今度は異世界転生じゃなくて異世界転移かよ ※リメイク版   作:にゃすぱ@梨

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戦姫の高鳴り

 

俺達はダンジョンから出て帰路についた。

 

ダンジョンに入った時は真っ暗だった空も今は朝日が上り始めている。

 

夜の騒がしい雰囲気は一変し、しんと静まり返っていて夜の賑わっていた場所とは思えないくらい。

 

聞こえるのは俺達の足音と鳥の鳴き声くらいだ。

 

とりあえずランガがこっちに住み着くのはいいとして元の姿に戻るのは基本禁止として……せっかくだからベルの護衛を任せてみるか。

 

ランガなら安心して任せられるし、それにベルが無理して死にそになってもランガが助けれるだろうしな。

 

よし、それで行こう。

 

後はヘスティア達にはなんと説明したものか…

 

これについては簡単に答えが出た。

 

ヘスティア達には俺のことは正直に話してるからこのことも正直に話せばいいのだ。

 

ただ、ランガの強さって覚醒魔王並かそれ以上だし…まぁまた驚かれるだろうな…

 

そんなことを考えながらランガと並んで歩いていたら家に着いた。

 

「ここが今俺が住んでいるところだ」

 

「立派な建物ですが主が住むには少し狭い気もしますが…?」

 

「いいんだよ、俺はどっちかって言うと狭い方が落ち着くから」

 

「なるほど!」

 

「よし、入るぞ」

 

俺は扉を開け中に入るがまだ朝が早いこともあり誰も起きてはいない。

 

起こさないように歩き自室へ戻る。

 

そして俺はランガに改めてこの世界のことについて話した。

 

「つまり、主は今ヘスティア殿の眷属になっていると…?」

 

「そういうことだ。ランガ、余計なことはするなよ?ヘスティアは凄くいい神だと思う。ちゃんと敬意をもって接するように」

 

「主がそう仰るなら…かしこまりました」

 

俺たちが話していると別の部屋のドアの開く音がした。

 

たぶんベルが起きてきたんだろう。

 

あれ、もうそんなに時間が経ったのか?

 

俺も部屋を出るためドアを開けるとベルが居た。

 

「おはよう、ベル」

 

「あ、リムルさん!おはようございます!」

 

「朝から元気だな…」

 

「いつも通りですよ?」

 

「それもそうか、それよりまだアイズが来るには少し早いと思うからベルには先に話しておこうかな。後でヘスティアにも話すけど」

 

「なにをですか?」

 

 俺はランガを呼び近くまでこさせた。

 

 「あの、リムルさんそれは…?」

 

 「俺の仲間のランガだ」

 

「ランガ…さん?」

 

 「おう、小僧よろしくな」

 

 「喋れるんですか!?」

 

 とりあえずベルにはランガの事を説明し、今後ベルの護衛として動くことを伝えた。

 

「護衛…ですか?」

 

「あぁ。ベルはすぐ無茶をするだろ?」

 

「うっ……」

 

「否定しないんだな」

 

「そ、それは……」

 

「俺がずっと側にいられるわけじゃないからな。俺が居ない時の保険だと思ってくれ」

 

ベルは少し考えたあと、真剣な表情で頷いた。

 

「分かりました」

 

「ランガは俺の国でもかなり強い部類だ。この街でもそう簡単に負けることはないと思うぞ」

 

「そ、そんなに強いんですか?」

 

「まぁな。だから安心して背中を預けていい」

 

「そういう訳だからよろしく頼むよ」

 

「はい!ランガさんよろしくお願いします!」

 

「おう!」

 

ちょうど話が一段落したところでアイズが到着したのに気がついた。

 

だが、いつもとは違いもうひとつ気配がある。

 

《アイズ・ヴァレンシュタインと一緒にいるのはティオナ・ヒリュテです》

 

あの褐色肌のアマゾネスの子か……。

 

何故?

 

俺は疑問に思いつつも、ベルとランガに先に部屋にいてくれと伝え、二人を迎えに行った。

 

「おはようアイズ。それと……ティオナさん?」

 

「おはようリムル。勝手に連れてきてごめん。でもティオナが行きたいって聞かなくて」

 

「おはよ! リムル君! あたしがアイズに無理言って連れてきてもらったんだ!」

 

「は、はぁ……そうですか」

 

「私もリムル君と戦ってみたくて! この前の触手モンスター倒した時を見て戦ってみたいって思っちゃったんだよ!」

 

「えぇ……まぁいいですけど……とりあえずいつもの場所に行くか」

 

俺はアイズとティオナを連れて部屋に入った。

 

「ねぇねぇ、今から模擬戦やるんだよね? まさか部屋の中でやってるの!?」

 

「そうだよ。ここには俺が張った結界があるから何をしても壊れないし、外にも音は漏れないから」

 

「えぇ! すごっ!!」

 

ティオナは目を輝かせながら辺りを見回していた。

 

俺はアイズとベルにいつも通り模擬戦をするよう指示し、ティオナに問いかける。

 

「ところで、なんでティオナは俺と戦いたいんだ?」

 

「それは強い男の人がいたら戦ってみたいじゃん!」

 

「え?」

 

「それに君に興味が湧いたから!」

 

「えぇ……」

 

今のティオナを見る限り、何を言っても引き下がりそうにない。

 

仕方なく俺が折れることにした。

 

「分かったよ」

 

「ほんと!? やったー!! あの時は武器なかったからあれだけど、今日はちゃんとあたしの相棒のウルガを持ってきたからね!」

 

「そんな武器使うんだな」

 

「じゃあ、まずは様子見から行くよ!」

 

「いつでもいいよ」

 

ティオナは勢いよく地面を蹴った。

 

豪快な一撃。

 

俺はそれを軽く躱し、背後へ回り込む。

 

だがティオナは低い姿勢からそのまま足払いを放った。

 

「おっと」

 

俺は一歩下がる。

 

そこへティオナは追撃を仕掛け、ウルガを横薙ぎに振るった。

 

キィィン!!

 

刀と大剣がぶつかる。

 

俺はあえて真正面から受け止めたが――

 

「おぉ?」

 

予想以上の膂力に、数メートルほど後方へ跳ばされた。

 

空中でくるりと体勢を整え、難なく着地する。

 

「結構重いな」

 

「えへへ! パワーには自信あるんだ!」

 

(アイズよりパワー型か。なるほどな)

 

ティオナは再び急接近する。

 

今度は斬りかかってくるかと思ったが、ティオナはウルガを俺に向かって投げつけた。

 

予想外の攻撃に俺が避けると、その隙にティオナは懐へ潜り込み、顔面目掛けて拳を放つ。

 

「凄いよリムル君。全然勝てる気がしない。それにリムル君、あたしのこと軽くあしらってるでしょ?」

 

「まぁな。でもアイズよりパワーはあると思うぞ?」

 

「うぅ……嬉しいけど嬉しくない!」

 

俺はティオナの拳を受け止める。

 

「どうして本気で戦ってくれないの?」

 

「んー、そうしたらティオナは何も出来ずに終わると思うぞ」

 

「あたしを?」

 

「だから魔法も使ってないし、スキルも使ってない」

 

「どうしたら出してくれる?」

 

「……はぁ。本気は出さないけど、少しだけなら見せてあげてもいい。ただし、これに耐えられたらだけど」

 

俺はティオナと俺を囲うように新たな結界を展開した。

 

「これは?」

 

「ベルにはまだ耐えられないと思うからな」

 

「なるほど!」

 

「じゃあ始めるぞ。無理はするなよ?」

 

「分かった!」

 

俺は静かに目を閉じ、再び見開く。

 

その瞬間。

 

ティオナの全身から冷や汗が噴き出した。

 

「なに……これ……」

 

立っているだけで精一杯。

 

息すらまともに出来ない。

 

本能が警鐘を鳴らしていた。

 

逃げろ、と。

 

「ティオナ。無理するな。簡単に言えば単なる威圧だよ」

 

もちろん、かなり手加減している。

 

「ただの……威圧……?」

 

「もう一度言うぞ。無理するな」

 

しばらく沈黙が流れる。

 

だが次の瞬間。

 

「終わりじゃ……ない!!」

 

ティオナが雄叫びを上げた。

 

極限状態に追い込まれたことで、ティオナの神威が爆発的に活性化する。

 

「お?」

 

俺は僅かに目を見開く。

 

ティオナは全身全霊を込め、拳を振り抜いた。

 

だが――

 

「……びっくりした。まだそんな力が残ってたのか」

 

渾身の一撃は、片手で受け止められていた。

 

「はぁ……はぁ……!?」

 

「少しティオナのことを見誤ってたみたいだな」

 

そう言って、俺は鞘でティオナの腹部を軽く打つ。

 

ドンッ!

 

「かはっ……!」

 

ティオナは吹き飛び、そのまま意識を失った。

 

俺はティオナを抱き上げ、ソファへ寝かせた。

 

――――

 

「アイズさん?」

 

「……あんなティオナ、初めて見た」

 

「ティオナさん……ですか?」

 

「うん。すごく楽しそうだった」

 

私はリムルと戦った時、怖かった。

 

全力を出しても届かなかった。

 

どれだけ足掻いても、手が届く未来が見えなかった。

 

でもティオナは違った。

 

負けると分かっていても、最後まで楽しそうだった。

 

どうしてだろう。

 

その違いが、私には分からない。

 

「……私も、もっと知りたい」

 

強さのことを。

 

そして――リムルという存在のことを。

 

――――

 

「じゃあ今日はここまでにしよっか。アイズ、ティオナを連れて帰れるか?」

 

「……うん、大丈夫」

 

アイズは気絶したティオナを背負う。

 

そしてホームを出る直前、振り返った。

 

「リムル」

 

「ん?」

 

「……ティオナを止めてくれてありがとう」

 

「気にするなよ」

 

「それと……」

 

アイズは少しだけ言葉に迷う。

 

「今度は、私とももう一度戦って」

 

「もちろん。いつでも相手になるよ」

 

「……うん」

 

アイズはほんの少し口元を緩めた。

 

「また明日」

 

そう言い残し、アイズはティオナを背負ったままホームを後にした。

 

ーーーーーーーーーーー

 

その日の夜。

 

ティオナは自室のベッドに寝転がっていた。

 

いつもなら訓練で疲れた日は、布団に入ればすぐに眠れる。

 

だが、今日は違った。

 

「うーん……」

 

何度寝返りを打っても、全く眠れる気がしない。

 

目を閉じる度に思い浮かぶのは、今日戦った銀髪の少年。

 

「リムル・テンペスト……」

 

無意識のうちに、その名前を口にしていた。

 

自分でも驚く。

 

どうしてこんなにも、あの少年のことばかり考えてしまうのだろう。

 

「変なの……」

 

ティオナは枕を抱きしめる。

 

リムルは強かった。

 

圧倒的だった。

 

今まで出会った誰よりも。

 

本気を出していないのに、自分は手も足も出なかった。

 

それなのに――

 

悔しいという気持ちよりも、胸の中を満たしているのは別の感情だった。

 

「また戦いたいな……」

 

自然とそんな言葉が零れる。

 

もっと戦いたい。

 

もっと話したい。

 

もっと知りたい。

 

もっと、一緒にいたい。

 

「……あれ?」

 

そこまで考えて、ティオナは首を傾げた。

 

なんだろう、この気持ち。

 

胸の辺りが少しだけ温かい。

 

思い出すだけで、なんだか嬉しくなる。

 

「もしかして……」

 

ふと、以前ティオネが話していたことを思い出す。

 

『好きな男が出来れば、あんたにも分かるわよ』

 

「えっ?」

 

ティオナの顔がみるみる赤くなる。

 

「いやいやいや!!」

 

勢いよく起き上がり、ぶんぶんと首を振る。

 

「違うって! だって会ったばっかりだし!」

 

そう言いながらも、頭の中にはリムルの姿が浮かんでくる。

 

自分の全力を受け止めた時の顔。

 

強いと認めてくれた時の言葉。

 

最後に見せた優しい笑顔。

 

「うぅぅ……」

 

ティオナは顔を真っ赤にしながら、再びベッドへ倒れ込んだ。

 

「明日も行こうかな……」

 

ぽつりと呟く。

 

そして、その言葉を最後に、ティオナはようやくゆっくりと眠りについた。

 

ーーーーーーーーーーー

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