古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──学生時代//研究室の同僚たち
「案内をありがとうな、マヤ。わしはこれから研究室の方に挨拶にいかねばならんので、ここで一度失礼するよ」
「うん。研究室の場所は分かるよね?」
「ああ。それではの!」
わしはマヤに別れを告げて、トーランド教授の研究室に向かう。
「失礼するぞ」
わしはノックしたのちに研究室に入る。
「ああ。来たか、アリス」
「アイザック。今日からよろしく頼むの!」
研究室にはアイザックの他に2名の学生がいた。トーランド教授は出かけているのか、姿は見えない。
「君の同僚を紹介しよう。彼はマックス・アンダーセン。我々と同じ研究員だ」
「どうも。どうか気軽にマックスと呼んでほしい。しかし、アイザックが言っていたように本当に小さい子だね。本当に16歳なのかい?」
マックスと紹介された学生はひょろりとした若い男性で、その赤毛をやや伸ばしっぱなしにしておる。服装もスーツでフォーマルに決めたアイザックとは違って、Tシャツにジャケットとカジュアルなものじゃ。
「16歳じゃよ。よろしくのう、マックス」
わしはマックスにそう言って挨拶。
「そしてこちらはリリー・ドレイク。私の妹であり、修士課程の院生だ。」
「おお。アイザックの妹か。よろしくのう!」
リリーはアイザックよりやや年下の女性だ。アイザックと同じブロンドの髪をミディアムボブにしており、そのやや小柄ながらメリハリのある体にはシンプルな黒いワンピースの上から白衣を纏っておった。
「よろしく頼むのう、リリー」
わしはリリーにもそう挨拶。
「ところで、リリーはアイザックの妹じゃからそうじゃろうが、マックスも血統魔術師なのかのう?」
「俺は違うよ。普通の一般人の出身だ」
そう言ってマックスはリリーの方を向く。
「私と兄は血統魔術師だけどこの研究室にいるのは、それが理由じゃない。トーランド教授は血筋で人を判断する人じゃないから」
「実力があるというわけじゃな」
「そういうこと」
リリーは少し誇らしげにそう言っていた。
「それからもうひとり。そろそろ来るはずなのだが」
アイザックがそう言ったとき、研究室の扉が開いた。
「遅れました!」
「おお。グレイスではないか! おぬしもこの研究室に?」
研究室に駆け込んできたのは、他でもない学院に復帰したグレイスじゃ。
「それはそうですよ。ともにアルビオンにおける、いや世界における魔術界の未来を切り開こうと誓ったではありませんか、アリスさん!」
「そうじゃったな。おぬしと一緒に研究ができることを嬉しく思うよ」
わしは鼻息を荒くして意気込むグレイスに頷いて見せる。
「しかし、血統魔術師と非血統魔術師もそこまで区別はされておらぬのじゃな」
「……いや。そういうことではない。トーランド教授と我々が特別なだけだ」
「そうなのか、アイザック?」
「ああ。血統魔術師は血統魔術師の教授の研究室に、非血統魔術師は非血統魔術師の教授の研究室にそれぞれ集まる。その枠を不用意に越えると不幸なことになってしまう。それが学院の現実だ」
ふむ。トーランド教授の研究室にはアイザックとリリーという血統魔術師がいて、マックス、グレイス、わしという非血統魔術師がいる。だが、アイザックが言うにはこのような研究室はまれだそうじゃ。
「血統が魔術に関係しないという考えに誰もが理解があるとは思わない方がいい。下手な揉め事は君自身も望まないだろう?」
「それはそうじゃが……」
しかしのう。血統魔術師は学院で権力を持っていると聞いておる。そして、そのせいで魔術が閉鎖的になってしまったとも。
そういう状況は変えていきたいのじゃがなぁ……。
「特にアリスさんは気を付けた方がいいですよ。その年齢でトーランド教授の推薦で研究員になったというのは目立ちますから。血統魔術師の中には因縁を付けてくる人もいるかもしれません」
グレイスがわしにそう言う。
「分かった。気を付けるとするよ。それで、この研究室ではどのような研究をしておるのじゃろうか?」
「この研究室は
「
「そうなる。我々は漫然と
「確かにの。
アイザックが説明するのにわしも同意した。
「そう、空気のように存在していた。この世界には仕組みが分からずとも、不思議に思われてこなかったことが多い。空気にしても、重力にしても、そして人間がこうして生きて、思考することについても」
「それを解き明かすのじゃな。
「我々の研究は基礎研究だ。すぐに応用されて人々の役に立つわけではないが、確かにいずれは発展に貢献することだろう」
世の中には身近に存在するが、その仕組みの分からないものがいろいろと存在する。皆が当然のように扱っているが、本当はよく分からない現象や物質は多くある。世の中は意外と謎だらけなのじゃ。
魔術も同様じゃ。
「では、今日からよろしく頼むの、皆のもの」
「ああ。改めて歓迎する。ようこそ、アリス」
わしは改めて皆に挨拶し、拍手で迎えられた。
「君のデスクがそこを使うといい」
「ありがとう、アイザック」
わしはマックスの隣のデスクを割り当てられてそこに持ってきた文房具などを置いた。これからここでわしの研究生活が始まるのじゃな。
「今日はアリスとグレイスの歓迎式がある。ささやかなものだが、トーランド教授が戻ってこられたら始めよう」
「おお!」
歓迎式まで開いてもらえるとは、わしは幸せ者じゃのう!
それから暫くしてトーランド教授が戻ってきた。
「アリス、グレイス。来たのだな。君たちを待っていた」
「これからお世話になる、トーランド教授」
トーランド教授はわしとグレイスを見て満足げに笑い、わしも頭を下げた。
「では、歓迎会を始めよう。お茶と軽食を準備させている」
それからわしらの歓迎会が開かれた。これはわしとグレイスが研究室に馴染むチャンスじゃな。しっかりと仲良くならねば。
「マックス。おぬしは血統魔術師ではないが、どうして魔術を?」
わしはまず初対面のマックスとリリーから話してみることにした。
「俺の理由は憧れ、かな。小さいころに博物館で開かれていた古代帝国の展示を見てね。古代帝国の時代には魔術が盛んだったって記録があって、それがとても自由な世界に見えて、酷く羨ましく思ったんだ」
「古代帝国は確かに魔術が盛んだったのう」
「ははっ。君は見てきたように言うんだな、アリス。けど、そのときの資料は戦乱や帝国の崩壊で失われてしまって、今には完全に継承されていない。それがまた神秘さを感じさせてくれて、この道を進もうと思ったんだ」
「神秘、か……」
もし、古代帝国時代からちゃんと魔術が継承されていた場合、マックスはこの道に進まなかったのかもしれぬな。
「リリーは家が魔術師の家系じゃからか?」
「それもある。けど、私自身に魔術への興味があることも事実ね。特に兄から研究の話を聞いて興味を持った。
リリーは語る。
「私たち魔術師は仕組みのよく分からないものを使っている。それをちゃんと説明可能な技術にしたい。そう思ったの」
「なるほど。わしも同じ気持ちじゃよ」
「ふふ。じゃあ一緒に頑張りましょうね」
「もちろんじゃ」
それからわしが自己紹介などをして、歓迎会の場は閉じられた。
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