタを掻き込む。

「アレ?イケる。何というか……新感覚のパスタになった!え?うまいぞコレ!リグさんやってみて」

リグもベニザケ味でやってみた。

「確かにイイなこれ!若干冷たい感じもライドエンプの気候なら丁度いいな!」

 

「だろだろ!あの店にも教えたろ!」

バカ医者はその後ガリガリ君売り場の店員にも教え宣伝してもらう事になった。

結果口コミで瞬く間に広がり売り場の守護神だった海鮮フレーバーはライドエンプでだけ莫大な売り上げを記録した。

だがその評判が国境を超えるのも、もはや時間の問題であった。

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