今度は異世界転生じゃなくて異世界転移かよ ※リメイク版   作:にゃすぱ@梨

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白猿と黒い刃

 

 

「すごい人ですね」

 

「くれぐれもはぐれないようにね!」

 

「まぁ、はぐれても思念伝達があるから大丈夫だろ」

 

「それもそうか…よし、まずはあれだ!」

 

ヘスティアが指さした先には、クレープ屋があった。

 

「って食べ物かよ!」

 

「何言ってるんだい! お腹がすいてはなんとやらだよ! ほら行くよ!」

 

ヘスティアは2人の手を引き、そのまま走り出した。

 

「おじさーん! クレープ3つちょうだい!」

 

「毎度あり! ちょっと待ってな!」

 

鉄板の上に垂らされた生地が、丸く薄く広がっていく。

焼き上がった生地の上に、生クリームやフルーツが乗せられていった。

 

「ほい、おまちどー!」

 

「ありがとー!」

 

3人はそれぞれクレープにかぶりついた。

 

「「「おいしー!!」」」

 

「もっと色んなの食べよーぜ!」

 

「え、あの、ガネーシャファミリアの調教は見ないんですか?」

 

「そんなの後々! ほらほら!」

 

テンション爆上がりのヘスティアに、俺とベルは振り回されるのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

「あーあ、アイズとロキはどっかに行っちゃったし、あたし達どうする?」

 

「そうねぇ…どうしましょうか」

 

「軽く何か食べるものを買って、調教見に行きませんか?」

 

「おー、それいいね! そうしよ!」

 

「もう、私たちだけで楽しみましょうか」

 

「そう…ですね……アイズさん……」

 

黒髪ショートの褐色肌の女の子と、黒髪ロングの褐色肌の女の子、

そして山吹色の髪をしたエルフの少女は、はぐれたロキ達を探すのを諦め、

自分たちで楽しむことにした。

 

「って、ティオナさん買いすぎじゃ…?」

 

「えー? これくらい普通だよ! ね? ティオナ」

 

「いや、私に振らないでよ。私はそんなに食べないし」

 

「えぇー! 嘘だぁ! いっつもバクバク食べるじゃんか!」

 

「うるっさい! こんなバカ放っておいて席取りに行きましょ、レフィーヤ」

 

「むぅー! 後で欲しいって言ってもあげないからね!!」

 

3人はそれぞれじゃが丸くんを買って、闘技場を目指した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

「さてと、ウチらはどうしよっか」

 

「ティオネ達と合流すれば…?」

 

「いやー、こんな人混みやで? どこ行っとるか全然わからんわ」

 

「………」

 

「そんなわけで、ウチらはウチらで楽しもうやないの! ええやろ? アイズたん!」

 

「…いいですけど……変な事したら即斬りますから」

 

アイズの鋭い眼光がロキに突き刺さる。

 

「お、おぉう……任せとき……と、とりあえず! 闘技場目指すか! せっかくだしガネーシャファミリアの調教見ていこ?」

 

「はい」

 

そして、ウチらは闘技場へ向かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

「まだ食べるの? ヘスティア」

 

「甘いものは別腹だぜ??」

 

「いや、さっきから甘いものしか食べてないじゃん…」

 

「細かいことは気にしちゃダメだぜ!」

 

「……はぁ。んで、シルさんを探さなくていいのか? 財布なくて困ってるかもしれないんだし」

 

「ちゃんと探してるよ? ただ、見当たらないだけ」

 

「それは、食べ物しか見てないからだよね?」

 

俺はため息をつきつつ、人通りに目を向けた。

 

「あれは…?」

 

「どうしたんだい?」

 

「いや、なんでもない」

 

深くフードを被った人影が視界の端をよぎった気がした。

なーんか気になるんだよなぁ……たまたま目に付いただけ、か?

 

「次はどこ行くんだ?」

 

「こっちだよ!」

 

「ところで神様、その背負ってるものはなんですか?」

 

「えぇ!? いや、これは……また後でね!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

「どの子がいいかしらね…」

 

モンスターが収容されている一角を、ひとりの人物が静かに見て回っていた。

 

「どなたですか! ここは立ち入り禁止ですよ!」

 

声をかけられた瞬間、彼女は後ろへ回り込み、そっと目を塞ぐ。

 

「ふふ…もう少し別のモンスターが見たいの……どこにいるかしら?」

 

「あ……あっち………です…」

 

「そう。ありがとう。寝てていいわよ」

 

そう囁いて手を離すと、警備の人間はその場に崩れ落ちて眠りについた。

 

「……決めた…」

 

彼女は被っていたフードを外し、とあるモンスターの檻の前に立つ。

 

「あなたに決めたわ」

 

鎖を外し、そのモンスターを自由にする。

 

「さぁ……私を見つけてちょうだい?」

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

「よーし! そろそろ見に行こうか!」

 

「やっとか…もう終わってんじゃないのか?」

 

「多分……大丈夫……」

 

「僕は神様とリムルさんと食べ歩きできただけでも、すっごい楽しいですよ!」

 

「いや、俺も楽しいけどさ。祭りならメインのものは見ておきたいだろ?」

 

「それは…はい……」

 

「うぅ……」

 

「まぁでも、別に責めてるわけじゃないぞ? だから、早く行こーぜ!」

 

「うん!」

 

「そうですね!」

 

俺たちは喋りながら、闘技場へ向かって歩き出した。

 

だが、近づけば近づくほど、胸の奥の違和感が強くなる。

 

「なんか、向こうから逃げてきてる人がいないか?」

 

俺が2人に声をかけようとした時――

 

  モンスターが逃げ出したぞ!!!!  

 

誰かの叫び声が、周囲に響き渡った。

 

「リムルくん! ベルくん! 今のは…!」

 

「どうやら本当にモンスターが逃げ出したらしいな……結構数がいるぞ……」

 

「ど、どうしましょう……このままじゃこの街が……!」

 

「倒すしかないわな」

 

「僕でも出来ますか…?」

 

「すごい強いモンスターはいないから、ベルでも十分だと思うぞ」

 

「分かりました…!」

 

「じゃあ行くか」

 

「神様はここに居てください!」

 

「え、でも!!」

 

「ヘスティアを1人にするのは心配だな……」

 

「じゃあどうすれば……」

 

うーん、ここで悪魔召喚をする訳にもいかないし……何かいい手は……

 

《告、一体のモンスターがまっすぐこちらに向かってきます》

 

え? 俺たちのところに?

 

《はい》

 

こんなに人いるのにか!?

 

《はい》

 

マジか……さっさと片付けるか。

シエル、そのモンスターってベルでも勝てそうか?

 

《十分に勝機はあります》

 

なら、いいか。

 

《それとは別に強い反応があります》

 

え? それもこっち来てるのか?

 

《いえ、あそこに向かっています》

 

そっちも気になるな……

 

《少なからずそっちの方にはロキファミリアが居ますので、すぐにどうこうは大丈夫だと思います》

 

なるほど……よし、雑魚処理しながらそっちへ向かうか。

 

「ベル!」

 

「はい!」

 

「モンスターの一体が、何故か知らんけど真っ直ぐこっちに来てるらしい」

 

「えぇ!?」

 

「そいつをベルに任せたいんだが……行けるか?」

 

「……やります!!」

 

「よく言った! じゃあそいつはお前に任せる! 頼むぞ! 俺は別の強い反応がある方に行く」

 

「分かりました!」

 

離れる時、俺はヘスティアにこっそり回復薬を手渡した。

 

《ヘスティア、ベルに何かあったらそれを使ってくれ》

 

《! …わかった》

 

「じゃあ頑張れよ、ベル!」

 

「はい!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ここで戦ったら、たくさんの人が居るし危ない……場所を変えなきゃ」

 

どうする……。

 

「神様は物陰に隠れててください!!」

 

「わ、わかった!」

 

とりあえず、人の少ないところに誘導するしかない……!

 

少し進むと、前方に白い大きなモンスターの姿が見えた。

 

  シ、シルバーバックだぁ!!!!  

 

「シルバーバック!? そんな……僕に勝てるのか……?」

 

ベルは慌てて構えを取る。

 

シルバーバックが近づいてくる。

 

「来い!!」

 

だが、シルバーバックはベルの方には来ず、ヘスティアの方へと向かった。

 

「っ、神様!!」

 

ベルは慌ててヘスティアを抱きかかえ、走り出す。

 

「べ、ベルくん!」

 

「どうして奴は神様を狙ってるんですか!?」

 

「わ、分からないよ!!」

 

「くっそ!」

 

ベルは無我夢中で走り回った。

 

「ベルくん!! そこの曲がり角を右に曲がって、ダイダロス通りに逃げ込むんだ!」

 

「えっ……でもそこは……」

 

「大丈夫! ボクを信じろ!」

 

「はい!!」

 

ベルはヘスティアの指示通りに動き、ダイダロス通りへと入り込んだ。

 

「ここなら道が入り組んでいるから、すぐには見つからない」

 

「でも、時間の問題じゃ……」

 

「ベルくん、大丈夫だよ?」

 

「神様……」

 

「リムルくんも言ってたじゃないか。君になら任せられるって。それは今のベルくんでも勝てるってことだろ? 弱気になってどーするんだい!」

 

「!」

 

「冒険者だろ? 英雄になるんだろ? あれくらいの困難、乗り越えてみせよーぜ!」

 

「はい!!」

 

「あいつが来る前に、ぱぱっとステータス更新だけするよ。いいかい? 少しでも勝率を上げるためだ」

 

「お願いします!」

 

ベルはヘスティアに背を向け、服を捲り上げる。

ヘスティアは手際よくステータス更新を行った。

 

「……これなら……ベルくん! 終わったよ! 君なら絶対勝てる!」

 

「はい!」

 

シルバーバックは塀をよじ登り、2人が隠れている物陰の近くへ迫ってきた。

 

「ボクとリムルくんを信じて、自分を信じろ!」

 

「はい!!」

 

「いってこい!!!」

 

「はい!!!」

 

ベルはヘスティアの激励を受け、飛び出した。

 

いきなり物陰から出てきたベルに、一瞬反応が遅れるシルバーバック。

だがすぐに、ベルに向かって拳を振り下ろす。

 

ベルは冷静にそれを見切り、紙一重で避けた。

 

シルバーバックの拳は地面を抉り、石片が飛び散る。

 

「攻撃をまともに受けたら……」

 

ゴクリと喉が鳴る。

 

シルバーバックはベルに向かって吠えた。

その迫力に、ベルの体が一瞬すくんでしまう。

 

当然、それを見逃すような弱いモンスターではない。

再びベルに殴りかかる。

 

ベルは反応が遅れ、避けきれずにナイフで拳を受け止める形になったが、そのまま吹き飛ばされた。

 

「くそっ……」

 

なんとか受け身は取ったものの、その攻撃のせいでベルのナイフはもう使い物にならなくなっていた。

 

「しまった……何か武器は……」

 

武器を失ったベルは、避けることに専念しつつ、代わりになるものを探す。

 

  「ベルくん!!!」  

 

「神様!? 出てきちゃダメです!!」

 

「これを使ってくれ!!」

 

ヘスティアから投げられた何かを、ベルはうまくキャッチした。

 

「これは……」

 

「ベル君の新しい武器だよ!! それを使えば勝てる!! 頼んだよベル君!!」

 

ベルは、ヘスティアから受け取った漆黒のナイフを握りしめ、

再びシルバーバックへと向かっていった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

時は少し前。ベルがヘスティアファミリアに入って、しばらく経った頃。

 

「ねー、リムルくん」

 

「どうした?」

 

「ベルくんは今日もダンジョンかい?」

 

「そうだと思うけど……どうして?」

 

「リムルくんはあれだけど、ベルくんは正式にうちのファミリアに入ってくれた最初の子だからね。何か贈り物をしてあげたいと思ってさ」

 

「おぉ、いいんじゃないか?」

 

「何がいいか悩んでるんだよね」

 

「んー、そうだなぁ……」

 

「ベルくんの好きな物とか分かる?」

 

「いや、分からん」

 

「むー」

 

「まぁでも、贈り物なら普段から使うものとかでいいんじゃないか?」

 

「普段から使うものかぁ」

 

「例えば……武器とか? ベルの使ってる武器、ギルドから支給されたやつっぽいし」

 

「ふむぅ……武器……武器かぁ」

 

「ま、あくまでも案だからな?」

 

「あっ! 武器にしよう!!!」

 

「へ? なんかいいのでもあるの?」

 

「ふふふ……ボクの神脈を活用する時が来たようだよ!」

 

「ん?」

 

「ヘファイストスだよ!!」

 

「ヘファイストスって……え、神ヘファイストス!?」

 

「そうだよ! 作ってくれないか、頼んでみる!」

 

「いや、いくらすると思ってるんだよ……まぁ、ダンジョン潜ればそれくらいのお金は確保出来るとは思うけど」

 

「いや、これはボクが払うから大丈夫だよ。ちょっと行ってくる!!」

 

そう言って、ヘスティアはヘファイストスのところへ向かった。

最初はすごく渋っていたヘファイストスだったが、何とか頼み込んで作ってもらえることになった。

……金額はとんでもなかったけど。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

ヘスティアから受け取ったナイフを握りしめながら、ベルは驚いていた。

 

「僕の手に、勝手に馴染む……」

 

斬れ味も、今までの武器とは比べ物にならない。

 

さっきまで押されていたのが嘘のように、シルバーバックの攻撃を捌けるようになる。

しかし、それでも決め手に欠けていた。

 

《ベル、あなたの長所は足の速さです。その長所を封じてどうするのですか?》

 

頭の中に、ふっと声が響いた。

 

「えっ……」

 

《落ち着いて。いいですか? あなたの長所を潰してはダメです。足を止めてはなりません。そうすれば、こんな敵ベルの敵ではありません》

 

その声を聞いたベルは、リムルとの特訓で言われてきたことを思い出した。

 

「そうだった……行くぞっ!!」

 

ベルは先程とは比べものにならない速さを発揮し、

シルバーバックの周りを駆け回り、翻弄しながら切り刻んでいく。

 

そして、最後に懐へ飛び込み、そのまま胸を一突き。

 

シルバーバックは大きく仰け反り、そのまま崩れ落ちて灰となって消えた。

 

「やったぁぁぁぁあ!!! やったね、ベル君!! よくやったよ!!」

 

「神様……! この武器のおかげです」

 

「本当によくやったよ、ベル君!」

 

「でもこの武器、どうしたんですか?」

 

「ふっふっふー、ボクから君へのプレゼントだよ!」

 

「えぇ!? い、いいんですか!?」

 

「もちろん!」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

ベルとヘスティアは抱き合って喜んだ。

 

「リムルさんの方は大丈夫かな?」

 

 

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