古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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魔女//時計塔

……………………

 

 ──魔女//時計塔

 

 

 わしらは作戦を決定し、行動を開始。

 

「では、行ってくる、姉上」

 

「気をつけてな」

 

 レオ坊とエリオットはこれから建物内を経由して時計塔に向かう。

 

 マヤは万が一のために学生寮に残り、わしはレオ坊たちを後方から援護する。

 

「では、作戦開始じゃあ!」

 

 わしは学生寮の屋上に登り、敵が狙撃を行う前に異界魔術で異界の霧を発生させる。視界を通さない濃い霧が辺り一面に立ち込め、わしの姿も隠してしまう。

 

 これで敵の視界は通らなくなった。狙撃は不可能じゃ。とりあえず今は……。

 

「行くぞ、アレクサンダー教授」

 

「ああ」

 

 それからレオ坊とエリオットの声が聞こえた。

 

 彼が学生寮が出て、最寄りの建物に向かって駆ける。わしにはその様子が見えておらぬから、想像するしかない。

 

「レオ坊、エリオット。何とが辿り着くのじゃぞ……!」

 

 わしは援護のために霧を発生させ続け、狙撃を不可能にする。

 

 

 * * * *

 

 

 アリスが大規模な霧を発生させたのを、ヴァルザリアは時計塔から確認していた。

 

「ほう。面白いことをするねー? 流石はノクシアが脅威に感じただけはある、か」

 

 ヴァルザリアはそう呟き、カラスを霧の中に突入させるが、霧の中の視界は1メートルもなく、全く敵の姿は見えず。そして、視界から消えたカラスは表面構造(テクスチャ)の復元が働き消滅。

 

「ふうむ。相手の魔術が切れるのを待つしかないかな。あるいは……」

 

 霧がある以上、ヴァルザリアは相手を狙撃できない。ただ、相手も魔術によって永遠に表面構造(テクスチャ)を書き換え続けられない以上、表面構造(テクスチャ)が復元し、魔術が切れればまた狙撃可能となる。

 

 それまでに敵がヴァルザリアがいる時計塔に到達できなければ、ヴァルザリアは霧を発生させているアリスを狙撃して仕留めらられる。

 

 さすればヴァルザリアの勝ちだ。

 

 そこでヴァルザリアは前にオルテシアと連絡したカラスを呼ぶ。

 

「オルテシア。敵が動いた。こちらに向かっている。迎え撃てる?」

 

『余力はある。それに学生寮にはこちらもゴーレムを向かわせていた』

 

「オーケー。相手は建物を経由して時計塔に向かっていると思う。頼んだよー」

 

『ああ。任せろ』

 

 ここでオルテシアが動き始めた。

 

 

 * * * *

 

 

 レオとエリオットは学生寮のもっとも近かった建物に飛び込んだ。

 

「よし。狙撃は受けなかった。姉上の妨害は上手くいっている」

 

 レオはそう安堵の息を漏らす。

 

「油断はするな。まだ敵の手札が全て明らかになったわけではない」

 

「分かっている。敵が本当に狙撃手だけとは限らない、と」

 

 今のところ、攻撃は狙撃のみだが狙撃手が別の攻撃手段を持っている可能性も、また伏兵がいる可能性も十分にあった。

 

 事前に偵察が行えればよかったのだろうが、そのような余力は存在しなかった。

 

「しかし、酷い被害だ……」

 

 建物内には逃げてきた学生と教員たちが大勢いた。狙撃を受けたことで負傷している人間がほとんどで、中には既に息を引き取っている人間もいた。

 

「急ごう、教授。これ以上、被害が拡大する前に」

 

「ああ。何としても時計塔へ」

 

 レオとエリオットはこれ以上犠牲者を出すまいと決意して進む。

 

 未だアリスの発生させた霧は学生寮の屋上から見える範囲の学院の敷地を覆っていたが、これがいつまで持つかは分からない。魔術による表面構造(テクスチャ)への上書きはいずれ復元力によって打ち消される。

 

「レオ。君も異界魔術が使えるのは確かなのだな?」

 

「まだ疑っているのか、教授?」

 

「そういうわけでは。ただ今は学者としてそれを見てみたいだけだ」

 

「戦いになれば見せることになるだろう」

 

 エリオットは純粋な興味を示すのにレオは肩をすくめてそう返した。

 

「そのときは近いようだぞ。気を付けろ」

 

 エリオットがそう警告を発するのは彼の耳に金属音が聞こえてきたからだ。鎧を着た人間が動くような金属音が急速にエリオットとレオがいる場所に近づいてくる。

 

「そのようだ……!」

 

 レオたちが建物の広いエントランスホールに出たとき、外に続く扉を破って金属音を立てていた存在が乱入してきた。

 

 それは全身にプレートアーマーを纏った騎士のような姿をした物──つまり、これまでオルテシアによって生み出され、学院を封鎖していたゴーレムだ。

 

 その数は4体で全てがクレイモアのような巨大な両手剣で武装している。

 

「教授。私の魔術を披露しよう。そちらも頼むぞ」

 

「ああ」

 

 レオはエリオットにそう言って構えた。

 

「“鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)”」

 

 次の瞬間、エリオットは青白く光る無数の刃を、異界から表面構造(テクスチャ)を書き換えることで出現させた。

 

「それが君の異界魔術か。なるほど興味深い」

 

「分析はあとにしてほしい、教授。まずはあれを倒して時計塔へ!」

 

「ああ。分かっている!」

 

 レオは生み出した刃を自在に操り、1体のゴーレムに向けて放つ。

 

 ゴーレムは巨大な剣を振るってレオの放った刃を迎え撃ち、4体のうち攻撃を受けていない2体がレオを脅威と認識したのか、突撃を開始した。

 

「やらはせん!」

 

 しかし、レオに迫ったゴーレムはエリオットが生み出した運動エネルギーによって殴られるようにして弾き飛ばされ、激しい金属音を立てて地面に転がる。

 

 それでもゴーレムは立ち上がり、レオを目指した。

 

 しかし、その動きの不自然さにレオはすぐに気づいた。動きが鈍く、まるで操り人形を目隠しして動かしているようなのだ。

 

「教授。この動きは近くに術者はいないと見ていいだろう。どういうカラクリを使っているかは分からないが、これらは遠隔操作されており、目的はただの足止めだな。霧が晴れるまでの時間稼ぎだ」

 

「その狙いに乗っていやる必要はない。ここは私に任せて進め、レオ!」

 

「分かった。任せます、教授」

 

 レオは素早い身のこなしでゴーレムたちの脇をすり抜けて突破し、それを攻撃しようとしたゴーレムはエリオットの攻撃を受けて弾かれた。

 

「さあ、ブリキの人形諸君。五大血統魔術師たるレイヴンシャー伯爵家が、ただの案山子ではないと教えてやろう」

 

 エリオットはそう不敵に笑うと運動エネルギーを四方八方からゴーレムに向けて叩き込む。強力なそのエネルギーはゴーレムを袋叩きにしたかのように、その装甲をぼこぼことへこませていく。

 

「スクラップになるといい!」

 

 エリオットはまずは1体のゴーレムを叩きのめした。

 

 

 * * * *

 

 

 わしは学生寮の屋上で、可能な限り狙撃手から視界を奪うための霧を維持しようとしたが、限界が近づいておった。

 

 表面構造(テクスチャ)の発生させる復元力は時間が経つごとに強力になり、強引に霧が晴らされていってしまう。

 

 敵の使い魔(ファミリア)と違って広域に展開しているわしの魔術は長くは持たない。その前にレオ坊とエリオットが時計塔に到達してくれればよいのじゃが……。

 

 じゃが、わしの望むようにはいかなんだ。

 

 表面構造(テクスチャ)の強力な復元力がわしの魔術による上書きを修正し始め、わしが展開させていた霧がほころび始める。表面構造(テクスチャ)は無情にもわしの方から魔術を消し始めたのじゃ。

 

 そして、霧が晴れ始めたとき、まだ上空には異界のカラスたちが存在しておった。

 

 つまり、レオ坊たちは時計塔に到達できておらぬというわけじゃ!

 

「不味いのう……!」

 

 群れたカラスの中の1羽の視線がわしの方を向いたと思った次の瞬間──。

 

 

 宙に不意に発生した赤い光線がわしの胸を貫いていった──!

 

 

……………………

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