古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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学生時代//あなたの騎士になりたい

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 ──学生時代//あなたの騎士になりたい

 

 

「今はまだ魔術を公開する場は設けられない」

 

 トーランド教授の言葉はわしにとってショックであった。

 

「やはりエリオット辺りが妨害しておるのかのう?」

 

「確証はないので彼を貶めるような発言はしない。だが、何かしらの政治的な働きかけが皆無だったという現実味のないことも言うつもりはない」

 

「ふむ」

 

 こうなるとお手上げじゃ。

 

 前世ならわしにも多少の政治的な力があったが、今のわしはただのちんまい魔術師でしかない。相手に政治力を使われてしまっては、場外で決着を付けられた形になってしまい、自分のステージで勝負はできぬ。

 

「どうしたものかのう。このままでは悪い噂を晴らすことはできぬ……」

 

「私の方でもまだ働きかけてみよう。諦めるには早い。エリオットのような血統魔術師が実家の政治力を行使していたとしてもだ。こちらにも血統魔術師はいるのだから」

 

「わしにはそうお願いすることしかできん。よろしく頼むの、トーランド教授」

 

「ああ」

 

 わしはちょっとがっかりしながらトーランド教授の部屋を出た。

 

「聞いたよ。魔術を公開ができなくなったんだって?」

 

「ああ、マックス。残念なことじゃよ……」

 

「エリオットたちのせいだろう。これだから血統魔術師ってやつは……」

 

 マックスはわしのことを思って怒ってくれた。

 

「あら。私もアイザックも血統魔術師よ?」

 

「君たちは例外さ。いい血統魔術師だ」

 

 リリーが冗談めかしていうのにマックスは慌ててそう弁明した。

 

「とは言え、エリオットが姑息な人間であることも、彼が血統魔術師であり、それが理由で妨害を行っているのも事実。ある意味では血統魔術師は魔術の発展を阻害している。それは認めるわ」

 

「君は違うだろう? 悪いのはエリオットの取り巻きのような連中だ」

 

「外から見れば同じに見えてしまうものよ」

 

 血統魔術師であるリリーもエリオットたちは嫌いなようだ。わしらとは違って同じ血統魔術師としての嫌悪が見える。

 

「アイザックはどう思う? エリオットたちのことは?」

 

 そこでマックスが研究結果をノートに記していたアイザックに声をかける。

 

「俗物の一言に尽きる。魔術を学問ではなく、権力の道具としか見ていない人間だ。同じ研究者としても吐き気がする」

 

 アイザックはもっと辛辣にエリオットを評価しておった。

 

「才能あるものを己のプライドを守るという矮小な考えから認めず、それどころか貶めようとしている。気に入らない。あのような人間が教授職についたのも、魔術学部の不健全さの現れだ」

 

「アイザックはあの手の人間は特に嫌いだったね」

 

「ああ。血統魔術師という地位だけを振り回す人間は、全て嫌いだ」

 

 アイザックはそう吐き捨てるように言ったのだった。

 

「そういうところも変えていきたいものじゃがのう」

 

 血統魔術師も非血統魔術師も等しく学ぶことのできる環境を作らなければ、魔術再興など夢もまた夢じゃろう。

 

「今はぼちぼちやるしかないね。血統魔術師と非血統魔術師の溝は大きい」

 

「ある意味では革命が必要だ」

 

 マックスとアイザックはそう語ったのだった。

 

 

 * * * *

 

 

 魔術公開の場がキャンセルされてから、2日後のこと。

 

「お前、例の天才少女だよな?」

 

 わしが講義を受けるために構内を進んでいたとき、前方に4名の男女が現れた。

 

「天才と名乗った覚えはないのう」

 

「ふん。異界魔術を使えるなんて嘘八百並べて、不正入学というペテンを働くような恥知らずのくせに、そういうところは謙虚なんだな、ええ?」

 

 わしが苦笑して答えるのに男女は敵意ある視線を向けてくる。

 

「おぬしらは血統魔術師か?」

 

「そうだ。俺たちこそ正しい魔術の使い手だ」

 

「正しい、のう。つまり間違った魔術の使い手もおるということか?」

 

「ああ。お前たちのような非血統魔術師がそうだ」

 

 男のひとりがそう言ってわしの方を睨んだ。

 

「なら、教えてはくれぬか? 間違った魔術とはどのようなものなのかを」

 

「俺たち血統魔術師は代々魔術を継承してきた。俺たちの血には魔術師の血が流れている。そして、俺たちはその血と伝統を守ってきた。お前たちのようなたまたま魔術が使えただけの連中とは違うんだよ」

 

「なるほどのう。しかし、魔術は別に血筋にはよらぬし、伝統を引き継いできたという割には精霊魔術も異界魔術も失われてしまっておるではないか。一体、おぬしらは何を引き継いできたというのじゃろうか?」

 

「貴様……!」

 

 4名の男女は明白に怒りを示した。

 

「少し痛い目に遭わせてやらないと分からないみたいだな?」

 

「思い知らせてやろうぜ」

 

 それから連中は拳を鳴らし、私の方に近づいてきた。

 

 不味いのう。反論するつもりで、煽りすぎてしまったようじゃ。ここで下手に暴力沙汰になると、それを理由に退学させられかねぬ。ここは慎重に対処しなければ。

 

「姉上!」

 

 そこで響いたのはレオ坊の声だ。レオ坊が駆け付け、わしを庇うように前に立つ。

 

「ああ? お前は弟の方か。ちょうどいい。まとめて教育してやる」

 

「やろうと言うなら相手になるぞ」

 

 4名を前にレオ坊がそう応じる。

 

「なら、覚悟してもらおうか!」

 

 4名の中の男が前に出てレオ坊に向けて拳を振るった。拳はレオ坊の顔面に直撃し、レオ坊が血を流す。しかし、レオ坊は耐え、男に向けて反撃の一撃を繰り出した。今度はレオ坊の拳が男の腹部に叩き込まれる。

 

「そこ! 何をしているのかねっ!?」

 

 殴り合いに発展しそうになったとき、聞こえてきたのは非血統魔術師の教員であるローガンの声じゃ。その声が響くとレオ坊も、レオ坊を殴った男も殴り合いをやめて、距離を取った。

 

「ちっ! 何でもないですよ、マーシャル先生。それでは」

 

 4名の血統魔術師たちはそう言って白けたような表情をし、この場から立ち去った。

 

「レオ君、アリス君、大丈夫かい?」

 

「大丈夫です」

 

 ローガンが心配して尋ねるのにレオ坊は流れた血を拭ってそう返す。

 

「レオ坊。見せてみるのじゃ」

 

 わしはレオ坊のあざのできた顔を見ると、最近覚えた魔術を使ってそれを治癒する。医療に対する科学の理解が、魔術による治療を可能にしていたのじゃ。

 

 それによってレオ坊の傷はみるみる塞がっていった。しかし、あざだけはどうにもならぬのう……。痛々しくて可哀そうなのじゃ……。

 

「ありがとう、姉上」

 

 レオ坊はそう無理をして笑みを浮かべて、礼を述べる。

 

「一応救護室に行くかい?」

 

「いえ。もう大丈夫ですから、マーシャル先生」

 

「そうか。気を付けるんだよ?」

 

 そう言ってローガンは心配しながらも、次の講義があるのか急ぎ早に立ち去った。

 

「姉上。これからなるべく一緒に行動しよう」

 

「わしのことは心配いらぬよ、レオ坊。それよりレオ坊も揉め事に巻き込まれないようにしておくれ。何かあっても今回のようなことにならないようにな?」

 

「いや。ダメだ。私は姉上を守りたい。これまで姉上にはずっと世話になっていたのだから。お願いだ。私に姉上を守らせてくれ」

 

 レオ坊はとても真剣な表情でわしの方を見つめる。

 

「レオ坊……。本当に立派になったのう……」

 

 わしは背伸びしてレオ坊の頭をぽんぽんと叩く。

 

「では、これからはレオ坊に守ってもらおうかのう。レオ坊、頼りにしておるぞ」

 

「ああ、姉上。私が姉上を守る。絶対に」

 

 レオ坊はそう言い、わしらはこのときからなるべく一緒に行動することになった。

 

 しかし、わしもレオ坊に守られているままというわけにはいかぬ。

 

 わしらに関する間違った噂を否定するために、わしは行動を起こさねば!

 

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