今度は異世界転生じゃなくて異世界転移かよ ※リメイク版   作:にゃすぱ@梨

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測れぬ強さ、その片鱗

「椿、一旦休憩にしましょうか。お茶、持ってくるわ」

 

そう言って私は立ち上がった。

そして彼女は驚いたように立ち上がる

 

「いや!主神様、私がやるぞ」

 

「いいのいいの、気にしないで?あなたも疲れてるでしょ?」

 

「いや、確かに疲れてはいるが…」

 

「ほらほら、座ってて?」

 

「……分かった」

 

彼女は力なく椅子に座り込み、目を閉じた。

私はそれを見て部屋にある簡易的なキッチンに向かった。

 

「んー、お茶お茶……あ、あった」

 

棚からお茶っ葉を見つけそれを手に取る。

 

「そろそろ、新しいの買ってこないとなぁ…次は何にしようかな」

 

呑気にそんなことを考えながらお湯が沸くのを待ち、椿の所へ戻った。

 

「椿、お茶出来たわよ」

 

私がそう声をかけると彼女は目を開け

 

「おぉ、主神様ありがとう」

 

そう言ってお茶を手に取る瞬間彼女は素早く立ち上がりドアの前に目を向ける。

 

「ちょ、いきなりどうしたの」

 

「静かに……ドアのところ誰かおる」

 

「えっ?」

 

こんな時間に…?

 

椿はそのまま音を立てずにドアに近づき、勢いよくドアを開けた。

そこに居たのは数時間前にここに居たリムルだった。

 

 

「それで、どうしたの?こんな時間に」

 

私は彼に尋ねる。

彼は机に置いてあるお茶をひとつ持ち飲む。

ふぅっと1呼吸置いて

 

「いやー、さっきのことについて話しておいた方がいいかなって思ってね」

 

「さっき…ヘスティア様と話していたことか?誰もあんなの信じてないぞ?」

 

椿の言葉にリムルは

 

「あはは…まぁですよね」

 

彼はポリポリと頬をかく

ゴホンとひとつ咳をして

 

「さっき2人の前でヘスティアと話していたことは事実ですよ」

 

「ならはそれをどうやって証明する?口だけではどうとでも言えよう」

 

「椿さんは厳しいなぁ……」

 

「当然だろう?こんな夜中に女の部屋に突撃してくる不埒ものだぞ?」

 

リムルは椿にそう言われるとすっと椅子から立ち上がり綺麗に90度のおじきをして

 

「本当にごめんなさい」

 

私はその姿に目を丸くした。

ただ、私は椿がただ弄っているだけと言うのを分かっているのでただただ、面白かっただけでだった。

 

「椿、その辺にしてあげなさい」

 

そう言うと椿はニヤリとしてから笑った。

 

「確か、リムルだったか?いやー、すまんかったな。なかなか可愛い顔立ちだったのでな。意地悪したくなってしまった!」

 

そう言われるとリムルはチラッと顔を上げて椿や私の顔を見る

 

「……勘弁してくださいよ」

 

「すまんすまん!」

 

「それで、何を話してくれるの?」

 

「俺の事についてかな」

 

「そもそも2人は俺の事知ってます?」

 

「そうね……あ、ロキの所の団員をぶっ飛ばしたのってリムル?」

 

「あー、あれね……はい、俺です。」

 

リムルがそう言うと「あの話そんなに広まってるのかよ…」と悪態ついていた。

 

「椿さんは何かある?」

 

「んー、そうだなぁ……最近アンダーリゾートにいるヤツらが誰かに助けられたとかなんとか騒いでおったがあまり興味がなかったから深くは聞いていないな」

 

「あー……それも俺ですね……」

 

その時の状況をリムルは説明してくれた。

 

「リムル、お前は一体レベルはいくつなんだ?」

 

私はこの時レベル8とか誰もまだ見たことの無いレベルだったとしても納得出来たのだが彼が答えたレベルは

 

「レベルは一応1ですね」

 

レベル1それは言わずもがな冒険者の中でいちばん弱い。

だが、どう考えてもリムルがレベル1なんてありえない。

もしリムルがレベル1なら椿やオラリオにいる冒険者は一体レベルはいくつなんだという話になってしまう

 

「そんなはず…ないわよね?」

 

「まぁそうですね、だから一応と言ったんですよ。」

 

「リムル!私と立ち会え!」

 

いきなり椿がリムルに言い放った。

 

「え、ちょ椿?」

 

「なぁに、心配は要らん。少し手合わせしてもらうだけだ。ちょうど新作の武器を試し斬りしたかったしな」

 

「え、…本当にやるんですか?」

 

「なんだ、やらんのか?」

 

「えぇ……」

 

リムルはチラッと私の方を見てくる。

 

「……はぁ…まぁいいわ。どこでやるの?」

 

そう言うとリムルは驚いた顔をしていた。

きっと止めてくれるだろうと思っていたのかもしれないが、私だって気になるんだから仕方がない。

 

「……分かりました」

 

リムルは観念したかのように答えた。

 

「それで、どこでやるのよ」

 

流石にこんな時間から庭でやるのは近所迷惑だからなしとして、今からダンジョンに向かうとなると私は見られなくなる。

そんなことを考えていると、リムルが

 

「ここでやりましょうか」

 

と言ってきた。

 

「は?」

 

思わず声が漏れる。

こんな所で暴れられたら部屋が吹き飛んでしまう。

椿も同じことを思ったのだろう。

 

「流石に無理だろう?」

 

と苦笑していた。

だが、リムルは気にした様子もなく椿に武器を持って近付くよう促した。

 

「まぁ見ててよ」

 

そう言うとリムルは軽く指を鳴らした。

次の瞬間。

二人を囲うように薄緑色の光の壁が現れる。

 

「これは……」

 

私が思わず声を漏らす。

 

「結界だよ。周囲への被害を防ぐためのね」

 

「結界……?」

 

「この中ならどれだけ暴れても外には影響しないよ」

 

あまりにも当然のように言うリムル。

詠唱も無い。

魔法陣も無い。

ただ指を鳴らしただけだ。

それだけでも十分異常なのに。

 

「だが、少し狭くないか?」

 

椿の言葉にリムルは

 

「それも大丈夫」

 

と答えた。

その瞬間だった。

結界の内側がぐにゃりと歪む。

視界が一瞬揺れたと思った次の瞬間には、先程までの狭さが嘘のように広い空間が広がっていた。

部屋の広さは変わっていない。

それなのに結界の中だけが別空間のように広がっている。

 

「……」

 

「……」

 

私も椿も言葉を失った。

正直、もう何が起きているのか分からない。

だが当の本人だけは平然としている。

 

「これで十分かな?」

 

「……あぁ」

 

椿はようやく我に返ったように笑った。

 

「細かいことは後だ。せっかく舞台を用意してもらったんだからな」

 

「それもそうですね」

 

リムルも頷く。

 

「じゃあ勝負条件はどうします?」

 

「戦えなくなるまでで良いだろう」

 

椿が答える。

それを聞いたリムルは少し考え、

 

「怪我をしたら後々面倒ですし、武器を破壊した方を勝ちってことでどうです?」

 

と提案した。

 

「構わん」

 

「それじゃあ決まりですね」

 

椿は薙刀を構える。

リムルも腰の刀に手を添えた。

魔法使いだと思っていたのに武器まで使うらしい。

私は息を呑んだ。

二人が向かい合う。

空気が張り詰める。

そして。

最初に動いたのは椿だった。

一瞬で距離を詰める。

鍛え上げられた身体から放たれる鋭い踏み込み。

薙刀が横薙ぎに振るわれる。

だが。

キィンッ!!

金属音が一度だけ響いた。

次の瞬間。

椿の薙刀の刃が宙を舞っていた。

 

「……え?」

 

私は思わず声を漏らす。

あまりにも早かった。

椿が攻撃した。

リムルが動いた。

気付けば薙刀が折れていた。

私に理解できたのはそれだけだった。

 

ーーーーーーーーーー

 

実力差は明白だった。

私は確かに本気で踏み込んだ。 手を抜いたつもりなど一切ない。

それなのに彼は私の一撃を見切り、避け、そして正確に武器だけを破壊した。

もしあの一撃が私自身を狙っていたなら。

勝負は始まった瞬間に終わっていたのだろう。

さっき見せた不可解な魔法。 そして今の剣技。

どちらか片方だけでも異常だ。

だが目の前の少年は、その両方を当たり前のように扱っている。

ロキ・ファミリアを退けたという話。 ゴライアスを単独で討伐したという話。 ヘスティア様が語っていた常識外れの話。

その全てが少しずつ繋がり始めていた。

私は折れた薙刀を見つめる。

そして思わず笑みが零れた。

 

「なるほどな……」

 

「お前、本当に何者なんだ?」

 

その問いに答えは返ってこない。

だが私は確信していた。

この少年は、オラリオの常識では測れない存在なのだと。

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