古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──学生時代//手袋を投げつける
わしらに関する噂は未だに消えておらぬ。
血統魔術師と非血統魔術師の対立は続き、わしらは不正入学を疑われておる。
「アリスさん、アリスさん! 大変、大変! 大変です!」
「どうしたのじゃ、グレイス?」
そして、ついに大きくことが動いた。
「アレクサンダー教授が正式にアリスさんたちを、不正入学で理事会に告発したそうなのです! トーランド教授も不正にかかわったって!」
「ついにか……」
グレイスの言葉にわしは深くため息を吐く。
これまでは可能な限り穏便に解決しようと思って負ったが、相手がそれを望んでおらぬのでは、どうしようもない。
穏便に終わらせられぬならば、わしも覚悟を決めよう。
「よかろう。エリオットのところへ行ってくるのじゃ」
「え? な、何をしに……?」
「白黒はっきりつけるために、じゃ」
わしは困惑するグレイスにそう言うと、研究室を出た。
それから向かう先はエリオットの研究室じゃ。
「エリオット・アレクサンダー教授はおるかの?」
「あ、あなたは……。きょ、教授に御用ならどうぞ、中へ」
研究室をノックして出てきたのは、前にエリオットと話していたジェシカと言う学生じゃ。彼女は戸惑った様子を見せたが、すぐにエリオットの下に案内してくれた。
「おやおや。アリス・カニンガムではないか。私が正式に君たちペテン師姉弟を告発したことで泣きを入れに来たかね?」
エリオットは傲慢さを隠そうともせずにそう言った。
「ほう。未だにわしらをペテン師呼ばわりとはのう。相当、自信があるようじゃのう」
「当然だ。そちらこと異界魔術が使えるなどという見え見えのペテンが、いつまでも通じると思っていたのか?」
「なるほど、なるほどのう。では、そんなペテン師であるわしに名誉ある血統魔術師であるおぬしが負けるようなことはないじゃろうな?」
「……何が言いたい?」
わしがにやりと笑って告げるのにエリオットがこちらを睨むようにしてみる。
「わしとおぬし。どちらが優れた魔術師か、はっきりさせようではないか。わしはおぬしに決闘を申し出る」
わしがそう宣言するとエリオットの研究室にいた学生たちがざわめく。
「ほう。面白いことを言い出すじゃないか。確かにこの国では今も決闘は合法だ。しかし、伝統ある学び舎であるこのエルダーグローブ学院でそのような騒ぎを起こすなどということは……」
「ははあん。負けるのが怖いのじゃな? あれだけわしらのことをペテン師、ペテン師と言っておきながら、そのわしらに負けてけちょんけちょんにされて晒されるのが怖いのじゃろう?」
「くっ……!」
ここは思いっきり煽ることじゃ。煽りに煽って、エリオットをわしの誘いに乗せねばならぬからの。
「いいだろう。応じてやる。明日の正午にグラウンドだ」
「そうでなければの。楽しみにしておるぞ」
わしは小さく笑うとエリオットの研究室を出て、トーランド教授の研究室へと戻る。
「アリスさん。アレクサンダー教授に会ってきたんですか?」
「おう。その通りじゃ。決闘を申し込んできたぞ」
「け、け、け、け、決闘ーっ!?」
グレイスが思わず変な声で叫ぶ。
「どうしたんだ、グレイス?」
「アイザックさん! そ、その、アリスさんがアレクサンダー教授に対して決闘を申し込んだと……!」
「何だと」
アイザックは険しい表情を浮かべて、わしの方を見た。
「エリオットに乗せられたわけではないな、アリス?」
「いいや。違うよ、アイザック。わしが熟慮の末、決意して申し込んだものじゃ。白黒はっきりさせるためにのう。このままじゃと不正入学の汚名を着せられて退学になってしまう。何か手を打たねばならぬのだ」
「そうか……」
わしの言い分を聞いてアイザックは考え込んだ。
「であるならば、立会人は私が務めよう。アリス、一応確認するが、君はエリオットを殺す気はないな?」
「もちろんじゃ。そのつもりは毛頭ない。わしはあくまでわしが魔術について嘘をついていないと証明したいだけじゃ」
「分かった。ならば、エリオットについて知らせておこう」
アイザックはそう言って決闘することになるエリオットについて語り始めた。
「知っての通り、エリオットは応用魔術が専門だ。理論だけの魔術師ではない。魔術を実際に使うことにもある程度秀でている。特にあれが得意とするのは、私と同じで運動エネルギーの操作だ」
「前にパーティを襲撃してきた人間を弾き飛ばした、あれかの?」
「ああ。まさにそれだ。私は理論を扱う方が専門なので、エリオットの方は私のより優れていると思ってほしい」
「分かったのじゃ」
あの手の魔術は確かに初めて見た。純粋な運動エネルギーだけを
しかし、その魔術もネタが分かれば、対処のしようはある。さらにわしはこれまで無為に学院で過ごしていたわけではないのだ。
「ほ、本当にアレクサンダー教授と決闘をするのですか、アリスさん……?」
「そのつもりじゃよ、グレイス。わしとレオ坊の名誉にかかわるのでの」
「そうですか……。では、応援しますね! 必ず勝ってください!」
「おう。ありがとうな」
グレイスの言葉にわしはそう微笑んだ。
* * * *
「アリスちゃん! 聞いたよ。アレクサンダー教授と決闘するんだって?」
そう学生寮の食堂で声を上げるのは、マヤじゃ。ライリーも一緒におる。
「そうじゃよ。白黒はっきりさせようというわけでの。わしも場外の勝負を使われて、やられてばかりでは面白くない」
エリオットが自分の得意とする政治でわしらを倒そうと言うならば、わしらの得意とする魔術のステージにやつを引きずり下ろすだけじゃ。
「噂は本当だったのかー。しかし、学院で決闘が行われるなんて初めてじゃない?」
「そこら辺の歴史も知ってるのか、マヤ?」
「あたしは歴史オタクだからね。ライリーも歴史には敬意を払った方がいいよ。魔術史の講義、そろそろついていけなくなってるみたいだし」
「うるせえ」
マヤとライリーがそのようにからかい合う。
「けど、心配だよ。それにレオ君は知ってるの?」
「レオ坊にはまだ伝えておらぬの。レオ坊が知ったら、あやつが決闘はやるといいそうじゃからなぁ。決闘を選んだのはわしの決断によるもので、危険でもあるし、伝えてよいものか」
「伝えないと。大事な弟でしょ?」
「分かった。そうするよ、マヤ」
レオ坊に心配をかけまいと思い、レオ坊には知らせないつもりじゃったが、あとになって実はエリオットと決闘をしていたと告げるのはレオ坊を裏切ったと思われても仕方ないかもしれぬ。
「姉上」
そんなことを思っていたときに、まさにレオ坊が姿を見せた。なるべく一緒に行動するようにはしておるが、わしが女子寮に、レオ坊が男子寮に暮らしているとどうしても別れる時間は存在する。
「レオ坊。知らせておくべきことはあるのじゃ。聞いてくれるか?」
「ああ。何だろうか、姉上?」
「わしはエリオットと決闘をして、わしらがペテン師ではないと証明する。そのつもりじゃ。絶対にわしが勝つから、レオ坊は心配せずにいてくれ」
わしの言葉に一瞬レオ坊が唖然としたが、すぐに険しい表情でわしに迫った。
「そんないきなり……! 相談してくれてもよかったではないか! それにあのエリオットと決闘をするなら私がやったのに!」
「うむ。そうなるじゃろうから、言わなかったんじゃ。決闘は命の危険もある行為じゃからな。わしの思い付きでレオ坊を危険にはさらせぬ」
「だけど!」
「わしを信じてはくれぬか、レオ坊?」
わしはそうレオ坊に頼んだ。
「……分かった。姉上なら絶対に負けないと、そう信じているよ」
「ありがとう、レオ坊」
そして、わしとエリオットが決闘をする日が近づく。
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