ふと、目が覚める。
目線の先、天井にはシャンデリアが垂らされ、布のようなものがかけられたロープのようなものが張り巡らされている。
……知らない天井だ。
何か酷い悪夢を見た気がするが、気のせいだろう。その証拠に拘束が外れている。未だに誰一人として合っていないが多分誰かいるんだろう。そうじゃなければおかしいだろう。
あんな奇妙な白い小人も、狼にしては大きさも骨格も妙な獣も、外郭に居て然るべきものだ。明らかに人が建てたであろうこの診療所のような場所にいるはずがない。
そう。だから左にある扉の先から微かに、何かを貪るような音がするのも気のせいのはずだ。そうに違いない。幻聴だ。そうだきっとまだ夢なのだ、硬く目を瞑ってひたすら願えばすぐ起きられるはずだ大丈夫だあのクソみたいな日々もそうやってやり過ごして…………
~~~~数十分後~~~~
そもそも俺はワザリング・ハイツに、あの嵐の丘に居たはずだ。なんだってこんな薄汚い診療所にいるんだ。ここがその近くだとしてもなんだってあんな化け物がいるんだ。なんだって急に燃え出すんだ。あの白いのの仕業か?あんな大量にいるやつに燃やされたら俺だってなす術も……
そこまで考えて、ふと気づく。そういえばあの炎、妙に色鮮やかだったな。
改めて目を開けて見回せば、薄汚れてはいるものの点滴が白かったり赤かったり、本の表紙が緑だったり…確かに色がある。
ここは意外にも金持ちの所有物なのか?それとも……T社の近くじゃ、ないのか?だとしたら俺は、どう帰ればいいんだ…?
「ふざけるなよ……家を失ったどころか、帰り道も分からなくなるとか…」
ただただ深く絶望する。あんな目にあった後じゃ怒りも湧かない。
ああ、認めるよ、最初から気づいていたさこれは現実だって。でも夢だと信じていたかったのに…いくら現実逃避してもちっとも目が覚めないっていうなら、これは現実なんだろうな…
「クソっ、なんで俺ばかりこんな目に合うんだよ…俺が何をしたっていうんだ…」
ぶつくさ言いながらようやく寝転がっていた台から降りる。正直目が覚めた時から背中が痛かったから、我慢できなくなったのもある。
さて、どうしようかと辺りを見回す。とりあえず左には扉があるが…まだ貪る音が聞こえる。何が居るかは知らないがどれだけ食ってるんだ?
で、右にも扉がある。どうやら診療所の奥に通じているらしい。
「せめて人間に合わせてくれ、頼む、どうか、本当に頼む!」
切実に願う。人肌恋しくなるには早いかもしれないが、俺の精神がそんなに強くないことくらい自覚している。もはや裏路地のチンピラでさえ恋しいのだ。
ひたすら願いながら扉を開けようとする……が、無情にもガチャリ、と引っかかるような感触。鍵がかかっているようだ。
………………
強化施術だけは受けているのだし、壊せないだろうか?その辺の点滴スタンドで思いっきり殴ってみる。
が、びくともしない。傷すら入らない。流石にそれはおかしくないか???
「……………はあぁぁぁーーー………」
その場で跪き、頭を垂れて深く溜息を吐く。
望みは絶たれた。向かいの扉、あの音の出所に向かうしかない。すごく嫌だ。
もしかしたらあの獣も、力任せに殴れば強化施術の分何とかとも思ったが、見るからに木製だろう扉に傷一つつかないのではそれも怪しい。
P社の特異点の可能性もあるが……流石に学んだ。希望的観測は絶望しか生まない。少なくとも今はそうだ。
とりあえず、向かいの扉に向かう。のぞき窓がついていたので覗いてみるが…扉の先は下り階段になっており、音の出所は見えない。
流石にこの扉には鍵はついていないようだ。扉を開け、ゆっくりと階段を下る。
そのまま真っすぐ、階段下の小部屋を通り、大量の施術台のある部屋に入る。その奥に……居た。
あの獣だ。食っているのは…人か?苦しそうに唸っているが…手傷を負っているようだが、あの炎を喰らったからか?
よりによって出口の前に陣取っている…どう足掻いても、戦うしかなさそうだ。幸い俺にはまだ気づいていないようだが…
武器はない、スタンドで殴ろうにもガチャガチャ鳴って気づかれそうだ。となると…素手、か?
強化施術は…正直もう信用できるか怪しい。だがやるしかない。めちゃくちゃに怖いしもう泣きかけているが、6人にリンチされるよりはマシなはずだ。よし行くぞ、行くぞ、あれは小汚いヒースクリフみたいなものだ、殴れば殴られっぱなしのはずだ。本人は少し前に殴り返してきた気もするがそんなことは知らない、行ける、俺ならいける、いける、さあ行くぞ、いけ…
ガチャン
…………何か踏んだな?
これは鎖か?何で診療所に?
音が出たな?しかも結構デカかったな?
……………チラッ
獣、めちゃくちゃこっち見てるな?
ゆっくり近づいてきてる?
踵を上げて……?走ってきたな!?
「うおわぁぁぁああああああああ!!!??」
どうするどうするどうするどうする!!!??いやとにかく殴れじゃなきゃ死ぬ速い殴れ殴れ殴れ!!!!
「うおっ!!うわぁ!!!」
ゴッ!ドゴッ!
『グッ、グルゥッ!』
あんまり効いてなさそうだが怯んではいる!いける!!押し切れ!!
「この!!!死ね!!!!」
ガッ!!ドガッ!!
『ガァッ!ガオゥ!!』
もはや傍から見たらどっちが獣か分からないな。
だが知ったことか、俺は生きるんだ、そして全部取り返してやるんだ。
幼い頃のあいつと獣の姿が重なる。
そのためにここから出て、ヒースクリフ…あのクソッタレの野郎を……
「ぶっ殺してやる!!!!」
ドゴォッッ!!!
最後に思いっきり力を込めてぶん殴る。やったか?
『グルゥッ!』
いや…同じように怯んだだけだ!不味い、力を込めた分体制が…!
獣が後ろ脚で立ち上がる…何をする気だ?
ガッ
前足で掴まれた?身動きが…不味い不味い不味
グチャッ、ゴリッ。
「おごっ、っえ?」
なに、が
グチャッ、グチャ、ゴリ、ガリ
「コポッ、あ?これ、血」
あ、これ食われ
グチャッ、グチャッゴリッ、グチャッグチャッ
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──────────────────YOU DIED──────────────────
原作くらい体力と攻撃力あったらワンチャン勝てそう
でもとりあえず死んでほしいのでナーフしました