今度は異世界転生じゃなくて異世界転移かよ ※リメイク版   作:にゃすぱ@梨

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青い影と黒き刃

 

さて、ベルには成長して欲しいから任せたけど……大丈夫だよな?

 

《問題ありません。ベル自身の力をしっかりと発揮出来れば、問題なく勝てます》

 

なるほど。

逆に言えば「発揮できなかったらきつい」ってことか。

 

《はい》

 

もしベルが危なくなったら、シエル。助言してやれよ。

 

《かしこまりました》

 

よし。

じゃあ俺は俺で、やりますかね。

 

流石にこの人混みの中で飛ぶのはまずいので、周りの流れに逆らいながら走っていく。

道中で遭遇する雑魚モンスターは、全部ワンパンで倒して進む。

 

 

 

しばらく走っていると、目の前でモンスターに襲われている少女がいた。

周りの人間は誰も助けようとしていない。

 

「やれやれ、この街は薄情な人ばかりか?」

 

《いえ。「冒険者でない者がモンスターに立ち向かう」のは、ほぼ無駄死にです。そのため、『助けに行かない』ではなく『行けない』が正解かと》

 

なるほど。

やっぱりめんどくさいんだなこの世界は……恩恵がないと、何も出来ないのか。

 

俺はそのまま、モンスターと少女の間に割り込み、一刀でモンスターを屠った。

 

「大丈夫かい? お嬢ちゃん」

 

「うぁ……うぅ……」

 

こりゃダメだ。今にも泣きそうだな……

あ、そうか。しゃがんで、ちゃんと目線を合わせて。

 

「えーっと、お父さんとかお母さんは、どこにいるのかな?」

 

「……わからない……はぐれちゃった……」

 

「まじか〜……よし、一緒に探してあげるよ」

 

「……ほんと?」

 

「おう! 任せとけ!」

 

「……ありがとう、お姉ちゃん!!」

 

少女は、ぱっと笑顔を見せてくれた。

 

「よし、じゃあおんぶするから、背中に乗って?」

 

「うん」

 

「それじゃ、しっかり捕まってね」

 

俺は少女をおんぶしたまま、再び走り出した。

 

 

 

んー、闇雲に探すのもなぁ……。

これだけ人がいたら、見つけるのは一苦労だぞ。

 

シエル、この子の親探せないか?

……って、そんな都合のいいものないよなぁ。

 

《問題ありません》

 

え?

 

《今走っている方向とは真逆の方向に、1.3km離れた場所にいます》

 

いや、有能すぎませんか……?

 

とりあえず、言われた通りの方向へ向かうことにした。

 

 

 

――本当にいたよ……。

 

「ママ!」

 

「どこに居たの!?」

 

「えっと、このお姉ちゃんが助けてくれたの」

 

「あはは……どうも」

 

「娘を助けていただき、本当にありがとうございます!」

 

「いえいえ。一応ここら辺は、さっき俺がモンスター倒して回ったから安全だとは思うけど……。とりあえず早く逃げてくださいね。今度は娘さんを離さないように」

 

「はい! 本当にありがとうございました!」

 

「お姉ちゃん、ばいばーい!」

 

「おーう!」

 

ひと仕事終えて、ひとつ息を吐く。

 

さてさて、ちょっと遅れたけど……大丈夫だよな?

 

俺は再び、ロキファミリアのいる方角へ向かい始めた。

 

 

 

――――

 

 

 

「ちょっと! 何なのこいつ!!」

 

「こんのぉ!!」

 

ティオネが、思いきり拳を叩き込む。

 

「いったぁ!? 何こいつ硬すぎ!!!」

 

「武器持ってくればよかったわね……」

 

手詰まりになった二人は、攻めきれないでいた。

 

「二人とも、大丈夫?」

 

「おぉ、なんか偉いことになっとるやん!」

 

「アイズにロキ」

 

ティオナが振り向き、アイズはじっと前方の敵を見据えている。

 

「こいつめちゃくちゃ硬くてさー! 素手だとちょーきついんだけど!」

 

「任せて。ここからは、私も戦う」

 

「心強いわ」

 

「よーし、もっかい行くよー! ロキは安全な所にいて!」

 

「りょーかい!」

 

今度は三人で、再び敵へと向かっていく。

 

アイズは剣を構え、懐へと飛び込むが……やはり硬いのか、なかなか刃が通らない。

 

 

 

「ティオネ、ティオナ。魔法使うから、離れて」

 

「了解」

 

「わかった!」

 

二人は一旦距離を取り、アイズは詠唱を始める。

 

「目覚めよテンペスト」

 

風を纏ったアイズの攻撃は、さらに速く、強力なものへと変わっていく。

だがそれと同時に、敵の触手の動きも明らかに早く鋭くなった。

 

アイズは攻撃を避け続けるが、攻撃スピードと手数が増えたせいで、徐々に捌ききれなくなっていく。

 

「アイズ! 一旦下がって!」

 

「うん」

 

アイズはティオネの声に従い、後ろへ下がる。

だがそれに合わせて、触手もアイズの退避方向へと攻撃を仕掛けてきた。

 

「くっ……!」

 

「どうしてアイズばかり狙われてるの……?」

 

ティオネは考え込み、ある仮説に行きつく。

 

「まさか、魔法に反応してる……? ――はっ、アイズ! 魔法解いて!!」

 

アイズはその声に即座に反応し、魔法を解除した。

 

それによって触手の攻撃は、若干だが弱まったように見える。

しかし、魔法を解いたことで速度が落ちたアイズは、今度は生身では攻撃を捌ききれない。

 

 

 

「伏せて!!」

 

咄嗟にアイズは身を低く伏せる。

そこにティオナが飛び込み、迫っていた触手に思いきり蹴りを入れ、アイズへの攻撃を逸らした。

 

「やっぱり痛い!!!!」

 

「ありがとう、ティオナ」

 

「任せてよ! でも、本当にこいつどうしよっか……」

 

そこにティオネも合流する。

 

「二人とも、多分アイツ、魔法に反応してる」

 

「えぇ!」

 

「……」

 

「レフィーヤに火の魔法でこいつを焼いてもらおうと思ったんだけど……そうなると、レフィーヤが的になる」

 

「……じゃあ、もう一回私が魔法を使って囮になるから、その間に三人でレフィーヤを守れば、多分いけると思う」

 

「それしかないか……」

 

「レフィーヤ!」

 

三人はレフィーヤに作戦を説明し、了承を得てから動き出した。

 

「これで終わらせるわよ!」

 

「うん!」

 

「目覚めよテンペスト」

 

アイズは再び風を纏い、速攻で懐へ飛び込んで攻撃を叩き込む。

ティオネ、ティオナもそれに続き、触手を叩き落としていく。

 

三人の動きを確認したレフィーヤは、後方で詠唱を開始した。

 

その瞬間、アイズを狙っていた触手のうち数本が、レフィーヤの方へと向きを変える。

 

「やらせるかー!!」

 

ティオナが触手に蹴りを叩き込み、進路を逸らす。

 

「くっそ! しつこすぎ!!!」

 

有効打をなかなか入れられないまま、敵の攻撃はさらに激しさを増していくが、まだギリギリ捌ききれていた。

 

ふと、ティオネがある違和感に気づく。

 

「……これ、触手の数少し減ってない? どうして……?」

 

それに気づくのと同時に、足元の地面から不穏な音が響いた。

 

「まさか……! レフィーヤ! 今すぐ詠唱をやめて!!」

 

「えっ?」

 

レフィーヤは慌てて詠唱を中断する。

 

「下よ!!」

 

ティオネの叫びに、レフィーヤは反射的に横へ飛び退いた。

ギリギリのところで、足元の地面を突き破る触手を避けることには成功したが――

 

「っ……!」

 

背後から伸びたもう一本までは避け切れず、そのまま腹部を貫かれてしまった。

 

「かはっ」

 

「「「レフィーヤ!!!」」」

 

レフィーヤはその場にどさりと倒れこむ。

腹部には大きな風穴が空き、血が大量に溢れ出していた。

 

 

 

――――

 

 

 

《主様、一人の生命反応がどんどん薄くなっています》

 

まじか……!?

 

《はい》

 

くっそ、しょうがない。

近くまで転移するか。

 

 

 

俺は近くの物陰に転移した。

そこには、壁にもたれかかるロキの姿があった。

 

「レフィーヤが……」

 

「神ロキ?」

 

「ぬわぁ!? リムルか、どっから出てきたん!?」

 

「いや、転移してきたんだけど。そんなことより、大怪我を負ってる奴いないか?」

 

「あそこや……」

 

ロキは力なく指をさす。

 

俺はすぐさまそこへ移動し、倒れているレフィーヤを抱え上げて、ロキのいるところまで連れ戻した。

そして、自分の完全回復薬を、そのまま腹部へとかける。

 

レフィーヤの腹部に空いていた風穴は、みるみるうちに塞がっていった。

 

「よし、これでもう大丈夫だ」

 

「あ……あぁ……ホンマに……ありがとう」

 

「これくらい大丈夫だよ。それより、三人でもかなり苦戦してる様だけど?」

 

「せや。どうやら魔法に反応してるらしくてな。おまけに、めっちゃ外側が硬いんやと」

 

「なるほど……わかった」

 

俺は刀を抜き、アイズたちが戦っている前線へと移動した。

 

 

 

「アイズ!」

 

「っ、リムル……どうして……」

 

「苦戦してそうだけど、大丈夫か?」

 

「正直きつい……」

 

「ま、だろうな」

 

俺はアイズの横に並び、敵と対峙した。

当然、敵の攻撃が止まるわけではない。

襲いかかる触手を、片っ端から斬り払っていく。

 

「来てくれて助かった」

 

「いや〜、もっと早く来るつもりだったんだけどさ……。ん、あの二人は?」

 

「ティオネとティオナ」

 

「よし。じゃあ、二人を連れてアイズは下がって見てていいよ。あとは俺がやる」

 

「……わかった」

 

アイズはその場を俺に任せ、ティオナとティオネの元へと下がった。

 

 

 

――って、おいおい。こいつ、再生するのかよ。

 

切り落とした触手が、ぬるりと再生していくのを見て、内心でため息をつく。

 

それじゃあ、こうしようかな。

 

次の攻撃で飛んできた触手を、同じように切断。

だが今回は、切り口に黒い炎が灯った。

 

「やっぱり、これなら再生しないな……」

 

黒炎は切り口で静かに燃え続け、触手の再生を妨害していた。

 

「それじゃ、太い本体以外は全部切っちゃうか」

 

俺はひたすらに触手を狙い、黒炎を纏わせながら切り落としていく。

そして、すべての触手が動かなくなった頃には、本体だけがぽつんと残された状態になっていた。

 

「なんか……他のやつが無くなると寂しいな?」

 

見た目が妙にシュールになった敵を見て、肩をすくめる。

 

「……まぁ、終わらせますか」

 

俺はそのまま地面を蹴り、一気に距離を詰めて一刀両断した。

 

触手型のモンスターは、ゆっくりと倒れ込むと、そのまま灰となって消えていく。

 

「こいつ、なんだったんだ? ……まぁいいや」

 

俺は刀を納め、アイズたちの方へ振り向いた。

 

「おーい! 大丈夫だったかー?」

 

「うん、全然問題ないよ」

 

アイズが短く答える。その表情には、安堵と驚きが混じっていた。

 

「そかそか。ならよかったよ。ちょっと来るのが遅れたから、えーっと……名前なんだっけ?」

 

《レフィーヤ・ウィリディスです》

 

「あーそうそう、レフィーヤだ! 怪我しちゃったみたいだし……とりあえず回復薬はかけたから、問題ないと思うよ」

 

「よかった……」

 

ティオナが胸を撫で下ろす。

 

「ちょっとアイズ。誰よその子」

 

「……あれ、ティオネ達は面識なかったっけ?」

 

「お姉さんは、ティオネ・ヒリュテだよね? あっちでレフィーヤの方見てるのが、ティオナ・ヒリュテだよね?」

 

「えっ?」

 

「ほら、あの場に居たから知ってるよ?」

 

もちろん、元から知っていた訳ではなく、シエルが教えてくれたのだが。

 

「あの場……あ、まさかベートやったの、あんたやったの?」

 

「せーかい!」

 

「はぁ……飛んだ化け物ね。レベル5の私たちが苦戦してた相手を、簡単に倒しちゃうなんて。ベートがやられるのも、少しは納得したわ」

 

「お姉さん達も、アイズと同じくらい強いよね?」

 

「お姉さんって呼び方、やめてちょうだい。ティオネでいいわ」

 

「わかった」

 

「まぁ、同じレベル5だからね」

 

「なるほどね〜」

 

「あんたはレベルいくつなのよ。あのモンスターを簡単に倒して、ベートを瞬殺して……ねぇ?」

 

「えぇ……?」

 

ティオネはじっと、俺を上から下まで眺め回してくる。

 

そこへ、レフィーヤを背負ったティオナと、ロキも合流してきた。

 

「なになに、なんの話してるの?」

 

「彼の――」

 

「あー! ベートやっつけた子だよね!? さっきのモンスターも簡単に倒しちゃってさ! 凄いね!」

 

「いやぁ……あはは……」

 

「でも、ホンマに助かったでリムル」

 

「大事にならなくて良かったよ」

 

「この礼は必ずするわ! 飲みにでも行こーや」

 

「お、それはいいね!」

 

「ちょっと、二人で勝手に話進めないで。ロキはこの子のこと、知ってるのよね」

 

「まぁな」

 

「一体何者なの?」

 

「んー、ヘスティアファミリア所属の冒険者やで」

 

「……はぁ。まぁいいわ、そういうことにしとく」

 

「ねぇ、君。名前なんて言うの?」

 

「へ? リムルだよ。リムル・テンペスト」

 

「リムル……おっけー! 覚えた! あたしは――」

 

「ティオナさんだよね?」

 

「えぇ! なんで知ってるの?」

 

「ティオネさんにも言ったけど、あの場にいたでしょ?」

 

「あ、そっか」

 

「そゆこと」

 

「さん付けしなくていいから、ティオナって呼んでよ」

 

「分かったよ」

 

「よし!」

 

「とりあえず、ここは片付いたから、俺は別の場所見てくるよ」

 

「わかった」

 

「ホンマありがとうな!」

 

「いえいえ。それじゃ、またね」

 

俺は軽く手を振り、その場を後にしてベル達の方へ向かった。

 

「ベルは大丈夫だろうか……」

 

 

 

――――

 

 

 

「神様、この武器のおかげで勝てました! 本当にありがとうございます!」

 

「いいってもんよ!」

 

本当は、ベルくんのステータスの伸びがすごくてびっくりして、

「渡し忘れてた」なんて、とても言えない……。

 

「でも、どうして武器なんて持ってたんですか?」

 

「へぁ!? あぁ、それは、ベルくんにプレゼントするためだよ!」

 

「僕に?」

 

「そうそう。リムルくんは事情があるから、正式にうちのファミリアに入ってくれた最初の子はベルくんなんだ。武器はギルドの支給品を使ってるみたいだったからね」

 

「大切に使わせてもらいます!」

 

「そうしてくれると、ボクも嬉しいかな」

 

「はい! でもこれ、なんか見たことあるロゴが入ってる気がするんですけど……」

 

「あぁ、それはヘファイストスのやつだね。彼女に作ってもらったんだ」

 

「えっ……? 今なんて?」

 

「だから、ボクの友神のヘファイストスに頼んで作ってもらったんだよ」

 

「えぇ!?!?!?」

 

「凄いだろ? ボクも驚いたんだ。正真正銘、そのナイフは世界で一本しかないんだ!」

 

「ぼ、ぼぼ……」

 

「英雄になるんだろ? 応援してるよ」

 

「……わ、わかりました。今まで以上に頑張ります!」

 

ベルは、漆黒のナイフをぎゅっと握りしめ、まっすぐ前を見据えた。

 

その横顔は、さっきまでより少しだけ、大人びて見えたのだった。

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