今度は異世界転生じゃなくて異世界転移かよ ※リメイク版 作:にゃすぱ@梨
「神ロキ、忠告しておきますが、喧嘩を売る相手は間違えちゃダメですよ。
あと、早くその回復薬かけてあげないと本当に死んじゃうよ」
「……っ」
リムルは淡々と告げると、ベルの肩を軽く叩き、店内へ戻っていった。
残されたのは、沈黙したロキファミリアと、地面に倒れたベートだけ。
「リヴェリア!た、頼む!」
「……わかった」
リヴェリアは急いでベートの状態を確認し、リムルから渡された回復薬を使った。
幸い命は取りとめた──が、誰もが浮かない顔。
「ありえない……レベル1が、レベル5を……?」
「団長、あれ……どう見ても手加減されてましたよね……?」
「……あぁ。全く歯が立っていなかった」
誰もが口を開けなくなるほどの“異常事態”だった。
「リムルさんって……ほんっとうに強いですね!?」
「いや、あれは相手が弱かっただけだよ」
「レベル5ですよ!? たった一撃で……!」
そこに、腕を組んだミアがズイっと顔を出す。
「アンタねぇ……。店の前の道を陥没させるほど暴れるとはどういう了見だい」
「え、あ、ちょっと……力加減をミスった……かな?」
「“かな”じゃないよ!!」
「まぁまぁ、あとで直しておくから」
「……ほんとに頼むよ」
ミアはため息をつきながらも、どこか呆れ笑いを浮かべて引き下がった。
ベルはそんな二人を見ながら、小声でぽつり。
「リムルさん……やっぱり人間じゃないですよね?」
「え、いまさら?」
「いまさらです!」
思わず吹き出し、二人で笑い合った。
「ただいまー!」
「おかえり! 二人とも!」
「ヘスティアも戻ってたんだな」
「さっきね! ちょっと友神に用事があってさ!」
「そっか。じゃあヘスティア、ベルのステータス更新してやってくれ」
「はい!お願いします!」
しかし──
「ミ、ミノタウロス!? ベル君、何階層まで潜ったのさ!?」
「第5階層……です……」
「……ロキのやつ、あとで絶対締めてやる……!」
リムルは苦笑しながら促した。
「まぁまぁ。とりあえずステータス更新してみようぜ」
ヘスティアはベルをうつ伏せにさせ、ステータスを刻む。
そして──紙を見た瞬間。
「……っ!? リムル君……これ……」
無言でリムルに紙を渡す。
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ベル・クラネル
Lv:1
力:F160
耐久:E269
器用:E290
敏捷:D503
魔力:G0
【英雄萌芽】
・強敵との対峙で“英雄因子”が芽吹き成長
・得た経験はステイタス更新時に大きく反映
・格上相手ほど成長率上昇
・“心折れ”でスキル消滅
・限界突破可能
【憧憬一途】
・早熟する。懸想が続く限り効果持続
・懸想の強さに応じて成長率向上
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「……これは、すごいね……」
ヘスティアは額に手を当てながら呆れ混じりの声を出した。
「いや、“成長スキルがヤバい”のは知ってたよ?
知ってたけどさ!? まさかここまでとは思わないじゃないかーー!!」
「完全にスキルの力だな。特に敏捷の伸びがエグい」
「伸びすぎだよ!?」
ベルは紙を見て震えていた。
「ぼ、僕……こんなに……?」
リムルは優しく笑った。
「よく頑張った証拠だよ。ベル」
「……ありがとうございます!」
しかし、ヘスティアは眉を寄せながら別の点に気づく。
「でさ……ベル君。これ、《憧憬一途》って……誰に恋したんだい?」
「へっ!? いや、その……」
「ベル、隠さなくていいって」
「……アイズ・ヴァレンシュタインさんです……」
「ほらね!!!」
リムルは笑いながらベルの背中をポンと叩いた。
「いいじゃんベル。恋は英雄の燃料だぞ?」
「うぅ……!」
リムルは自室でシエルと会話する。
(シエル、これ……スキル同士の相性問題ってどうなんだ?)
《はい、主様。
《憧憬一途》と《英雄萌芽》は“成長系”で系統が近すぎます。
このままでは効果が干渉し、どちらも本来の力を発揮できなくなる可能性があります》
(やっぱりか)
《なので《英雄萌芽》を“補助型”に改修することを提案します。
《憧憬一途》の発動を最適化する方向です》
(なるほど……任せるよ、シエル)
《お任せください、主様》
リムルはヘスティアの部屋を訪ねた。
「ちょっと話があって……」
「入っておいで」
ベッドに腰かけると、リムルは淡々と事情を説明した。
ロキファミリアにベルの悪口を言われたこと。
それでベートと喧嘩になったこと。
ほぼ瞬殺したこと。
「はぁぁぁぁぁ……」
ヘスティアは頭を抱えた。
「殺してないよ!? 瀕死にはしたけど!」
「瀕死で良しとするんじゃないよ!!」
「えぇ……」
それでも、ヘスティアは事実を整理しながら冷静に言う。
「でも……リムル君。
いま君、“レベル1”で活動してるんだよ?
それがレベル5を一撃で倒したとなれば……
レベル詐称を疑われる可能性がある」
「完全に忘れてた……!」
「明日ギルドで何か言われたら、担当アドバイザーをここに呼びな。ボクが“事情”を説明する」
「了解」
ヘスティアはもう一つ大事な点に気づく。
「それで……ベルのスキル、《憧憬一途》と《英雄萌芽》さ。
あれ本当に両立するの?」
「そこが問題なんだ。
系統が近いから、干渉して機能不全になる可能性がある」
「……なるほどね。
成長スキルが危険なのは知ってたけど……こういうパターンは知らなかった」
「だから、《英雄萌芽》を補助型に改修するつもり」
「うん、分かったよ」
リムルは立ち上がり、笑った。
「じゃ、おやすみヘスティア」
「おやすみ、リムル君」
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