今度は異世界転生じゃなくて異世界転移かよ ※リメイク版 作:にゃすぱ@梨
「今日もダンジョンいくぞー!」
「はい!」
「……」
俺が声を出すとベルはいつも通りだが、リリルカさんは元気がなかった。
それに気がついたのかベルはリリルカさんに声をかける。
「リリルカさんどうしたの?元気ないみたいだけど…」
その声にリリルカさんははっとしたようになんでもありませんと言う。
ベルはそれを聞き大人しく引き下がった。
そして俺たちはダンジョンに潜った。
襲ってくる敵を屠りながら先へ進んでいる俺は、リリルカさんを気付かれないように観察していた。
リリルカさんは時々ベルの方を見たり、ダンジョン内を見渡したりなどしていた。
ソウエイからの情報を手に入れる前であれば特に気にしなかったが、今は違う。
多分俺たちを陥れる為の場所を探しているんだろう。
リリルカさんがやらされているのか、自らやっているのかそれは本人しか分からないからなぁ…
まぁ問い詰めればいいだけの話だし。
少し聞いてみようかな。
俺たちは問題なく進み、昨日到達した十五階層へと辿り着いた。
「よーし、今日は18階層まで目指すか!」
ベルは行きましょう!と言っているがリリルカさんは口をパクパクさせていた。
「リリルカさんどうしたの?」
俺が問う。すると
「いや、リムル様たちが強いのは分かりましたが18階層は無謀です!!!」
「どうして?」
「だって、17階層には階層主のゴライアスが居るんですよ!?」
「ゴライアス?ってあのでっかいやつ?」
「そうてす!!」
「あー、あれなら全然問題ないよ?前に一度戦ったことがあるけど、そこまで苦戦しなかったし」
俺の言葉にリリルカさんはフリーズした。
「え?」
「そのゴライアスってやつ」
「…誰が?」
「俺が」
「おひとりで…?」
「あー、うんほぼ1人かな?」
それを聞くとリリルカさんはパタンと倒れてしまった。
あの、ここダンジョンなんですけど……
人は常識の範囲を超えるの脳がショートして倒れてしまうらしい。
そしてその数分後リリルカさんは目を覚ます。
「あれ…ここは……」
「ダンジョンだよ」
それを聞きリリルカさんは慌てて飛び起き、全力で謝ってくる。
普通、ダンジョンで気絶しようものなら確実に死ぬ。
しかもここは上層ではなく中層。
モンスターの湧き方や強さは比にならない。
そんな所で気絶し倒れたのだ。
「大丈夫だよ、気にしないで。それにほら、なんともないでしょ?」
その言葉にリリルカさんは顔を上げ最後に本当に申し訳なさそうに謝ってきた。
確かに俺にとっては全く問題ない敵だけどこの世界の強さを考えると1人でって言うのは、しかもレベル1と伝えてればそうなるか…俺の失態だ。
だからリリルカさんは悪くない。
「本当に大丈夫だから、後ろで見てて?」
「…わかり、ました。でも、危なくなったら全力で逃げますよ!いいですね?」
「はい」
リリルカさんの鬼気迫る言い方に俺ははいとしか言えなかったが、実際危なくなることはないと思う。
でもこの際少しベルにやらせてみてもいいかもしれないなぁと心の中で思っていた。
そして、15階層から降り16階層も問題なく終わり遂に17階層に来た。
そこは今までとは違い1面真っ白の壁で覆われていた。
「これは…凄いですね……」
とベルが言い、リリルカさんはポカーンと口を開けている。
「リリルカさんは来るの初めて?」
「そうですね、話しか聞いたことありませんでした。」
「そっかそっか」
その時壁から嫌な音が響き渡る。
壁に亀裂が入り、その場所から崩れ落ち、中から巨大なモンスターの手が出てくる。
そのモンスターは無理やり亀裂を広げそこから頭が出てくる。
そして壁は耐えきれなくなったのかその一面が崩落しそのモンスターの全身が顕になる。
「で、でかい…」
「これが…ゴライアス……」
2人はモンスターから感じられる迫力に動けなくなっていた。
そしてゴライアスは俺たちに気がつくと「うぉぉおお」と雄叫びを上げた。
「さて、ベル。あいつに挑戦してみるか?」
「えっ……」
「大丈夫、俺がいるから死にはしない。どうする?」
「……やってみます」
その言葉に俺は笑顔でうんと答えるが
「ベル様!?」
リリルカさんは違った。
「ベル様も強いですけどさすがに無理です!!!」
ベルに抗議するが、ベルにはリリルカさんの声は届いていないだろう。
ベルはリリルカさんの方を見向きもせず、ゴライアスの方をずっと見ている。
それを見て俺はリリルカさんを抱き上げ後ろに下がる。
「ちょ!リムル様!」
「大丈夫だよ、見ておいて。それに俺もベルが勝てるとはこれっぽっちも思ってないよ。だから、攻撃を喰らいそうになったら助けに行くから安心して見てて。」
俺の言葉を聞きリリルカさんは視線を俺からベルに写しじっと見ている。
ベルとゴライアスの戦いは、ゴライアスから動いた。
ゴライアスがベルに向かって拳を振りかざす。
ベルは紙一重でそれを躱し、その勢いのまま【ヘスティア・ナイフ】でゴライアスの脚部を斬りつける。
だが、刃は浅く食い込むだけだった。
「か、硬い……!」
ゴライアスがベルに向かって咆哮を放った。
それをもろに受けてしまったベルは動けず無防備な姿をゴライアスにさらけだしてしまい、ゴライアスはそれを逃さないように反対の拳をベルに向けて放つ。
「ベル様!!!!!」
リリルカさんの叫びにも似た声が響き渡るのと同時に俺はベルの元へと移動し、殴りかかってくるゴライアスの腕を切った。
「流石にキツかったな?」
「リムル…さん……」
「あの咆哮をまともに食らって気絶しないだけましだよ!成長してるな」
「でも、それで動けなくなってしまって…リムルさんが来てくれなければ僕は……」
「大丈夫、ベルはまだレベル1なんだぜ?流石にレベル1でこいつ殺れるとは思ってなかったからさ。今のベルでどれだけできるのか見たかっただけだからね?落ち込むなよ?」
「リムルさん…ありがとうございます。」
そしてベルを抱え、リリルカさんの元へもどる。
「リリルカさん、ベルのこと見ててね」
「は、はい!」
その場を離れ再びゴライアスの元へ戻る。
こいつ、特段強いわけじゃないと思うんだけどなぁ…ゴブタでも余裕で勝てるんじゃないか?
まぁいいか。
さっさと終わらせますかね。
俺は右手に黒い炎を出し、それをゴライアスに向けて放った。
その炎がゴライアスに着弾すると同時にゴライアスを包み込み、数秒後跡形もなくその場から消えた。
「ほい、いっちょあがり」
2人に声をかけようと後ろを見ると2人は言葉も発さずに立ち尽くしていた。
「おーい、大丈夫か?」
俺が声をかけるとはっとしたように2人は動き出した。
「リムル様!なんですか今の!!!一撃で跡形もなく!なんですか!魔法ですか!?」
とリリルカさんは言い
「流石すぎます!リムルさん!!早く追いつけるように頑張ります!」
とベルは言う。
「えっと…まぁ俺の魔法だよ。それとベルはがんばれ!」
「魔法!?詠唱もなしにですか!?」
「まぁ…?」
リリルカさんはふぅと深呼吸をして
「リムル様は絶対レベル1じゃありませんよね?まぁ深くは詮索しませんが…」
その言葉に俺はあはははと笑うしか無かった。
「ゴライアスも倒したし目的の18階層に行こうか」
俺たちは歩き始め何事もなく18階層に着いた。
そこには本当にここがダンジョンなのかと思わせるような大自然が広がっており、天井はとても明るく全てクリスタルで出来ている。
来るのは初めてではない俺だが、しっかりとここに滞在した訳では無いので少し魅入っていた。
隣を見るとベルもリリルカさんも魅入っていた。
「さて、それじゃあここで休憩しようか」
「あの、ここにはモンスターは湧かないんですか?」
ベルの問いに、確かにここは湧いてなかった気がする…湧かないのか?湧かない階層なんてあるのか…?
と考えていると
[主様、ダンジョンにはセーフティポイントと呼ばれるモンスターがわかない階層があるようです。そしてここ18階層はアンダーリゾートと呼ばれる階層になっており、水は綺麗で果実も取れるとの事です。]
え、まじ?そんな凄いのここ。
てか、いつ調べたんだよ!ってまぁいいや
「ここの階層はモンスターは湧かないらしいぞ?それに綺麗な川の水とか果実とかなってたりするんだってさ。あ、あと街があるって聞いたことあるぞ?」
「え、街ですか!?」
「うん、行ってみるか?」
「はい!」
「リリルカさんも行くよー」
「あ、はい!」
俺たち3人は街のある方へ移動した。
場所はある人から教えて貰っていた。
「たぶんこっち……あ、あったあった」
そこには看板が建てられており、木で作られた建造物が立ち並んでいた。
看板には
ようこそ、リヴィラの街へ
と書いてあった。
「本当にダンジョンの中に街があるんですね〜」
「俺も来たのは初めてだよ。リリルカさんはある?」
「いえ、そもそも私は中層に来たことがなかったので… 」
「そうだったのか、それは知らなかった。それにしてもダンジョンの中ってだけあって埃っぽいな」
「あ、色々物も売ってるみたいですよ」
「ちょっと見て回るか」
ベルは露店に並ぶ武器や防具に興味津々のようで、目を輝かせながらあちこちを見て回り始めた。
「リムルさん!少し見てきてもいいですか?」
「おう、あんまり遠くに行くなよー」
「はい!」
ベルは元気よく返事をすると人混みの中へ走っていった。
特に見るものがなかった俺は適当にぶらついていると声をかけられた。
「おい、そこのあんた」
「んぁ?」
俺は欠伸途中だったため変な声で返してしまった。
「おぉ、やっぱり。リムルの旦那じゃねぇか」
「おぉ?」
誰だこのおっさん…どこかで見たような……
[主様、その人はボールス・エルダーです。この前主様がゴライアスを倒した時に居た冒険者の1人でここの町のことを教えてくれたのもボールス・エルダーです。]
「お、おぉ!ボールス!久しぶりだな!」
「旦那…もしかして忘れてたか?」
「いやいや、忘れてないって、結局あの時居たみんなは無事だったのか?」
「旦那の回復薬のおかげで死んだやつは誰一人いねぇぜ」
「そっか、なら良かった」
あの時とは
それは数週間前。
最初はダンジョンを悪魔たちに倒してもらっていたが、久々に俺自身で行こうと思った時、適当に階層を進んでいたらちょうどゴライアスたちに苦戦しているボールス達を見つけてたんだよね。
俺はスルーしようかなって思ったんだけど流石に死にかけのヤツらを見逃すのはと思って助太刀した。
そして俺は回復薬を司令塔っぽい人に渡して下がらせて俺一人で倒したって訳。
その司令塔がボールスだったわけなんだけども。
確かにあの時ここの街のことを教えてくれた気がする…
「それで、今日は何しに来たんだ?」
「あー、今日は18階層まで潜ろうって話でな、それで今自由行動にしてるんだ」
「なるほどな、ところでゴライアスはいたか?」
「あー、居たよ。俺が倒したけど」
「そうだったのか、いや、そろそろ出てくる頃じゃねぇかと思ってな。倒そうとまた人を集めてたところだったんだよ。でも、旦那が倒してくれたんなら楽できたし助かったよ。」
「まぁここに来るのに邪魔だしな」
「泊まってくのか?」
「いや、日帰りだよ。」
「もし泊まることがあるなら言ってくれ、旦那ならタダで止めてやるよ。」
「お、そいつはありがたいねぇ〜。お、じゃあそろそろ行くわ」
「おう、またな」
俺はボールスと別れリリルカさんの元へと向かった。
リリルカさんは露店に並ぶものを見て固まっていた。
「リリルカさん?」
「っ、リムル様!どうかしました?」
「いや、なんか固まってたから…」
「あ、それは…これを見てください。」
リリルカさんが指さす方を見ると
小さな砥石が12000ヴァリスと書いてあった。
「たっか!?」
法外もいい所だろ!
地上だったらこれの半値以下で買えないか?
「ですよね!ちょっとびっくりしすぎて固まってました」
「なるほどね、でも、これはびっくりするよ」
「ところでベル様は?」
「まだどこか見てるんじゃないかな?」
「そうですか」
「リリルカさんちょっといい?」
「はい?」
俺はリリルカさんを連れ街の外へ出て人気のない所へ来た。
「あの…ここは……?」
「ちょっとな、2人で話したいことがあってな」
そう言うと一瞬リリルカさんの動きが止まる
「な、なんですか?」
「腹の探り合いはナシだ。リリルカさん俺たちに何かしようとしてる?」
俺はリリルカさんの目を見て問う。
その言葉にリリルカさんはビクッとするが目は逸らさない。
「何かってなんですか?」
「腹の探り合いはなしっていったんだけど…まぁいいか、そうだな。例えば、モンスターを呼び寄せるアイテムを使って俺たちを置き去りにするとか……そんな感じかな?」
リリルカさんは俺の言い分にずっと逸らさなかった目を逸らした。
「はぁ…どうして分かったんですか?」
「逃げ出さなかったね?」
「逃げても無駄でしょ?」
「よくお分かりで。リリルカさん少し俺から離れてみてよ。」
リリルカさんは怪訝な顔をしながら俺の言った通りに行動する。
「っ!」
「分かったか?」
リリルカさんは見えない何かを叩く。
「こ、これは?」
「結界だよ。中の声は聞こえないし外からも見えないようにした。逃げれないだろ?」
「ほんと、化け物ですね…それで、何が目的ですか?私を殺しますか?」
「ちょっとまて、勘違いしてるみたいだけどそんな事しないぞ?」
「は?じゃあなんで」
「うーむ、なんと言ったらいいか……とりあえずリリルカさんの境遇は知っているよ。」
「は?」
「少しね、調べさせてもらった。リリルカさんのこととソーマファミリアのことをね。それでだ、俺は君を今の境遇から救ってやることが出来ると言ったら信じるかい?」
「な、なにを……」
「今回の俺たちを嵌めようとしたのも同じファミリアの連中からだろ?」
「……」
「まぁいいさ、俺の強さを今日ゴライアスを倒したことで見てもらったと思うけど、同じファミリアの連中の言うことを聞くか、俺に騙されてみるか…どうする?」
「今まで、リリは、たくさんの冒険者に裏切られてきました。だからリリは裏切られ騙されるくらいなら自分から騙しに行って裏切ってやると行動し生きてきました。だからベル様に声掛けたのは簡単に騙せそうだから声をかけました。でも、ベル様はずっと私にお礼を言ってきて、それに稼いだお金は独り占めせず私に半分何も言わずにくれました。いつも蔑まれて来た私は驚きの連続でした。もしかしたらこの人はほかの冒険者とは違うんじゃないかって少し思いました。でも、そうやって信じてまた裏切られる。そう思って信じるのをやめようと思いました。次の日にリムル様が来て、でも、変わらずベル様は私にお礼を言ってくるし、リムル様は私を気遣ってくれるし、報酬の時は3分割じゃなくて半分にして私にくれるし…もう、訳が分からなくなってました。信じたいけど今までのせいで信じさせてくれないんです。」
リリルカさんは堰を切ったように泣き出してしまった。
その後も自分がどんな仕打ちを受け、今までやってきたかを説明してくれた。
それを聞き俺はふつふつと怒りの感情が湧き上がってきた。
やはり、リリルカさんは悪人じゃない。周りの環境のせいで悪人になるしか無かったんだと分かった。
俺はリリルカさんの背中を摩る。
「すみません…」
リリルカさんがぽつりと呟く。
「大丈夫だよ。少しは落ち着いたか?」
「はい…」
その後少し沈黙が流れる。
「リリは…あなたになら、あなた達になら騙されてもいいかなって思いました。」
「そっか」
「安心してくれ。俺はリリルカさんが根っからの悪人だとは思ってない」
「え……?」
「きっと環境がそうさせただけなんだろうなって思ってる」
「だから改めて聞く。俺たちを信じてみる気はあるか?」
俺が笑顔を向けるとリリルカさんはふいっと顔を逸らしてしまった。