古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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学生時代//対立の存在

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 ──学生時代//対立の存在

 

 

 血統魔術師の教授であるエリオットが、わしとレオ坊の入学に不正があったと告発したという話が聞こえてきた。

 

「どうやら本当にエリオットはわしらを学院から追い出したいらしいのう……」

 

 噂を聞いたわしは研究室でそう愚痴っておった。

 

「噂が事実ならアレクサンダー教授も随分と思慮に欠けた行為をするものだ」

 

「だね、アイザック。事実を自分で確かめずに決めつけるのは、学者としても失格だ」

 

 アイザックとマックスはわしの愚痴にそう言っていた。

 

「それだけじゃないわよ。アレクサンダー教授はトーランド教授のことも批判しているのだから。詐欺行為に加担したとして」

 

 アイザックたちに対してリリーがそう指摘する。

 

 そうなのじゃ。エリオットはトーランド教授がわしらを入学させた際にペテンだと知りながら、それを隠して推薦状を書いたと批判しておるらしいのだ。

 

「アレクサンダー教授にとってはトーランド教授は非血統魔術師に与した裏切り者というわけなのだろう。全く、魔術に対する理解を深めるよりも、魔術に関する権力闘争をしたがる連中が多すぎる」

 

 アイザックは呆れたようにそう言っておる。

 

「しかし、これからどうなるのじゃろうか? わしとレオ坊は入学を本当に取り消されたりするのじゃろうか?」

 

「心配はいらない。ペテンなどではないと証明すればいいだけだ。そして、君とレオにとってそれは酷くたやすいことだ。だろう?」

 

「まあ、証拠を示せと言われるならば、もちろん応じて見せるぞ」

 

 わしとレオ坊は普通に異界魔術が使える。それを証明しろとはっきり言ってくれれば、わしらはそれに応じて、それを証明して見せよう。

 

 問題はそう求められず、一方的に決めつけられたままということじゃ。反論する機会を与えられないというのはわしとしても困る。

 

「俺はアリスの味方だからね。もし、血統魔術師たちがいちゃもんを付けてくるなら、俺たちがアリスが異界魔術を使えるということの証人になるよ」

 

「私もよ。血統魔術師か非血統魔術師かなんて関係なく、アリスは優れた魔術師であると証言するわ」

 

 マックスとリリーがそう請け負ってくれる。

 

「ありがとう、ふたりとも」

 

 わしも友人に恵まれたの!

 

「不当な非難は撤回されるべきだろう。だが、これがきっかけで血統魔術師と非血統魔術師の対立が激化しなければいいのだが……」

 

 アイザックがそう懸念を示したとき、トーランド教授が研究室に戻った。

 

「アリス。既に君も聞いているかと思うが、エリオットが君たちへの推薦は不当だと学院理事会に訴えるつもりらしい」

 

「そのようですの、トーランド教授」

 

 トーランド教授が険しい表情で言うのにわしはそう返す。

 

「もちろん私はそのような訴えが行われれば、私と君たちの名誉にかけて反論するつもりだ。推薦を取り消すようなことは、絶対にありえないので安心しておいてほしい」

 

「ありがとうございます。しかし、わしにできることは何かないですかの?」

 

「今はない。だが、いずれ君とレオの才能を知らしめる必要はあるだろう。今回のような不当で、無意味な告発が繰り返されないためにも。このようなことが度々起きていては、魔術学部の信頼に関わる」

 

 そうじゃのう。わしとレオ坊がばっちりと魔術を見せれば、今回のような騒動は繰り返されぬだろう。だから、わしらが魔術部の人間に広く魔術を披露する場を作ってもらえればよいのじゃが。

 

 このようなやりとりがあってから、数日間のこと。

 

 エリオットが引き起こした問題は、血統魔術師たちがわしとレオ坊を非難するだけに留まらず、エリオットとトーランド教授の対立、そして血統魔術師と非血統魔術師の対立を引き起こしていた。

 

「最近、ますます血統魔術師があたしたち非血統魔術師を嫌うようになったみたい」

 

「やはりそうなのか……」

 

 わしは講義室で隣に座るマヤが言うのを、渋い表情で聞いておった。

 

 直接、何か手出しをしてくるわけではないが、血統魔術師はわしら非血統魔術師を見るとひそひそ話をしたり、敵意ある視線で見てきたりしておる。

 

「レオ坊。おぬしは今のところ大丈夫かの?」

 

「ああ。心配いらないよ、姉上」

 

 レオ坊が無事ならばよいのだが。

 

 それから講義が終わって講義室を出ると、先ほどまで講義をしておった教職員がわしらの方に駆け寄ってきた。

 

「待って、待って! 君はレオ君だよね?」

 

「はい。そうですが? どうしました、マーシャル先生?」

 

 レオ坊に話しかけてきたのは応用魔術の講義を担当している教職員のひとりである、ローガン・マーシャル准教授じゃ。

 

 まだ40代前半ほどの中肉中背で、黒髪を七三に分けている。それからよく言えば人の良さそうな顔立ちの、悪く言えば威厳のない顔立ちをした男性である。

 

「君、まだ研究室を決めてないんだろう? それなら僕のところにおいでよ。非血統魔術師なら僕の研究室に来る子は多いよ!」

 

「いえ。私は姉上と同じようにトーランド教授の研究室を目指します」

 

「ええっ!? そ、そっかー。それは残念だな……」

 

 ローガンは本当に残念そうに大きく肩を落とした。

 

「そう言えばマヤとライリーはマーシャル先生の研究室だったな」

 

「うん。というか、非血統魔術師はそれ以外に選択肢がほぼないし」

 

「そうなのか?」

 

 マヤの答えにレオ坊が意外そうな顔をした。

 

「そうだねえ。非血統魔術師で研究室を持っているのは、僕とケイティだけだから。そして、非血統魔術師が血統魔術師の教員の研究室に配属が認められることはほとんどない。トーランド教授だけが例外だよ」

 

 レオの質問に答えたのはローガンじゃ。ローガンは苦笑しながらそう語っておった。

 

「あまり好ましいとは思えぬのう」

 

「もちろんそうだとも。全然好ましくない。こんなことが起きているのは魔術学部だけだよ。今時、生まれで違いを付けるなんて。とは言え、このことを公に批判すると集中砲火を受けるから何も言えないだけどね」

 

「むう。不健全じゃよ、それは」

 

 学問はどのような人間にも開かれておくべきじゃ。それが生まれた家によって学べること、学べないことが決まるなど正しいとは決して思えぬ。

 

「だよねー。あたしはマーシャル先生の研究室で不満はないけど、中にはやりたい研究がやれなかった子もいるから。これから自分がやりたい研究が本当にやれるような環境になればいいのに」

 

「全くだ。マーシャル先生ももうちょっと非血統魔術師の教員として頑張ってくれよ!」

 

 マヤとライリーがそれぞれそう言う。

 

「あはは。頑張ってみるけど、期待はしないでね」

 

 ローガンはそう言って立ち去っていった。

 

「やはり今のような状況は変えねばならぬな。このような状況で健全かつ大きな魔術の発展はあり得ぬ。血統魔術師も非血統魔術師も等しくチャンスが得られるようにせねば」

 

「そうだな、姉上。問題はどうやってそういう風土を築くかだが……」

 

「グレイスが言っておったようにわしらにかかっておるのかもしれぬ。わしとレオ坊という非血統魔術師が、血統魔術師に劣らぬ才能を見せれば、血統魔術師たちも納得するやもしれぬだろう?」

 

 わしはそうは言ったものの、そこまで楽観はしておらん。

 

 既にレオ坊の異界魔術を見た学生たちはそれを見たにもかかわらず認めず、エリオットもレオ坊を認めようとはしていない。

 

 これからいくら実力を見せても、無視される可能性はあった。

 

 重要なのはどこで、誰に、実力を誇示するかであろうな。頑固なエリオットたち血統魔術師でも絶対に否定できぬ場で、わしらの実力を証明しなければならぬぞ。

 

 しかし、そのような場は簡単には得られぬだろう……。

 

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