古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──魔女//“倦怠”のヴァルザリア
あるところにひとりの美しい少女がいました。
少女は両親を幼くしてなくし、酷く貧しい生活を送っていました。あまりに幼く働くこともできない彼女は目の見えない振りをして、乞食をしていたのです。
ある日、少女は酷く醜く、豚のように肥えた男に求婚されます。男は少女が盲目で、自分の醜い顔が見えないと思ったのでしょう。
しかし、少女が男の求婚を断ると、男は少女の眼が見えていることに気づき激怒しました。男はXXで少女の眼をXXXし、XXXてしまい、少女は本当に目が見えなくなってしまいました。
「ああ、ああ。神様、私の眼を返して」
少女がそう神様に祈ると、とても優しい神様は少女に瞳を与えました。
次はXXXれてもいいように、2つだけでなく、たくさんの瞳を。
* * * *
「みぃーつけた」
ヴァルザリアはそう呟く。
彼女は現在、エルダーグローブ学院の全体を掌握していた。
無数の異界魔術で生み出したカラス──正確にはカラスに似ていながらもカラスではない存在──たちが学院上空を飛行し、そのカラスたちの見ている映像を、ヴァルザリアは把握していたのだ。
ヴァルザリア自身は学院の上空が確実に視界に収まる時計塔の上に陣取っており、そこからカラスたちを展開させている。
彼女には彼女が異界魔術で展開させた200羽以上のカラスから共有される映像全てがリアルタイムで把握できていた。
「オルテシア。見つけたよ。目標はふたりとも学生寮の方にいる」
『了解。対処する』
ヴァルザリアは左手に止まらせたカラスにそう言い、そのカラスの口からオルテシアの声が聞こえた。
「ふふふ。いつまでそこに隠れていられるかな? やがて食料が尽きて、水もなくなり、恐怖から混乱が生じる。そうなればお終い。だけど、あたしの方は何時間でも、何年でも、ずっとそこを狙っていられる」
軍事的な側面において狙撃手が面倒なのは、その確実な殺傷能力に加えて、その姿が隠匿されていることで索敵と撃破が困難であること。そして、自分たちが狙われていることへの恐怖が生まれることだ。
適切な場所に狙撃手を1名配置するだけで、1個大隊1000名もの兵士が足止めされてしまうようなこともある。
今のヴァルザリアはまさにそのような状態であった。
彼女ひとりが学院を見張るだけで、学院の全てがマヒしてしまっている。
この状況は既に学院の外でも把握されており、学院の電話線が切断される直前に辛うじて警察に襲撃を通報することができていた。
ただやってきた警官たちは学院の中に一歩も踏み込めていない。
ヴァルザリアの狙撃によって侵入が阻止されていることに加えて、オルテシアが動いていたからだ。
「これは何なんだ!?」
学院のあらゆる入り口には現在、鋼鉄の人型が剣を手に展開していた。
ゴーレムだ。意志を持った鋼の人形であるゴーレムが、鋼鉄の剣を手にし、侵入を試みる警官たちを切り捨てていた。ゴーレムは警官が装備する銃も通用せず、学院の中の人間を救助するという試みは失敗を続けていた。
そのようにオルテシアがゴーレムによる学院封鎖を実行していたため、学院は未だ陸の孤島のような状態にあった。
「じっくり、ゆっくりと待って、確実に仕留めよーっと。恐怖に震える連中を眺めるのは最高だねー」
ヴァルザリアはそう言ってゆっくりと革の眼帯を取る。
そこにはまるで昆虫の複眼のようにいくつもの眼球がひしめき合いながら、ぎょろぎょろと蠢いていた。まさにこの世のものとは思えないほどグロテスクなものであった。
「さあ、この“倦怠”のヴァルザリアが殺してあげるよ、アリス・カニンガム、レオ・カニンガム」
* * * *
厄介なことになったのう。
狙撃手と言うのは実に面倒な相手じゃ。古代帝国時代も弓の名手というのは、味方であれば頼もしく、敵であれば恐ろしかった。
今回はその弓の名手すら上回る相手じゃ。
異界魔術で
どこからどう狙われる分からないのに対処のしようもなく、わしらは学生寮の中に閉じ込められてしまっていた。
「大変。ライリーの様子が……!」
そこでマヤが声を上げる。
ライリーの顔が死人のように青ざめておる。出血は今もじわじわと続いていることが原因であろう。ゆっくりとライリーは危険な状態に近づきつつある。
「クソ。ここにあるものだけで完全に止血するのは無理だ。それにもう血を失いすぎている……!」
医学部の学生と居合わせた教員がライリーの手当てをしているが芳しくない。
「早く病院に連れていかなければライリーは……!」
「しかし、この状況では動けないのじゃ……」
レオ坊が焦るがわしはそう指摘する
狙撃手は今も異界のカラスを上空に展開させている。そのカラスに捕捉されれば、あの赤い光線がたちまち飛んできて狙撃されてしまう。
せめてあの赤い光線の正体さえ分かれば、確実に打ち消すこともできるのじゃが、あんなものは見たことがない。
「け、警察は来てくれないのか!?」
「どうなっているんだよ……!」
学生寮の学生たちの中にも混乱と恐怖がゆっくりと広まりつつあった。
「むう。不味いのじゃ。このままだとパニックになる……」
古代帝国時代には従軍を経験し、精神的に鍛えられているわしですら不安を抱いているのじゃ。普通の学生たちが不安を抱くのは当然じゃろう。
「レオ坊、マヤ。わしらでどうにかするぞ。この場で魔術が使えるのはわしらだけじゃからな」
「ああ、姉上。私たちで状況を切り開こう」
わしはレオ坊とマヤに声をかけ、状況の打開を目指すことに。
「待ちたまえ。魔術が使える人間はここにもいる」
そこで声を上げたのは──エリオットじゃ!
「しかし、エリオット。おぬしは負傷しておる。無理はするでない」
「この程度、大したことはない。私も作戦に加えてくれ」
エリオットはそう強く求めてくる。
「分かった。人数は多い方がいいからの。頼むぞ」
「ああ」
こうしてエリオットも状況を打破するために加わった。
「まず状況を整理するぞ。敵は狙撃手じゃ。そして、その位置は分かっていない」
敵は狙撃手。
「次に敵は
「それから敵の攻撃手段は赤い光線じゃが、その正体は不明で防ぐ方法も分からぬ」
敵の攻撃手段は不明。
「以上のことを踏まえてまずは敵の位置について考える。魔術が有視界圏内でしか発動できないのは
学院の上空を制するためには、学院でもっとも高い建物に登り、そこから見下ろさなければ
「そうなると敵がいるのは時計塔だな。学院の中心部にあり、もっとも高い建物だ」
「あたし、地図を持ってくるね!」
エリオットはそう言い、マヤが学生寮内にあった学院の地図を持ってくる。
「時計塔はここだ。学生寮からはかなり距離がある」
「ううむ。敵の狙撃を潜り抜けて、ここまで行くのは不可能に近いやもしれぬ……」
時計塔は学園の中心部じゃが、学生寮は南東の隅にある。かなりの距離を移動しなければ時計塔にはたどり着けぬ。
「建物中を経由しながら移動すれば、あるいは」
レオ坊は学生寮から建物内を経由して、時計塔まで向かうルートを調べる。
「不可能ではないかもしれぬが、ここはふたつの作戦を同時に進行させようと思うのじゃ。聞いてくれるか?」
わしはそう言って皆を見渡した。
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