古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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学生時代//チャンス

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 ──学生時代//チャンス

 

 

 アリスとエリオットの決闘が終わって数日後のこと。

 

 エルダーグローブ学院の理事長であるジャクソン・ウェストウッドは緊張した面持ちで、理事長室にて来客を迎えていた。

 

「それで、調査の結果は出たのですかな、ウェストウッド理事長?」

 

 彼が部屋に迎えていたのはウィンタースリー伯爵であり、大富豪のウィリアム・ドレイクとトーランド教授だ。

 

 ウィリアムはアイザックとリリーの父で、アイザックに似た顔立ちをしている。いや、ここはアイザックがウィリアムに似ているというべきか。彼はテーラーメイドのスーツに身を包み、僅かな笑みを浮かべながらウェストウッド理事長を見ていた。

 

「え、ええ。調査の結果、不正は確認できなかったということでして、はい……」

 

 貴族としての地位だけならばジャクソンはウィリアムより上だ。しかし、今は爵位があれば絶対的な権力者である時代ではなかった。

 

 大富豪として巨万の富を持ち、学院にも多額の寄付をするウィリアムにジャクソンは頭が上がらないのが現実だ。

 

「それは何よりです。そもそもトーランド教授の信頼が疑われたとも聞いておりますが、まさか魔術学の第一人者であり、学院への貢献も多大なトーランド教授が疑われたというのは事実ではありませんな?」

 

「も、もちろんです。我々はトーランド教授に絶大な信頼を置いております」

 

 ウェストウッド理事長は手のひら返しも激しく、ウィリアムにそう請け負った。

 

「それを聞いて安心しました。才能ある若者たちが偽りの告発で、その将来を断たれるなどあってはなりませんからな。これからは彼らを疎外するのではなく、彼らの才能を育てるようにしてください」

 

「ええ、ええ。もちろんそのつもりです」

 

 ウィリアムは笑みを浮かべたままに鋭く告げ、ウェストウッド理事長はただただウィリアムのいうことを肯定し続けていた。

 

「ところで、今回偽りの告発を行ったエリオット・アレクサンダー教授はどのように扱われるのでしょうか? 彼が起こした虚偽の告発のせいで、学院の信頼が損なわれるような事態になりましたが」

 

「当然、解雇となります。彼は学院の信頼を損なう行為をしたのですから」

 

「いやはや。彼が今回のような過ちを犯さなければよかったのにと思いますよ。アレクサンダー教授も才能にあふれる魔術師でしたからね。そのような才能が失われてしまうのは、本当に残念ですよ」

 

「は、はい」

 

 ウェストウッド理事長は自分を守るためならばと、エリオットを切る方を選んだ。そもそもエリオットの傲慢な告発こそが、今回の事件の発端なのだからと自分に言い聞かせている。

 

「それでは失礼を」

 

 それからウィリアムとトーランド教授は理事長室を出る。

 

「トーランド教授。うちの息子と娘は研究に励んでおりますかな?」

 

「ええ。アイザックとリリーはともによき研究者ですよ」

 

「それを聞けて何より。今回の件もアイザックがわざわざ手紙で知らせたことですからな。あれが私に頼ってくるのは珍しいと言うのに」

 

 ウィリアムを動かしたのは、他でもないアイザックだった。彼は優秀なふたりの魔術師が、その前途をくだらぬ政治で潰されようとしていると父であるウィリアムに知らせ、ウィリアムの助力を乞うたのである。

 

「私からも今回の件では感謝を。守られたのは本当に優秀な魔術師たちなのです」

 

「いえいえ。教授が頭を下げられる必要はないですよ。アイザックに頼まれたとしても、私が私の意志で決めたことですから」

 

 ウィリアムはそう言って少し遠い目をした。

 

「私は血統魔術師でありながら魔術の才能はなかった。幼少期から魔術を教え込まれたにかかわらず、何ひとつとして成せなかった。一時は才能あるものを妬みもしたが、私が魔術以外の分野で成功すると余裕が生まれた」

 

 ウィリアム自身は血統魔術師であるが、魔術師としてこれと言った業績はない。彼の業績のほとんどは、ビジネスで成し遂げたことであり、そちらでは大きな成功を成し遂げている。

 

「才能あるものはその才能を伸ばすべきだ。それは万人のためになる。だから、私は私の才能で得た財産を、他の才能あるものに注いでいる」

 

「素晴らしい心がけです。そのおかげで今回も才能あるものが、その才能を生かせずに終わることがなくなりました」

 

「そう言ってくれると嬉しいよ。可能であるならばアレクサンダー教授にもチャンスを与えたかったが……」

 

 トーランド教授の言葉にウィリアムはそう悔やむように呟いたのだった。

 

 

 * * * *

 

 

 わしは無事にエリオットとの決闘に勝利した。

 

 わしのことは学院で一躍有名になったらしく、わしの顔を見ようと他の学部からも学生が来るような状況じゃ。なんだか見世物になってしまったようで落ち着かぬのう……。

 

「アリスちゃん。アレクサンダー教授が意識を取り戻したってさ」

 

「おお。そうか。よかった、よかった」

 

 食堂で昼食を食べていたときに、マヤがそう知らせてくれた。

 

 わしとの決闘のあとでエリオットは暫し意識を失ったままになっており、わしはやりすぎてしまったのではと心配になっていたのじゃ。

 

 一度は揉めた相手とは言え、命まで奪うつもりはなかったからの。意識を取り戻して、元気になってくれればよいのじゃが。

 

「しかし、アレクサンダー教授は首になりそうだって話だぜ。虚偽の告発を行って、学院の信頼を貶めたからだと」

 

「むう。そこまでする必要はないと思うのじゃがな……」

 

「あんたは優しすぎだろ、アリス。あんたとレオのことを散々ペテン師、ペテン師って言って回ったやつだぞ?」

 

「それでもじゃ」

 

 エリオットの運動エネルギーを操る魔術は素晴らしいものじゃった。あれを発展させればもっといろいろなことが可能になるじゃろう。

 

 だから、どうにかして和解できればよいなと思っておったのじゃが……。

 

「エリオットは今も病院に入院しておるのかの?」

 

「さあ? そこら辺の詳しいことはちょっと。違う研究室だし」

 

「そうか。あとでトーランド教授に聞いてみよう」

 

「お見舞いにでも行くの?」

 

「そのつもりじゃ。このままでは結局、非血統魔術師と血統魔術師の無意味な対立は終わらぬからのう」

 

 わしは古代帝国時代にも平和を重んじておった。

 

 そして、平和とは武具と流血だけでは得られぬもの。そこには言葉を加えねば。人間は言葉を交わすことで互いを理解し、そこで争いを止めることを選ぶのじゃ。

 

 今回は手がなかった故に決闘などと言う手段を選んでしまったが、できればエリオットとも言葉を交わして理解をし合いたいと思う。

 

 今からでもそれは遅くなかろう。

 

「姉上」

 

 そこでレオ坊がやってきた。

 

「エリオットが私のところに来た。私たちに話があると言っている。どうする?」

 

「ふむ。退院しておったのか」

 

「断るか? 何か因縁を付けられる可能性も……」

 

 レオ坊は心配そうにそう尋ねる。

 

「いや。話をしよう。わしとしてもエリオットには話があるからの」

 

「分かった。あいつは寮の面会室で待っている。行こう」

 

 レオ坊はエリオットが負けたことを認めず、逆上してわしに襲い掛かると思ったのじゃろう。先導するレオ坊の表情には警戒の色が濃くあった。

 

 そして、わしらは面会室へと入る。

 

「アリス・カニンガム、レオ・カニンガム」

 

 エリオットはレオ坊の言葉通り面会室で待っておった。頭にはまだ包帯を巻いており、何とも痛々しい姿じゃ。

 

「話があると聞いたが」

 

「まずは謝罪しよう。君たちについて私が間違った理解をしていた。すまない」

 

 そう言ってエリオットは立ち上がって頭を下げた。

 

「アリス。君の魔術は確かに一般魔術では説明のつかないものだった。あれこそ異界魔術だったのだろう。私はこの身でそれを思い知った。君は異界魔術を使うことができる人間なのだと」

 

「分かってくれたかの。こちらこそ手荒な真似をしてすまなかったのじゃ」

 

「謝ることはない。これは君たちの言い分を頑なに認めず、君たちを退学まで追い込もうとした私が悪いのだから」

 

 エリオットは以前とは別人のように物分かりがよくなっておった。

 

「私は今回の件で解雇されるだろう。そのことから助けてもらうために、君たちに謝罪しているわけではない。君たちが異界魔術を、その才能を伸ばせることを、今は私も願っていると伝えたかっただけだ」

 

「どうにかして学園には残れぬのか?」

 

「今さら無理だろう。それに君たちには迷惑をかけた。その罰は受けねば」

 

「そうか……。残念じゃのう……」

 

 わしは本当にエリオットが辞めてしまうのは勿体ないと思っておる。

 

「改めてすまなかった。では、君たちが未来に羽ばたけることを祈る」

 

 エリオットがそう言って立ち上がろうとしたときじゃ。

 

「きゃああああ────っ!」

 

 悲鳴が学園のあちこちから響いてきた。

 

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