ザフト軍接近の報は、マスドライバー施設を有する種子島にも届いていた。
この一報を受け、種子島に司令部を置く防衛部隊である第101師団は指揮下の全部隊に戦闘配置を下命すると同時に、南部・西部両方面軍に航空支援を要請した。
「遂に来るべきものが来たな」
第101師団長は戦闘指揮所を兼ねた師団司令部で呟いた。
「しかしもっと早く来るものだと思っていましたがね」
師団長の呟きに参謀長はそう返した。
「ザフト軍も準備に手間取ったのかもしれんな。プラントの国力を考えたら、低軌道からの降下作戦から地球全土に対する侵攻作戦をやったのだから補給や整備で、今の時期になったのだろう」
師団長がそう答えた。
「第1機動砲兵大隊陣地展開完了!第1戦車大隊展開完了まで間もなくです。各防空大隊及び歩兵旅団配置完了!」
「戦術機械化連隊マスドライバー施設及び砲兵陣地への展開完了!」
「西部方面軍より通信、鹿屋基地より海軍の2個戦闘飛行隊が緊急発進、種子島到着予定時刻は15分後、知覧基地から空軍の60式爆撃機の編隊も緊急発進しました」
「熊本の健軍基地から通信、戦術機械化空挺大隊が増援として出撃したとの事!」
次々に入る報告に師団長は、参謀長に呟いた。
「どうやら上は今回の戦闘で、ザフト軍を相手に新兵器や新戦術を試す腹積もりらしい」
「貴重な実戦経験ですからね。まぁそれを受けるザフト軍には同情しますよ」
師団長の呟きに参謀長はそう言って、苦笑を浮かべた。
一方その頃、ザフト軍潜水艦隊は日本海軍の哨戒機編隊からの対潜攻撃を受けていた。
「上空の敵哨戒機未だ我々を追尾中!·····海上に新たな着水音!敵の対潜魚雷です!」
「クソッ!機関最大!振り切れ!他艦はどうなっている?」
「2番艦は既に沈黙、3番艦は機関室付近で敵魚雷が起爆、現在緊急浮上中、その他は不明です!」
「揚陸艦隊から緊急伝!制空権確保の為、ディンを1個小隊発進させたそうです」
「遅い!遅すぎる!ここは既に敵地なのだぞ!」
「司令、間もなく巡航ミサイルの発射地点に到達します」
「宜しい、各艦に通信、浮上後速やかに巡航ミサイルを発射し、敵拠点に打撃を与えた後、MS隊による制圧戦に移行する」
揚陸艦隊から発進したディンによる妨害を受けた、哨戒飛行隊は護衛戦闘機隊による援護の元沖縄方面へと離脱して行った。
哨戒飛行隊が離脱して間もなく、浮上したザフト軍潜水艦隊は船体上部にあるミサイルハッチから巡航ミサイルの発射を開始した。
「浮上したザフト軍潜水艦からミサイルの発射を確認!」
「来たか・・・・全部隊対空戦闘、攻撃はじめ!」
種子島に降り注ぐ巡航ミサイルの群れに、地上から地対空ミサイルや機関砲弾が次々に撃ち上げられていった。
迎撃ミサイルは順調に巡航ミサイルを撃ち落としていったが、それでも迎撃を免れた物が種子島の大地に降り注いだ。
「被害状況知らせ!」
「敵ミサイル着弾するも、マスドライバー及び防衛陣地に被害なし!」
「砲兵観測隊より通信、ザフト軍MS部隊が海岸線に展開を開始した模様!」
この報告に指揮所は緊張感を増した。
「参謀長、此処が正念場だぞ。西部方面軍からの増援到着まで持ち堪えられるかは、君の砲兵隊と戦術機部隊に掛かっている」
「お任せ下さい、我が砲兵隊の力をザフト軍に見せつけてやりますよ」
いつも通りの涼しい顔で参謀長は言った。
もしこの場にいる人物で、彼の心の中を覗ける者がいたらまた違っただろう。
なぜなら参謀長の心の中は、今まさにザフト軍に対する敵愾心がマグマの如く煮えたぎっていた。
(美恵子、京子、翔子、父さん、母さん、やっと仇が討てるよ。ザフトの連中を一人残らず地獄に叩き落としてやるから見ててくれ)
一方ザフト軍は、田之浦海岸に上陸したMS部隊を援護するため、巡航ミサイルを豪雨の如く叩き込んでいた。
「上陸地点確保!全機敵の迎撃に注意しつつ、橋頭堡を確保しろ!」
MS隊を率いる指揮官は、指揮下の隊員に命令を出しつつ、周辺監視を厳重に行っていた。
「隊長!周辺に敵影が見受けられません、奴ら俺たちに恐れをなして塹壕の中でガタガタ震えてるんじゃないですか?」
「ショーン!敵を侮るなと何度言えば分かるんだ!特に今俺たちが相手しているのは・・・・」
彼らの会話は、強制的に中断させられた。
なぜなら、レーダーからけたたましくアラート音が鳴り響いたからであった。
それは、第1機動砲兵大隊による制圧砲撃であった。
〇小話
今回出てきた参謀長は、101師団に転属するまでは西部方面軍で砲兵参謀を務めており、エイプリルフール・クライシスの際に福岡県庁に務めていた妻を、春休みのため帰省していた娘2人、そして両親を亡くしている。その為、ザフト軍に対する敵愾心が強いが、日本軍人としての矜恃もあるため、その敵愾心を表に出すことなく職務についている。