古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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魔女//“憤怒”のノクシア

……………………

 

 ──魔女//“憤怒”のノクシア

 

 

 あるところにひとりの陰気な少女がいました。

 

 再婚した母の連れ子であった少女は、両親とふたりの間にできた子供たちから疎まれていました。食事は与えられず、住む場所は汚い物置小屋の中でした。

 

 ある日、家族がサーカスを見に行くことになりましたが、少女は連れていってもらえませんでした。

 

 少女は願いました。

 

「ああ、ああ。神様、私も楽しいサーカスが見てみたいです」

 

 優しい神様は少女の願いを叶えてあげ、少女にいつでもサーカスが見れるようにしてあげました。

 

 

 最初に少女が見たサーカスは家族がお互いを殺し合う素敵なものでした。

 

 

 * * * *

 

 

「おお。レオ坊、エリオット。無事であったか!」

 

 わしは時計塔の傍でレオ坊とエリオットを見つけた。

 

 しかし、様子がおかしい。エリオットはこちらを敵意ある視線で見ておる。

 

「姉上! よけろ!」

 

 レオ坊が叫んだ次の瞬間、強力な運動エネルギーがわしの方に向かってきたのを、わしは認識した。エリオットの攻撃じゃと!?

 

「何をしておる、エリオット!?」

 

 わしは迫る運動エネルギーを相殺して、回避行動を取った。しかし、すぐに運動エネルギーは別の方向から飛んできてわしは相殺を回避に追われた。

 

「教授! あれは姉上だ! 攻撃を止めろ!」

 

「何を言っている、レオ! あれはどう見ても……!」

 

 そこでエリオットがレオ坊の方を見て目を見開いた。

 

「レオ! 君の後ろにも敵だ!」

 

「なっ……!」

 

 レオ坊が振り返ると確かにそこにはゴーレムがいた。長剣をレオ坊の方に振り下ろそうとしているゴーレムだ。

 

 しかし、あれはわしから見てもいきなり現れておる。どうなっておるのだ……!?

 

「そんな! どこから!?」

 

 レオ坊は驚愕しながらも“鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)”を呼び出し、青白い刃で敵を攻撃する。“鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)”はゴーレムを易々と貫き、ゴーレムは金属を響かせて倒れる。

 

 だが、妙な感じがあった。どこかゴーレムの動きと音が微妙にずれておるような、そんな感触である。

 

 そう考えてわしは周囲を見渡す。正確には魂の瞳で周囲の表面構造(テクスチャ)の様子を確認した。

 

「書き換えられおる……! どういう書き換えかは正確には分からぬが、術者は近くにいる……!」

 

 そして、わしはこの場で最大の解決手段になる方法に踏み切ろうとした。

 

「どうなっている! いつの間に敵に囲まれたんだ!?」

 

 しかし、エリオットはわしを再び攻撃してきて、わしは対応に追われる。決闘のときと違ってエリオットの魔術の威力は命中すれば、命すら奪われるものじゃ。

 

「レオ坊! エリオットを止めるのじゃ! そうすればわしがどうにかする!」

 

「分かった、姉上!」

 

 ここはもうやむを得ない。早くエリオットを止めねば、わしはこの状況を打破することはできぬのじゃ。

 

 それにレオ坊の“鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)”は非殺傷魔術。エリオットを殺すことなく無力化することができる。

 

「教授! すまない!」

 

 レオ坊がそう言って“鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)”の刃をエリオットの手足に向けて放った。

 

「ぐああああっ!」

 

 エリオットは激痛に襲われ、地面に倒れる。“鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)”は人を殺傷することはないが、強烈な痛みは与える。

 

「エリオット、すまぬな! だが、今の状況を解決するためじゃあ!」

 

 それからわしはある魔術を発動した。

 

 それは異界魔術のそれであり、効果はシンプルなもの。

 

 それは一度魔術を完全にかき消してしまうというものじゃ。効果範囲は狭く、作用時間もとても短い。魔術を無力化するというのは表面構造(テクスチャ)の強烈な復元力の発動を招くのじゃ。

 

 じゃが、この場ではそれはとても強力じゃった。

 

「……アリス、どうして……?」

 

 地面に倒れるエリオットはそう呟き、目を見開いてわしの方を見る。

 

「やはり幻覚じゃったか。全員が踊らされておったようじゃ」

 

 ゴーレムは全て幻覚であった。それらは一瞬だが完全に姿を消し、何もない本来の学院の風景が広がった。

 

「幻覚……!」

 

「そう、恐らくはそこの人間によってな」

 

 わしが睨む先にいたのは、エリオットの研究室に所属する学生。

 

 そう、ジェシカと言った学生だ。

 

「馬鹿な。何故ジェシカがこのようなことを……」

 

 エリオットが痛みから立ち直って立ち上がる中で、ジェシカはため息を吐いた。

 

「まさかバレてしまうとは思いませんでしたよ。お見事です」

 

 それから嘲るような笑みを浮かべてわしらにゆっくりと拍手を送るジェシカ。

 

「お前、何者じゃ。この学院をどうして襲撃した?」

 

「答えなければ?」

 

「力尽くでも聞き出す」

 

 わしはジェシカに魔術の狙いを定め、レオ坊も“鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)”の刃をジェシカに対して向けた。

 

「では、お教えしましょう。私たちは魔女学会の魔女。その目的は魔術を相応しい人間の手に留めることであり、魔術が不用意に広まることを防ぐこと」

 

「相応しい人間の手に……?」

 

 理解できぬジェシカの言葉にわしは眉を歪める。

 

「そう。今の世界の人間の多くに魔術は相応しくない。魔術をあたかも俗な科学のように扱い、片手間で習得できるとうそぶき、さらにそこから神秘を奪い取っている。そのようなことは許せないのですよ」

 

 ジェシカはそう語る。

 

「魔術を追及するならば、その身を捧げるべき。これは神から与えられた至高なる力なのですから。あなた方のように自身を犠牲にせずして、それを手に入れているなど許しがたいことです」

 

 ジェシカそう言ってわしとレオ坊を見る。

 

「なるほどのう。さっきの幻覚は異界魔術のそれじゃろう。おぬしらは異界魔術をわしらが使い始めたから、それを許せず、わしらを殺しに来たのか?」

 

「話が早くて助かります。まさにその通りです。とは言え、あなた方の実力は確かなものだと分かりました。そこで選択肢を与えましょう」

 

「ほう。聞こうかのう」

 

 わしはそうジェシカに尋ねる。

 

「この学院を去り、私たちともに来るならば命は取りません。魔術以外の全てを捨てて我々とともに魔術に身を捧げるならば、許そうではありませんか」

 

 ジェシカはそうわしらに提案してきおった。

 

「残念じゃが考えるまでもなく、答えはノーじゃよ」

 

「やはりあなたにとっては魔術とは軽いものなのですね」

 

「わしにとって魔術は確かに重要なものじゃ。じゃが、わしが大事にしておるのは魔術によって発達し、豊かになり、幸せになれること。魔術を高めても、それが社会に還元されぬのでは意味がない。そう考えておる」

 

 わしにとって魔術は人生そのものじゃったが、わしは魔術を独り占めし、誰にも与えなかったわけではない。

 

 わしは魔術が大事だったからこそ、それがのちの世に引き継がれ、より発展することを願っておったのじゃ。

 

「それでは残念ですが交渉決裂ですね」

 

 ジェシカはそう言うと不気味な笑みを浮かべた。

 

 

「この“憤怒”のノクシアがあなた方、魔術の冒涜者を葬りましょう」

 

 

 * * * *

 

 

 ジェシカはノクシアと名乗り、わしらに牙をむいた。

 

「消えた……!」

 

 先ほどまでジェシカが立っていたはずの場所から、ジェシカは一瞬で姿を消し、わしらは周囲を素早く見渡したが、その姿は見つからぬ。

 

「気を付けよ、レオ坊。仕掛けてくるぞ!」

 

「ああ、姉上」

 

 戦えるわしとレオ坊は何かしらの痕跡を探そうと目を皿のようにして、周囲に厳重に注意を払った。

 

 ノクシアの魔術は幻覚を見せるものがメインじゃと考えられる。存在しないはずのものを見せることや、存在するものの姿を隠すこと。それがノクシアがこれまで行使してきた魔術じゃ。

 

 そうなると注意しなければレオ坊やエリオットを敵の姿にされ、わしが間違ってそれを攻撃したら最悪のことじゃ。

 

「ぐうっ……!」

 

「レオ坊!」

 

 そこでレオ坊が運動エネルギーによる攻撃を受け、弾き飛ばされる。辛うじて防御の反応を取った故に死は免れたが、レオ坊も戦闘不能になりかけておる。

 

「このままじゃとらちが明かぬの……!」

 

 敵の姿は見えないまま。このままでは反撃できぬ。

 

「私に任せたまえ……!」

 

「エリオット! 無理はするではない!」

 

 エリオットが立ち上がったのにわしがそう叫ぶ。エリオットはわしとの決闘で負った傷も言えていなければ、先ほどレオ坊に“鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)”で貫かれてしまっておる。今も痛みに悩まされているはずじゃ。

 

「ジェシカ! 出てこい! お前のその運動エネルギーによる攻撃は私にとって知り尽くしているものだ! それだけではない! お前が使う幻覚以外の魔術は知っている! 姿を隠していても、どこにいるのか探ることは容易だぞ!」

 

 エリオットがそう叫び、周囲を睨む。それと同時にエリオットは僅かにわしに視線を向けて合図するように頷いて見せる。

 

 なるほど。これはブラフか。

 

「レオ坊。わしの傍に来て、いつでも“鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)”を放てるようにしておいてくれるか」

 

「分かった。何か策があるんだな、姉上」

 

「もちろんじゃよ」

 

 エリオットのブラフが通じれば、ノクシアは特定の行動に出るはずじゃ。

 

「さあて……」

 

 わし、レオ坊、エリオットが待機する中で、エリオットに動きがあった。

 

 エリオットの脇腹に不意に血が滲み、同時にエリオットが何かを掴んだ。

 

「今だ……!」

 

「レオ坊! エリオットの後ろを狙え!」

 

 エリオットが苦しげに叫ぶ中、わしがレオ坊に向けて命じる。

 

「分かった!」

 

 レオ坊の放ったエリオットの背後に向けて放たれ、“鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)”は何かを確実に貫いた。

 

「おのれ……!」

 

 そこでエリオットの背後に姿を見せたのはノクシアじゃった。エリオットのナイフを握った腕を掴まれたノクシアが忌々しげにわしらに視線を向ける。

 

「チェックメイトじゃよ、ノクシア」

 

 わしはそう言って運動エネルギーをノクシアの腹に叩き込んだ。

 

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