古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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子供時代//その才能と可能性が故に

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 ──子供時代//その才能と可能性が故に

 

 

 トーランド教授はレオ坊に尋ねる。レオ坊にとって魔術とは何か、と。

 

「私にとって魔術とは尊敬する姉上との大事な繋がりであり、そしてこれから自分がなりたい未来に繋がっているものです。魔術は私自身にとっての未来の可能性なのです」

 

「君の未来とは?」

 

「魔術師になり、人々に役に立つことです。私も姉上と同じように魔術は人間の選択肢になると思っています。私はその魔術を習得し、研究し、発展させるという仕事をやりたいのです。魔術師になる未来こそが、私の未来です」

 

「そうか」

 

 トーランド教授は暫し考え込んだ。

 

「レオ。君の志は立派だが、研究者の視野としてはアイザックが言っていたように狭い。君は君個人の願望で魔術を見ている。この世界を変えたいというより、君自身という小さな点を変えたいと思っているように思える」

 

「そうかもしれません……」

 

「それはただ生きる人間なら悪いことではないが、開拓者になるには熱意が不足している。そう考えざるを得ない」

 

 ううむ。手厳しいのう。レオ坊にも熱意はあると思うのじゃが。

 

「では、次は実技を試そう。来たまえ」

 

 それからわしらは実技を見せるために、グラウンドに向かった。流石に研究室内でやるのは危険すぎるということである。

 

 グラウンドにはアイザックとグレイスも見学のためについてきた。

 

 そんなグラウンドは学生が運動をするための場所のようじゃったが、今の時間は誰も使っておらんようだ。

 

「君たちの得意な魔術を披露してくれ。条件は付けないが、あまり危険なものは困る」

 

 トーランド教授はそうわしらに命じる。

 

「私から始めていいですか?」

 

 ここでレオ坊が今度は先にやりたいと申し出た。

 

「よいぞ。レオ坊、頑張るのじゃぞ!」

 

「ありがとう、姉上」

 

 そして、レオ坊がわしらから十分離れた位置に立つ。

 

 レオ坊はじっくりと自分を落ち着かせ、精神を集中させるのが、離れた場所にいるわしにも分かった。レオ坊はここぞの大技を披露するつもりじゃな。

 

 わしは表面構造(テクスチャ)に異界の理が書き込まれて行くのを感じ始めた。

 

 おお。これはもしや……?

 

「“鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)”」

 

 レオ坊がそう唱えると、異界に存在する武具がこの世界の表面構造(テクスチャ)に上書きされて出現した。

 

 それは人魂のようにぼんやりと青白く輝く剣。それがずらりと13本形成されて、レオ坊を中心にして宙に浮いておる。

 

「回転」

 

 レオ坊がそう命じると13本の剣はぐるぐるとレオ坊の周囲を回転し始め、さらには敵に向けられるかのように剣先が周囲に向けられ、自由自在にレオ坊によって操られる。

 

 レオ坊はこれを特訓しておったのだ。

 

 異界魔術というだけでも今の時代は評価されるじゃろうが、レオ坊はただ異界の法則をこの世界に持ってくるだけでなく、異界の事象を理解して維持し、さらに自在に操るほどの力量を身に着けていた。

 

 見事じゃあ! 流石はレオ坊、わしの一番弟子!

 

「素晴らしい……!」

 

 トーランド教授はレオ坊のそれに見入っている様子であった。だが、当然じゃ。それぐらいは注目してもらわねばの。レオ坊は一生懸命これを身に着けるために頑張っておったのじゃから!

 

「1年前からさらに発展しているな……」

 

「凄いです、レオさん!」

 

 アイザックもグレイスもレオ坊の魔術に感嘆しておる。

 

「ふう……」

 

 そして、レオ坊は30分ほど自在に剣を操作したのちに、実演を終了した。

 

「君、今の魔術は異界魔術なのだろう。それならば、あの剣は宙に浮くだけではないはずだ。あれにはどのような理があったのだろうか?」

 

「はい。見た目は剣ですが、非殺傷兵器です。生物の肉体以外には物理的に作用しますが、生物に対しては痛みこそ与えても傷を負わせることも、殺すこともありません」

 

「なるほど。素晴らしいな。ただ殺すだけならば銃を使えばいいが、君の魔術には銃にできないことがある。唯一無二だ」

 

 そう言ってトーランド教授は実に満足げに笑って見せた。

 

「ありがとうございます」

 

 その言葉にレオ坊も貼り付いていた緊張がほどけ、安堵の表情を見せる。

 

「では、次はわしじゃのう」

 

 さて、わしもレオ坊に負けないようにしなければの。

 

「ゆくぞ」

 

 わしが使うのは異界魔術と一般魔術の組み合わせ。

 

「咲き誇れ、花々よ」

 

 レオ坊は異界の武具を表面構造(テクスチャ)に書き込んで生み出したので、わしは異界の景色を表面構造(テクスチャ)に上書きする。

 

 そして、現れたのはこの世界には存在しない、この世界には本来存在できない、そんな花々が咲き誇る光景であった。様々な色の花がグラウンド全体を覆い尽くすように咲き誇ってゆき、わしはその中心地にいた。

 

「おお……。何と美しい……」

 

 トーランド教授がそう呟くのが聞こえる。

 

 だが、まだまだわしの魔術はここからじゃよ。

 

 この花々には特殊な性質がある。その花弁と花粉が光の屈折に干渉しておるのだ。これを一般魔術による光への干渉も使って拡張すれば──。

 

「とう!」

 

 一斉にわしの分身が10体、花々の中に出現する。

 

「どうじゃ? わしの花畑は?」

 

 10体のわしが同時ににやりと笑ってトーランド教授にそう言う。

 

「光に干渉する花畑か。研究に値する現象だ。実に見事である」

 

 トーランド教授はただただそう言って頷いていた。

 

「では、これぐらいにしておこう」

 

 わしは表面構造(テクスチャ)への干渉を止め、表面構造(テクスチャ)は元の記述を取り戻していき、花畑はさああっと波打つように消えていった。

 

「君が言った通りであったな、アイザック。彼女たちは天才だ。この時代におけるもっとも優秀な魔術師と言えるだろう」

 

「ええ、トーランド教授。彼女たちの才能は絶対に無駄にすべきではありません」

 

「もちろんだ。それは私の魔術への姿勢にも反する。彼女たちの才能をさらに伸ばし、さらには世間に周知するのは、もはや我々の義務だと言えるだろう」

 

 アイザックとトーランド教授のお眼鏡にはかなったようじゃ。何より、何より。

 

「のう、教授。これで推薦は受けられるのかのう?」

 

 そこでわしはトーランド教授にそう尋ねる。

 

「もちろんだ。アリス、君を研究員として魔術学部に迎えよう。できることならば、私の研究室に来てほしい。私が君を推薦する以上は、君はこの私とともに研究に励むべきだからな」

 

「それは構わないのじゃが、レオ坊はどうなのじゃ?」

 

 レオ坊も先ほど素晴らしい魔術を披露した。わしと同じように研究員になるのではないのかの?

 

「レオに関しては残念だが研究員としては推薦できない。だが、学士過程から始められるようには推薦しよう」

 

「な、何故じゃ? レオ坊の魔術の素晴らしいものじゃったろう?」

 

 理由が分からぬ。どうしてトーランド教授はレオ坊を研究員にしてくれぬのじゃ?

 

「彼の魔術は優れている。認めよう。だが、君のそれと比べるとまだまだ発展の余地がある。私は彼に才能がないから研究員としないわけではない。むしろ、可能性があるからこそ独学ではなく、体系化されたものから学び、その才能を伸ばしてほしいんだ」

 

「ふうむ。レオ坊、おぬしはそれでいいか?」

 

 ここで大事なのはレオ坊の気持ちじゃ。レオ坊が拒むのであればそれまで。

 

「ええ。推薦が受けられて、姉上と同じ学院に通えるならば大丈夫です。教授が仰るように学生と学ぶことで、新しい気づきもあるかもしれませんから」

 

「本当に大人になったのう、レオ坊。では、そのようにお願いしよう」

 

 昔のレオ坊なら我がままのひとつも行ったかもしれぬが、今のレオ坊は本当に物分かりがよくなっておる。大人に成長したのじゃな!

 

「トーランド教授。これからよろしく頼む」

 

「こちらこそ。推薦文は君たちと学院理事会に2通送っておく。君たちが決断したら、推薦状を持って学院の事務局を訪れるといい。すぐに入学が承認されるだろう」

 

「了解じゃ」

 

 こうしてわしとレオ坊は無事にトーランド教授から推薦を勝ち取ったのじゃった。

 

 わしらはグレイスと一緒に学院から一時的に帰宅することに。

 

「凄い、凄い、凄いです、アリスさん、レオさん! 当然だとは思っていましたが、それでもトーランド教授から認められるとは! これでおふたりの才能がまたひとつ周知されましたね!」

 

「そうじゃのう。まずは第一歩じゃ。これがゴールではないぞ」

 

「ええ、ええ。もちろんです!」

 

 学院で何かを成さなければ、推薦を得られた意味はないのじゃ。

 

 わしらの最終的な目的は今も変わらず魔術の再興なのじゃから。

 

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