今度は異世界転生じゃなくて異世界転移かよ ※リメイク版 作:にゃすぱ@梨
ヘファイストスファミリアから帰ったあと皆眠っていた為俺は静かに皆が起きるまで待っていた。
そして朝日が昇り始める頃、最初に起きてきたのはベルだった。
自室のドアを開け眠そうに目を擦りながら欠伸をしている。
ベルがドアを閉める時にちょうど俺と目が合い、俺に気がつくと少し恥ずかしそうに
「あ、リムルさん起きていたんですね…おはようございます」
俺に挨拶をしぺこりと頭を下げる。
「おー、おはよーベル。随分眠そうだな?」
「いや、寝起きはいつもこうですよ。ただ、ちょっと油断したと言いますか…」
恥ずかしそうに俯く。
「いや、そんな恥ずかしがらなくても誰も笑わないよ?もっとリラックスして過ごそうぜ」
「そ、そうですね!」
そう言うとベルは「顔洗ってきます!」と言い洗面台の方へ向かった。
とりあえず今日は、リリルカさんのことについてだよなぁ…
助けたのは俺とはいえ別にうちに入ることを強制した訳じゃないからリリルカさんにどうしたいかまず聞いてからだよな。
神様もベルも特に反対しそうな感じはなかったから大丈夫だと思うけど…
少し考え込んでいると、ベルが服を着替えて戻ってきた。
「お、眠そうな顔じゃないな?」
「ちょ、言わないでくださいよ!」
「それで、着替えてきてどうしたんだ?」
「いえ、あの…リムルさんさえ良ければ久しぶりに特訓相手になってくれませんか?」
ベルからの誘いを俺は快く受けた。
最初の方は毎日付き添って居たけど最近は全然だったから成長を見るという意味でも少し楽しみだった。
そして俺たちはいつもの特訓部屋に入った。
「よーし、ベル!いつでも打ち込んでこい!」
「ふぅ…行きます!」
ベルは掛け声と共に俺に迫る。
俺はベルの予想外の速さに少し驚くが丁寧にそれを受け流す。
ベルは俺の受け流しに対して無理に逆らわずそのまま突っ込む。
勢いを殺さずに何度も何度も色んな方向から斬りかかってくる。
だが、突如先程よりベルのスピードが僅かに上がり突っ込んでくるが俺はそれを飛んで避ける。
ベルは避けられた瞬間に無理やり足を前に出し急ブレーキをかけ方向転換し斬り掛かる。
俺はそれをしっかりと防ぎ、衝撃に逆らわず後ろに飛び体制を建て直して着地した。
「やっぱりリムルさんは凄いです!完璧に防がれちゃいました…」
「いやいや、落ち込むことないぞ?ベルの成長ぶりにすごい驚いたよ。最後あそこからさらにスピードが上がるなんて思ってなかったし」
「ここまで早く動きながら戦えるようになったのはリムルさんとシエルさんのおかげですよ!僕の得意なところを指摘してくれたおかげで僕の戦い方が少しわかった気がします!」
「そっか…それなら良かったよ。形になって来たら無駄を削ぎ落としていくんだぞ?」
「無駄…ですか?」
「そうそう、まだ無駄な動きを減らすだけでまただいぶ変わると思うぞ?それに今のスピードでの戦闘を毎回できる訳じゃないだろ?」
俺がそう指摘するとベルは少しシュンとする
「そうですね…体力の消耗が激しいので……」
「だろ?対人ならいいかもしれんが、ダンジョン内でやってみろ?動けなくなって死ぬぞ?」
「うぅ…」
「ベルはまだ始まったばかり何だからもっと試行錯誤して頑張れ。英雄になるんだろ?」
俺の言葉にベルはハッと顔を上げて元気よく返事をした。
「はい!」
時間的にそろそろ皆が起きてきそうなため俺はベルに戻ろうと言った。
その時、ベルは片足を庇うような形で歩いて部屋を出ていった。
ふむ……
原因はさっきの急制動だろうな。
相手の意表を突くには悪くない動きだ。だが、あんな無茶な方向転換を何度もやれば足がもたない。
全速力から片足だけで勢いを殺して無理やり軌道を変えるなんて、本来なら自爆技みたいなものだ。
その時は平然としていたから何も言わなかったけど、やっぱり無理してたか。
マジで、諸刃の剣だな。
ちょうどリリルカさんのこともあるしついでにベルも…
そんなことを考えながら俺は部屋を出た。
場所は変わってリビング。
俺たちが部屋から出るとそこにはもうリリルカさんとヘスティアが居た。
リリルカさんは起きてるかなと思ったけどヘスティアまで起きてるのは意外だった。
「2人ともおつかれ」
「あれ、ヘスティア起きてたの?てっきりまだ寝てるのかと思った」
「なんだい、ボクが寝坊助みたいじゃないか!」
少しムッとするヘスティア。
「ごめんごめん。よし、じゃあ早速リリルカさんについてどうするか決めよう」
「流した!…まぁいいや。」
ヘスティアはそう言うと真っ直ぐリリルカを見据えた。
それに対してリリルカもヘスティアの方を向き少し緊張した感じでいる。
「じゃあえっと…サポーターくん?」
「は、はい!」
「君は今後どうしたい?」
ヘスティアの問に対し、リリルカさんは迷わず答える。
「ヘスティア様の許しを得れるのであればリリはヘスティアファミリアに入らせて頂きたいです。」
「ふむ…なるほどね…」
ヘスティアはそのまま目を閉じ何かを考え始め、2人の間に沈黙が流れる。
しばらくするとヘスティアは閉じた目を開けリリルカさんを見る
「ボクは君が今まで何をしてきたか知っている。もちろん、リムルくんから聞いた話だけどね。だからこそ言わせてもらう。ボクはまだ君を信用していない。それは分かるかい?」
「……はい」
「未遂とはいえ、ベルくんをカモにしようとしたんだから。リムルくんが居てくれたおかげで何も無かったけどね。」
「……」
リリルカさんは何も言わずにヘスティアを見つめる。
「とりあえず言いたいことは言った。これがボクの正直な気持ちだよ」
「はい…」
「じゃあ、今言ったことを踏まえてまた言わせてもらうよ?」
リリルカさんはこくんと頷く。
「こんな嫌味ったらしく言っておいてなんだけどボクは正直過去のことなんてどうでもいいんだ。」
「え?」
「だって、過去に何かやってたとしてもそれは過去の出来事。言ってしまえば大きな失敗をしただけなんだから、反省してこれからの行動で示していけばいいだけの話だろ?人はいくらでもその気になればやり直せるんだ。要は変われるチャンスを掴むか手放すかはその人次第ってこと。そのターニングポイントに今君は居るんだ。じゃあ改めて聞くよ?最初サポーターくんはボクのファミリアに入団したいと言ったね。でも、ボクは君を信用してないと言った。それでも、この状況でも君はボクのファミリアに入りたいかい?」
その問いに対してリリルカさんは少し間を置いて答えた。
「……はい。それでも、入りたいです。」
「その理由はなんだい?」
「私の過去をご存知で、さらにベル様にも手を出そうとしていたリリは信用されなくて当然です。ですが、ヘスティア様は仰いました。失敗は反省をしやり直せると。だからリリは…全てを無くした今、もう一度1から人生をやり直してみたいと思います。何より、私を救って下さったリムル様。サポーターのリリに対してしかも別ファミリアのリリに平等に接してくれるベル様。そして、私にもう一度チャンスをくれたヘスティア様の元でやり直したいんです。リリを…リリルカ・アーデを、どうかヘスティアファミリアの一員にしてください。」
リリルカさんはそう言うと、自分の膝を折り、地面に手をつけ、頭を下げる。
「お願い…します……」
俺とベルは黙ってその光景を見守る。
ヘスティアはじーっとリリルカさんを見つめ、はぁっとひとつため息をした。
「顔を上げたまえ、サポーターくん」
ヘスティアにそう言われ、リリルカさんはゆっくり顔を上げる。
「君の覚悟は分かった。いいだろう。
リリルカ・アーデ。
今日から君はヘスティア・ファミリアの一員だ。」
その言葉を聞くとリリルカさんの顔は少し明るくなる。
「ただ!さっき君自身も言った通り君の過去は消えるわけじゃない。だから、今後ちゃんと行動で示してくれよ?」
「はい!」
ヘスティアはゆっくり立ち上がるとリリルカさんの前まで歩み寄った。
そして震えるその手を優しく取る。
次の瞬間、その小さな身体をそっと抱きしめた。
「えっ…?」
突然の事でリリルカさんは困惑している。
「今までよく1人で頑張って耐えて生きてきたね。同じファミリアになった以上、ボクたちは家族だ。だから、これからは1人で抱え込まず、みんなを頼るんだよ?」
ヘスティアの声色はとても優しく、小さい子をあやす様にリリルカに言った。
リリルカさんはヘスティアの言葉を聞き、最初は驚きで目を見開いていたが、言葉の意味を理解しすると、静かに涙を流した。
ヘスティアの服を掴んでいたリリルカさんの手は力強く握りしめていた。
「さて、それじゃ恩恵を刻もうか」
落ち着きを取り戻したリリルカさんにヘスティアは言う。
「お願いします!」
そう言うとリリルカさんはヘスティアに背を向けるが、俺は少し気になったことがあったのでリリルカさんに尋ねた。
「そう言えば、リリルカさんってソーマファミリアにいた頃のステータスってどうだったの?」
「えっと…ソーマファミリアはステータス更新するのにお金がいるんです。ステータス更新をすると羽振りがいいと思われるので……」
リリルカさんの話はソウエイが収集してくれた情報と一致した。
たしか、本来ステータス更新って強くなるためにやるんだよな…?
なんで強くなるための行為にお金が取られてたんだ?
ソーマファミリア…何がしたいのかさっぱり分からないが、分かることは、神ソーマは眷属に興味が無いという事だけか…
「じゃあ、レベル1ってこと?」
「はい…」
正直レベルはまぁ低くても何も問題ないけど、もうひとつは今はステータスが消えてるけど、新たに刻んだ時に前持っていたスキルや魔法はどうなるのかってところだよな
「あぁ、そんな気にしないで!これから強くなってけばいいんだから。それと、ヘスティア」
「ん、なんだい?」
「ステータスが消えた場合にもう1回刻んだらステータスはリセットされるの?それとも引き継がれるの?」
俺の問いにヘスティアは腕を組み唸る
「ん〜〜、やったことないから分からないとしか言えないかな?改宗は引き継げるけど1度消えた物が戻るのか分からない」
まぁ、そりゃそうだよなぁ
「了解。とりあえず刻んじゃおうぜ!」
そう言うと、ヘスティアはリリルカに寝転がるように指示をし、いつもと同じようにリリルカさんの上に跨り、自分の血《神血》を垂らしステータスを刻んでいく。
徐々にリリルカさんの背中の発光は収まり、ヘスティアは紙を取り出し、写していく。
ヘスティアは紙を見つめる。
そして少しだけ目を見開いた。
「へぇ……」
その反応に俺たちは顔を見合わせる。
一体何が書かれていたのか。
俺たちはヘスティアの持つ紙を覗き込んだ。