今度は異世界転生じゃなくて異世界転移かよ ※リメイク版   作:にゃすぱ@梨

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揺れる乙女心と小さな出会い

初めは、ただの好奇心だった。

 

お店で彼を初めて見た時、とても可愛い子だなと思った。

 

でも、その直後に見たのは、ベートを一瞬で倒す姿。

 

さらにその後、レベル5の私たち三人でも苦戦していたモンスターを、彼はまるで当たり前のように倒してしまった。

 

私は、彼に強く興味を持った。

 

あんなに線が細いのに、どこにそんな力があるのか。

 

冒険者を見た目で判断するのは命取りだと、よく言われる。

 

本当に、その通りだと思った。

 

アイズが彼と朝の特訓を始めたと知った時、私も行きたいと思った。

 

だからアイズに頼み込んで、一緒に連れて行ってもらった。

 

いきなり現れた私を見ても、彼はまるで来ることを知っていたかのように、少し驚いただけだった。

 

そして私は、彼と模擬戦をすることになった。

 

最初は悔しかった。

 

どんな攻撃をしても簡単に受け流され、受け止められてしまうから。

 

でも途中、彼がほんの少しだけ本気を見せてくれた。

 

その瞬間だった。

 

全身を押し潰されるような重圧。

 

息も出来ないほどの恐怖。

 

生き物として格が違うのだと、本能が理解してしまった。

 

普通なら、怖くて逃げ出していたと思う。

 

なのに――

 

私はその恐怖を、どこか心地よいと感じてしまった。

 

どうしてなのか分からない。

 

ただ、もっと彼を知りたいと思った。

 

もっと強くなりたいと思った。

 

もっと、彼と戦いたいと思った。

 

気が付けば、私は全身の力を振り絞り、魔力を拳に込めて彼へと叩きつけていた。

 

けれど、その一撃すら、彼は片手で受け止めた。

 

そして次の瞬間、私は彼の鞘によって吹き飛ばされ、意識を失った。

 

――それなのに。

 

私はあの時のことを、何度も思い出してしまう。

 

彼の圧倒的な強さを。

 

あの重圧を。

 

そして、楽しそうに笑っていた彼の顔を。

 

……また、戦いたい。

 

そう思ってしまう自分がいた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「ティオナ、今日も行かないの?」

 

「…うん」

 

ティオナを初めてリムルのところに連れていったあの日から朝の特訓にティオナを誘っても断られ続けている。

 

なんとなくだけど、返事の声も少し弱々しい気もする。

 

体調でも悪いのかな?

 

でも、私が特訓を終えて帰るとティオナは居なくなっていてほかの団員に聞くとどうやらダンジョンに潜っているらしい。

 

そして帰ってくるのは夜遅く。

 

無謀とも思えるダンジョンアタックをティオナはあの日から毎日行っているらしい。

 

どうして急にそんなに潜るようになったのか凄く気になった私は自分もダンジョンに潜り敵を倒しながらティオナを探していた。

 

私はすれ違わないようにゆっくり進み中層に降りた。

 

中層も問題なく敵を倒し進む。

 

そして18階層に着き、一旦休憩することにした。

 

18階層、それはダンジョン内でいくつか存在するモンスターが湧かないセーフティーエリアである。

 

湧かないとはいっても全く湧かない訳ではなくほかの層に比べて湧きにくいだけなのでたまにモンスターの襲撃があったりする。

 

ただ、ほかの階層と比べ安全なのは間違いない。

 

それにここは地下の楽園、アンダーリゾートと呼ばれる位綺麗な湖や景色、果物など採れたりする場所だ。

 

私はせっかくなので軽く汗を流そうと水浴びをするため水辺までやってきた。

 

物陰に移動し服を脱いでいる途中水辺の方から音がした。

 

私は恐る恐る音のした方を覗く。

 

そこには褐色肌の黒髪ショートカットの女の子が居た。

 

彼女は腰辺りまで水に浸かり片手で水を掬い伸ばした片方の腕にかける。

 

ティオナだ。

 

普段のティオナからは想像も出来ないような綺麗なものだった。

 

私はぼーっと眺めているとその視線に気がついたのかティオナはこちらを見た。

 

 「あ、アイズー!」

 

ティオナに呼ばれ私はティオナの元へ向かった。

 

私がティオナの元へ行くと向こうから喋りかけてきた。

 

「アイズがこんな所に来るなんて珍しいね?どうしたの?」

 

私がここに来た経緯をティオナに説明した。

 

ティオナはふーんと言ってそれからは普通に雑談をした。

 

雑談中はいつものティオナだった。

 

ティオナが何となく話を逸らしている感じがするので私は質問をぶつけた。

 

「ティオナは、どうして最近そんなにダンジョンに潜るの? 何かあったの?」

 

そう尋ねると、ティオナはぴたりと動きを止めた。

 

「そんなに気になる?」

 

普段とは違う声音だった。

 

ティオナはすっと目を細め、頬をほんのり赤く染める。

 

私はその変化に少し戸惑う。

 

「……うん」

 

「ふふっ……あたしね?」

 

ティオナはゆっくり私へ近づいてくる。

 

そして耳元へそっと顔を寄せた。

 

「欲しいものが、出来たんだ」

 

囁くようにそう告げる。

 

そのまま離れたティオナは、にこりと笑った。

 

いつもの笑顔のはずなのに、どこか違った。

 

まるで酒場で男の人を誘惑する女性みたいで、私は少しだけ戸惑った。

 

「欲しいもの……?」

 

「うん。だから今、頑張ってるの」

 

「そう……」

 

結局、何が欲しいのかは教えてもらえなかった。

 

だけど。

 

その時のティオナは、今まで見たことがないくらい綺麗だった。

 

ーーーーーーーーーー

 

最近妹の様子がおかしい。

 

ティオネは昼ごはんを食べながら1人でティオナの事について考える。

 

現在の時刻はお昼。

 

ロキファミリアの食堂は人でごったがえしている。

 

ダンジョンに潜っているもの達を除いてもこれだけの数いるのは流石最大規模のファミリア。

 

「1人で食べるのは寂しいものね…」

 

彼女は今1人で食事をしているが決して友達がいない訳では無い。彼女の仲のいい人らが軒並みダンジョンに潜っているのである。

 

「私もダンジョンに潜ろうかしら…」

 

彼女の妹の名はティオナ・ヒュリテ。

 

姉とは対照的で元気で明るく活発な子である。胸の部分も含めて。

 

そんな彼女の妹の様子がおかしいのである。

 

ダンジョンに潜るペースは今までの倍以上。

 

アイズに並ぶかそれ以上だと言われている。

 

その異常なほどダンジョンに潜るティオナのことを疑問に思った団員達はティオナに質問したらしい。

 

そんなにダンジョンに潜って何か欲しいドロップ品でもあるのか?それとも、お金を貯めて欲しいものでも買うのか?

 

その質問に対しティオナは笑顔でただ一言

 

「欲しいものが出来たんだ」

 

そう言った彼女は普段の彼女を知るものたちからすれば酷く大人びていて色気すら感じられたという。

 

彼女が変わった原因。

 

「あれしか無いわよね……」

 

あれとは、先日のモンスターフィリアでの出来事だ。

 

あの一件以来、ティオナは激変した。

 

ダンジョンに潜る頻度は今までの倍以上。

 

最近ではアイズに匹敵するほどだとまで言われている。

 

団員達も当然不思議に思い、ティオナに聞いたらしい。

 

『そんなに潜ってどうするの?』

 

『欲しいドロップ品でもあるの?』

 

『お金を貯めて何か買うの?』

 

その質問に対してティオナは、笑顔でたった一言だけ答えたという。

 

『欲しいものが出来たんだ』

 

その時のティオナは、普段の無邪気な妹とは思えないほど大人びていて、妙に色っぽかったらしい。

 

しかも最近は、夜遅くまで起きていることも増えた。

 

部屋からは落ち着きのない物音が聞こえてくることもある。

 

初めてそれを知った時は、本当に自分の妹なのかとショックを受けた。

 

……まぁ、人のことは言えないのだけれど。

 

「まさか、あの子が男を欲しがるなんてねぇ……」

 

ティオナの言う『欲しいもの』。

 

それは間違いなく、あの少年。

 

リムル・テンペスト。

 

私はそう確信していた。

 

ーーーーーーーーーー

 

「ティオナさん、あれから全然来ないですね」

 

「だなぁ……」

 

俺とベルはソファに座って話していた。

 

「あれから全然顔を出さないし、流石にやりすぎたかな……」

 

俺は少し反省していた。

 

ティオナの頑張りに少しくらい応えたいと思っただけだったのだが、流石に刺激が強すぎたのかもしれない。

 

うーむ、と唸ってみても答えは出ない。

 

だが、アイズはあの後も毎日のように来てくれている。

 

アイズに聞いてみても「分からない」と言うだけだった。

 

今度、お菓子でも持って謝りに行こうかな。

 

そんなことを考えていると、

 

「それじゃリムルさん、僕はまたダンジョンに行ってきますね」

 

「分かった。気をつけてな〜」

 

「はい!」

 

ベルはそのままホームを出ていった。

 

「ランガ、いるか?」

 

すると俺の影の中からランガが飛び出してきた。

 

「ランガ、ベルの護衛を頼んでいいか?」

 

「お任せ下さい!」

 

俺がランガの頭を撫でてやると、ランガはものすごい勢いで尻尾を振り始めた。

 

「ちょ、ランガ! 家具が吹っ飛ぶ! 落ち着け落ち着け!」

 

「はっ! も、申し訳ございません……」

 

「大丈夫大丈夫……」

 

ランガはくぅーん、と尻尾を垂らして下を向いた。

 

ふむ、気のせいかもしれないが、最近のランガがただの犬に見えるのは気のせいだろうか。

 

「ほらほら、そんな落ち込むなって。次から気をつけてくれればいいからさ」

 

そう言って再び頭を撫でてやる。

 

するとランガは再び尻尾を振り始めたが、今度は先程よりずっと控えめだった。

 

「ランガ。護衛と言っても簡単に助けるなよ? ベルが本当に危険な時だけ助けろ。いいな?」

 

「承知!」

 

「よし、じゃあベルの影の中に入って見守っててくれ!」

 

そう言うと、ランガは影の中へ潜っていった。

 

ーーーーーーーーーー

 

部屋の中には俺だけになった。

 

ヘスティアは相変わらず寝ている。

 

そろそろ起こさないとこのまま永遠と寝るんじゃなかろうか…

 

今の時刻はお昼前。

 

俺はソファから立ち上がりヘスティアを起こしに行った。

 

「おーい、ヘスティア。起きなくていいのかー?」

 

「お、リムル君!おはよう!」

 

「おはよう……ってもうお昼なんだけど…てか起きてたならこっち来いよ…」

 

俺が起こしに行くとヘスティアは既に起きていて何やらよそ行きの格好になっている。

 

「どこか行くのか?」

 

「そうそう、ヘファイストスの所にね」

 

「あ、もしかしてバイト?」

 

「そうだよ、働かないとお金返せないからね!」

 

モンスターフィリアでヘスティアがベルに渡したナイフについて、俺は後から色々聞いていた。

 

まず驚いたのが、その性能だ。

 

なんとあのナイフは、持ち主であるベルと共に成長していく武器らしい。

 

そんなとんでもない武器をどうやって作ったのか聞いてみれば、なんと神ヘファイストス本人が打ったものだという。

 

さすが神様と言うべきか。

 

うちの黒兵衛とどちらが凄いのか、少し気になるところだ。今度、黒兵衛を連れてきて見てもらうのも面白いかもしれない。

 

そして、もう一つ驚いたことがある。

 

それは値段だ。

 

なんと、あのナイフの代金は二億ヴァリス。

 

しかも、その借金はヘスティア自身が働いて返していくつもりだという。

 

正直、俺からすればもっと深層に潜ってモンスターを倒しまくれば何とかなる金額だと思う。

 

だからそう提案したのだが、

 

『これはボクのわがままで作ってもらった武器だからね。君たちに迷惑をかけるつもりはないよ』

 

と断られてしまった。

 

確かに、ヘスティアのわがままで作ってもらった武器なのだから、ヘスティアが責任を持って返済しようとするのは間違っていない。

 

だが、そもそも武器を提案したのは俺だ。

 

だから俺はヘスティアを説得した。

 

『迷惑だなんて思ってないよ。それに正式な団員はベルが最初だけど、俺だってヘスティアファミリアの一員なんだぜ? むしろ、いつも世話になってるヘスティアに感謝してるくらいだ。だから、その恩返しの一つとして、半分くらい負担させてくれよ』

 

そう言うと、ヘスティアは泣きながら頷いてくれた。

 

割と勢いで言った言葉だったが、許可が出たから問題なし。

 

正直、二億ヴァリスをヘスティア一人だけで返すなんて、どれだけ時間がかかるのか想像もつかないしな。

 

ーーーーーーーーーー

 

僕はホームを出て、バベルへ向かっていた。

 

今日は何層まで潜ろうかな。

 

そろそろ中層の入口まで行ってみようかな?

 

でも、ヘスティア様にこのナイフを貰ってから、モンスター一体に掛かる時間もだいぶ短くなって、すぐにバックパックがいっぱいになってしまう。

 

どうすればいいんだろう。

 

もっと大きいバックパックを買う?

 

いや、それだと動きにくくなるよね……。

 

ベルはうーんと考えながら歩いていた。

 

すると――

 

「お兄さん! そこのお兄さん!」

 

突然、声を掛けられた。

 

振り返ると、そこにはフードを深く被った少女が立っていた。

 

「え? 僕ですか?」

 

「はい!」

 

少女は顔を上げ、満面の笑みを浮かべる。

 

「突然ですが、お兄さんはサポーターを探していませんか?」

 

その少女との出会いが、後にベルの冒険を大きく変えることになるとは、この時のベルはまだ知らなかった。

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