古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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子供時代//元偉大なる魔術師、首都に行く

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 ──子供時代//元偉大なる魔術師、首都に行く

 

 

 転生から12年後のことじゃ。

 

「い、一向に大きくならぬ……」

 

 わしは相変わらずちんまかった。

 

 身長は110センチ程度で、顔立ちも幼女のままじゃぁ……。

 

 原因は何か考えたのじゃが、いくつか仮説がある。

 

 仮説①はわしの前世が影響しておるではないかというものだ。わしは前世に様々な魔術を行使し、その影響を受けてきた。異界魔術などはこの世界とは別に異界の影響を受けるため、もしかするとその影響が今世で現れたのやもしれぬ。

 

 そうなると打つ手はない。わしは恐らく恐ろしく成長が鈍いか、このまま永遠に幼女として生きていくことになるじゃろう……。

 

 仮説②は母上の血が濃いという可能性じゃ。母上は小柄なので、わしも成長が遅いのかもしれぬ。レオ坊は普通に育っておるが、レオ坊は父上似じゃからの。

 

 これならばちゃんと食べて、飲んで、運動すれば成長できる見込みはある。

 

 仮説③はこれは神罰であるという可能性で一番考えたくない可能性だ。わしは何かやらかして神を怒らせてしまい、神は罰としてわしの魂をこの幼女の肉体に封じ込めてしまったのやもしれぬ。

 

 神は慈悲深くもあるが、ときとして冷酷でもある。じゃが、わしは神の機嫌を害するような行いをした覚えはない。どうかこれではないようにと祈るばかりじゃ。

 

「姉上ー!」

 

「レオ坊。今日も元気じゃのう」

 

 レオ坊は健やかに育ち、すっかり大きくなった。もう140センチほどは身長もあり、わしは見上げなければならないほどだ。本当に大きくなったのう。

 

 恐れていた魔術を幼いころから使った影響なども見られず、わしは安心しておる。

 

「姉上。今日は父上と一緒に出掛けるんですよね?」

 

「そうじゃったの。準備はできておるのか?」

 

「できてます!」

 

 今日は父上が街に用事があるそうなので一緒に出掛けることになっている。街と言ってもこの近くにあるもののことではない。

 

 そう、首都に向かうのじゃ。

 

 この国──アルビオン連合王国──の、その首都ロンディニウム。

 

 そこは大変栄えているらしく、わしとしてはこの時代を生きる人々がどのような繁栄を築いたのかを知る機会なので、ずっと楽しみにしておった。

 

「アリス、レオ。準備はできているかい?」

 

 わしとレオが持っていくものをカバンに詰め込み終えたとき、父上がわしらのいる子供部屋に姿を見せた。

 

「万端じゃ、父上」

 

「では、出かけようか」

 

 そして、わしらは首都に向けて出発した。

 

 この時代には鉄道というものがあって、わしらはそれに乗って首都を目指すそうなのじゃが、わしはまだ鉄道というものをこの目で見たことがない。

 

 しかし、地図を見る限り、とても離れているこのわしらが暮らすオールデンウィック子爵領から首都までを一日とかからず移動できるのだから、相当に高速な交通手段なのであろう。

 

 時間のかかる長旅は疲れるからのう。わしも古代帝国時代には東西南北と駆け巡ったものじゃが、街道がしっかりと整備された古代帝国であっても、長旅は山賊や野生動物の危険にさらされ、ひたすらな移動に疲れと危険が多かった。

 

 しかし、時代が進んだ今はそのようなリスクも減ったのじゃろう。そうでなければ父上が子供を連れていくとは思えん。

 

 わしらは馬車で鉄道に乗り込むための施設である駅に向かった。

 

 そして、わしはそこで鉄道を目にした。

 

「こ、これが鉄道……!」

 

 す、凄いのじゃ! 長くヘビのように伸びた鋼鉄の乗り物! その一番先頭の車両がもうもうと煙を噴き上げて、駅に長い車両の列を導いてきたのじゃ! ど、どれほどのパワーがあるのじゃろうか!?

 

「ち、父上! これはどういう仕組みで動いておるのじゃ!?」

 

「蒸気機関と言ってね。炎で水を沸騰させ、そうして生じた蒸気を使っているんだよ」

 

「蒸気で……」

 

 確かに水を温めると沸騰し、熱い水分を帯びた空気が生じることは知っておった。しかし、それを動力にするとは考えもつかなかったぞ!

 

「そうか……。だから、この世界は魔術を必要としなくなったのか……」

 

 わしは魔術がなければ人々は幸せに暮らせぬと思っていた。だが、思い上がりじゃったようだ。魔術の代わりに発展した科学は、人々が魔術なしでも豊かに暮らせる世界を作っておったのじゃ。

 

 いや。むしろ魔術が一度途絶えたから、科学が発達したのやもしれぬ。魔術があれば今も魔術を基本にした世界のままじゃったろう。

 

 その世界ではこのような鉄道という発明は生まれなかったかもしれぬな……。

 

「さあ、乗るよ。おいで、アリス」

 

「分かったのじゃ」

 

 わしは父上とレオ坊と一緒に鉄道に乗り込む。

 

 乗ってからも驚きの連続であった。

 

 凄い速度で景色が流れていくのは経験したことのないものじゃった。それにそれなりに速度が出ておるのに、鉄道はあまり揺れもせず、乗っていて疲れることもない。

 

 この発明は素晴らしい!

 

 鉄道によって人々は旅をすることを楽しみにできるじゃろう。そうやって世界を旅して見聞を広げれば、人々の中には新しい発想も浮かぶじゃろう。そうすれば世界はさらに発展していくのだ。

 

 それに統治も行き渡る。古代においては王は統治のために国を旅しなければならなかった。もし地方に総督などを置き、そのものに軍隊を任せれば、そのものに野心があった場合、反乱が起きてしまうのでな。

 

 古代帝国も皇帝は統治のために国内を巡って回ったものだ。わしも何度もお供した経験があるので知っておる。

 

 その君主の移動がこのような鉄道で高速化され、延長されれば、国は広く、そして長く栄えることであろう! 王の統治が安定すれば民も安定して暮らせるようになり、まさに幸せに直結するのじゃ。

 

「父上。この機関車の蒸気機関は何を燃料にしておるのかの?」

 

「それは木炭だったかな?」

 

「木炭……」

 

 ああ。しかし、これも産業革命という現象のひとつじゃったか。木炭を作るために木々が大量に伐採され、そして精霊は姿を消したのだった。

 

 鉄道は便利じゃが、その分わしらは対価も支払っておるわけか……。

 

 それからわしとレオ坊は窓に見える光景にわいわいと騒ぎ、いつしか目的地の首都ロンディニウムの駅に鉄道は到着した。

 

「さあ、降りるよ」

 

 父上がそう言い、わしらは鉄道を降りて、ロンディニウムの駅に降り立った。

 

「な、何という発展具合じゃあ……!?」

 

 なんと凄い人口密度なのじゃ! それに建物も密集しておる!

 

 古代帝国時代の帝都も栄えておったが、これほどまでではなかった。単純に人口と経済規模が桁違いなのじゃろう。都市の活気と情熱というものが、肌を伝って直に感じられるほどである。

 

 わしは思わずぽかんと目の前の広がるロンディニウムの光景を眺めていた。

 

「どうしたんだい、アリス?」

 

「い、いや。びっくりしたのじゃ。ここまでの繁栄具合とは思わず……」

 

「ああ。アリスはレオと同じでロンディニウムは初めてだったね。あとで観光の時間を作るから、まずは父さんの用事を片付けさせておくれ」

 

「わ、分かったのじゃ」

 

 しかし、この発展具合を見るとますます魔術に対する科学の優位性が見せつけられているようで、気落ちすらしてしまう。

 

 わしは魔術を再興させると誓ったが、本当にこの時代の人々はそれを必要としておるのじゃろうか? 魔術など見向きもされないのではなかろうか?

 

「のわっ!」

 

 そこでわしは誰かにぶつかられてよろめく。

 

「わ! ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか?」

 

 そういうのは若い女性で、何やら大荷物を抱えておる。

 

「だ、大丈夫じゃ。ほれ、落としたぞ」

 

 女性がぶつかった拍子に落とした荷物をわしは指を鳴らし、魔術で持ち上げて女性の手の中へと戻す。これぐらいは朝飯前じゃ。家でもよくやっておる。

 

「ええっ!? こ、こ、これは魔術!?」

 

「そ、そうじゃが……」

 

 女性がびっくりして大声を上げるのにわしもびっくりじゃ!

 

「あなた、魔術が使えるんですね! ああ、凄い!」

 

 わしが女性の持っている荷物をよく見ると、そこには魔法陣や『魔術』という単語の書籍が見える。もしや、こやつ……!?

 

「おぬし、魔術師か!?」

 

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