古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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魔女//終結

……………………

 

 ──魔女//終結

 

 

 ノクシアは吹き飛ばされて地面に転がる。

 

「もう逃げられないぞ」

 

 レオ坊がすかさず地面に倒れたノクシアを取り押さえた。

 

「エリオット! 大丈夫かの!?」

 

 わしは脇腹を刺されたエリオットに駆け寄る。

 

「大丈夫だ……。身を捻って急所はずらした……」

 

「おぬし、よくそんなことができたの……」

 

「一応従軍した経験があるからな……。しかし、どうやらここまでだ……」

 

 しかし、エリオットはそのまま意識を手放し、地面に倒れ込む。

 

「出血はそこまで激しくないようじゃが……。大丈夫じゃろうか……」

 

 急いで人を呼んで病院に運ばなければならないが、今はまだやるべきことがある。

 

「ノクシア。おぬしには聞きたいことがある。仲間はどれほどいるのか、これからも襲撃の計画はあるのかなどな」

 

 わしはレオ坊に取り押さえられたノクシアにそう言って彼女をを睨む。

 

「ふふふ。私がそう簡単に喋るとでも? 甘い、甘い、とても甘い考えですね……」

 

 ノクシアがそう不気味に笑ったとき、彼女は口から大量の血を吐いた。

 

「なっ……!」

 

「何が……! いや、自害するつもりか!」

 

 間違いない。ノクシアは魔術で自害しようとしているのじゃ!

 

「どうする、姉上!」

 

「急いで治療をする。レオ坊は人を呼んでくれ! エリオットにも医者が必要じゃ!」

 

「了解だ!」

 

 恐らく血の吐き方から見て、体内に毒を生成したのじゃろう。毒そのものは表面構造(テクスチャ)の復元力によって消滅するが、毒によって負った肉体の損耗までは元通りにはならぬ。

 

「毒を吐いてもらうぞ」

 

 わしは塩分を僅かに混ぜた生理食塩水を生み出し、それをノクシアの口に流し込む。そして、嘔吐させることで胃に毒が残っていれば吐き出させるようにした。

 

「無駄ですよ……。私は何も喋らない……」

 

 しかし、遅かった。ノクシアは最期にそう言い残し、こと切れてしまった。

 

「くっ! 自害してまで秘密を守りたかったというのか……!」

 

 わしは首を横に振り、息絶えたノクシアを見下ろす。

 

 

 * * * *

 

 

 それから学院は落ち着きを取り戻し、警察や救急が学院内のあちこちにやってきた。負傷した学生や教員が病院へと運ばれ、亡くなってしまったものには家族に連絡が行く。

 

「あやつら、わしらを狙っておったな……」

 

「そうだな、姉上。私たちが異界魔術を使えるからということだったが……」

 

「ふむ。もしかすると、後世に異界魔術が継承されなかった原因と関係あるやもしれぬ。異界魔術が途絶えた点には、まだ謎も多いからのう」

 

 古代帝国時代から資料が喪失したことは確かじゃろうが、それでも部分的に一般魔術は引き継がれておった。

 

 だから何故、異界魔術だけがこの現代に全く継承されなかったのがずっと疑問じゃったのだ。

 

 その答えは魔女学会なる組織にあるやもしれぬ。

 

「アリス、レオ。無事だったか」

 

「アイザック! おぬしも無事なようで何よりじゃ! トーランド教授やグレイスたちも無事かのう……?」

 

「ああ。うちの研究室に被害はない。残念なことに他はそうでもないようだが……」

 

 アイザックの言葉には魔術学部にも少なくない被害が出たことが現れておった。

 

 ついさっきまで平和だった学院がたったの数時間で戦場になってしまったのだ。犠牲者はかなりのものじゃろう……。残念なことじゃ……。

 

「それから、アリス、レオ。警察が襲撃者たちの正体を追っている。君たちは犯人に接触して生きている数少ない人間だ。捜査に協力してもらうことは可能か?」

 

 アイザックはわしらにそう求めてきた。

 

「わしは構わぬよ。手伝おう」

 

「私も構いませんが」

 

 わしらには異論はない。わしとしても襲撃犯であった魔女学会なる連中については興味があるからのう。警察が調べてくれるならばそれに越したことはない。

 

「では、警察に君たちを紹介する。なるべく丁重に扱うように頼んでおくよ」

 

「助かるのじゃ。ところで、エリオットは無事かのう?」

 

「分からない。まだ難しい状況だと思うが」

 

「そうか。エリオットも襲撃者に接触しておるから、容体が回復したらあやつにも話を聞くように言っておくよ」

 

 そしてわしらは警官に襲撃が行われた状況や、襲撃者である魔女学会なる組織について分かっている限りのことを述べた。

 

 警官は魔術については理解していない様子じゃったが、ある程度はわしらの話に納得してくれ、捜査を続けると約束してくれたのじゃった。

 

 

 * * * *

 

 

 それから暫くは学院どころか、ロンディニウム全体が今回の襲撃に怯えておった。

 

「アリス、レオ! 無事だったね!」

 

「父上、母上。心配をかけて申し訳ないのじゃ」

 

 父上と母上も学院にやってきて、わしらの様子を見に来たぐらいじゃ。

 

「大変な事件だったんだろう? 友達は大丈夫だったかい?」

 

「わしの知り合いはなんとか無事じゃよ」

 

 ライリーはあれから手当てを受けて助かり、松葉杖での暮らしに文句を言っておった。それからエリオットも入院しておる。そしてアイザックが言ったようにトーランド教授の研究室のメンバーに被害はない。

 

 じゃが、魔術学部では2名が死亡し、10名が負傷してしまっていた……。

 

「暫くは実家に帰った方がいいわ。学院の授業も再開していないのでしょう?」

 

「そうなのじゃが……」

 

「なら、実家で過ごしましょうね。学院の授業が再開するまでよ」

 

「分かったのじゃ」

 

 母上の心配は分かる。

 

 学院には今も生々しい襲撃の痕跡が残されており、怪我をした学生や、悲しみに暮れておる教員などもいる。そういう場所にわしとレオ坊がいるのは、精神的に決していいことではないと思うじゃろう。

 

 わしは前世で戦争を体験しておるから、そこまで精神的に傷を負ったなどということはない。人の死についてはある程度、耐性というものがあると言えるのじゃ。

 

 しかし、レオ坊はそうではないじゃろう。

 

 レオ坊は狙撃手の死体やノクシアの死体を見ておる。それがどれほどレオ坊の心に傷をつけたかは分からぬ。レオ坊にとってはあれらの死はトラウマになってもおかしくはないのものじゃ。

 

「レオ坊、暫く実家で過ごそうの。父上と母上を安心しさせなければ」

 

「そうだね、姉上」

 

 レオ坊は気丈にしておるが、やはり休息は必要じゃ。

 

 わしらは久しぶりに家族で鉄道に乗り、実家へと帰った。

 

 実家ではわしらが学院で経験したことを話したが、わしは可能な限り襲撃については触れないでおいた。レオ坊のトラウマになってしまっている場合、下手にこの話題を出すのは傷を抉るようなものじゃと思ったからじゃ。

 

 じゃが、わしは心配しすぎていたようじゃ。

 

「姉上」

 

「おお。どうした、レオ坊?」

 

 実家に滞在しておった夜に、レオ坊が話しかけてくる。

 

「聞きたいことがあるんだ。教えてくれるだろうか?」

 

「もちろんじゃ。何で聞くがよいぞ」

 

 最初はレオ坊がやはりトラウマで悩んでいるのじゃろうかとわしは思った。

 

「どうしたら姉上のように強くなれるだろうか。私は強くなりたい。姉上を守れるぐらいに強くなりたいんだ……!」

 

 レオ坊はそうわしに言う。

 

 レオ坊は強い子じゃった。わしの心配など無用なぐらいに。

 

「レオ坊はもう十分強いぞ。しかし、それ以上の強さを求めるというならば、魔術だけではなく、心も鍛えなければならぬの」

 

「姉上を守るためならば、何だって鍛える」

 

「そうか。学院に帰ったら、わしと特訓をしような。約束じゃ」

 

「ああ」

 

 そして、わしとレオ坊は実家で暫し過ごし、それから再び学院へと戻った。

 

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