古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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名誉//騎士

……………………

 

 ──名誉//騎士

 

 

 アリス、レオ、エリオットの3名が学院を制圧したテロリストを、その勇気と力をもってして退けたことはアルビオン連合王国政府の人間も知るところとなった。

 

 今は政治的実権を持たぬこの国の王──女王シャーロットもそれを知った。

 

「学院の襲撃の件で私に進言したいことがあると聞きましたが」

 

 このシャーロットは1年前に即位し、まだ18歳という若さ君主であり、これは東部大陸でもっとも若い君主となる。

 

「はい、陛下。事件の全容については、今もロンディニウム警視庁を含めたアルビオン全ての捜査機関が捜査中ですが、学院の占拠という事態を打破した人間については分かっております」

 

 そう述べるのはシャーロットの侍従長だ。

 

「ふむ。警察のものですか?」

 

「いいえ。民間人です。3名の学院の学生と教員が襲撃者を撃退し、無事に学院を解放したのです」

 

「興味深いですね。それで私にどうしろと?」

 

「サザーランド首相はこの3名に勲章を授与することを考えているということで、陛下の同意をいただければとのことです」

 

 このアルビオン連合王国において勲章の授与と叙爵に関してのみは、未だに君主の有する政治的権限であった。

 

 もっともどちらも政府の助言があったうえでの権限となっており、君主が好き勝手に勲章を与えることなどはできない。

 

「もちろん構いません。大勢の命を救ったのです。ここは騎士爵に任じては?」

 

 騎士というのは今では名誉称号に近いものであり、一代のみの爵位となる。

 

 また騎士になったからと言って何も甲冑を纏って君主に仕える必要はなく、社交界などのフォーマルな場で騎士として認められた勲章を示しておけばよいだけだ。

 

「陛下がそうお望みになっていることをサザーランド首相にも伝えておきます」

 

「ええ」

 

 シャーロットが侍従長の言葉に頷いたあと、侍従長がやや困った顔をする。

 

「それからひとつご連絡したいことが……」

 

「何かしら?」

 

「エスタシア帝国のアルブレヒト殿下がこの件に興味を示しておられるということでして、近いうちに訪問されるとのことです」

 

「ああ……。あれの好きそうな話ではありますからね……」

 

 ため息交じりにシャーロットは呟く。

 

「まずは我らが王国に功績のあったものたちに相応しい名誉を。アルブレヒト──わたくしのいとこの件はそれからです」

 

「はい、陛下」

 

 それからアリス、レオ、エリオットの3名の栄えあるアルビオン騎士団の騎士として叙勲と叙爵が打診されたのは7日後のことであった。

 

 

 * * * *

 

 

 何とわしらが騎士の爵位を授けられるかもしれぬという話が舞い込んできた。

 

「レオ坊! わしらは騎士になれるのかのう!」

 

 わしは今のアルビオンの首相であるセオドア・サザーランド首相自らの手紙にテンションも上がってレオ坊に話しかける。

 

「そうみたいだ、姉上。父上と母上にも知らせないと」

 

「そうじゃのう。手紙を出さねばな」

 

 わしらはうきうきした気分で、父上と母上にこの件について知らせた。

 

 それからわしらの話は学院の中にもゆっくりとだが広がっていった。

 

「聞いたぜ。騎士になるんだって、アリス、レオ?」

 

「凄いじゃん、凄いじゃん!」

 

 まだ松葉杖のライリーとそれを助けているマヤが食堂でそう話しかけてくる。

 

「うむ。わしも誇らしいよ。それにこれで魔術が注目浴びて、再び少しでも認められるとよいのじゃが」

 

 この叙勲の話は単にわしらが名誉を得ると言うだけの話ではない。わしらは使った魔術にも同じぐらいの名誉が与えられる話なのじゃ。

 

 というのも、この騎士爵の叙勲については昔は魔術師も才あるものは受けていたそうなのじゃが、ここ最近ではさっぱりという話であった。

 

 他の音楽や演劇と言ったものにかかわる文科系の人間や科学の発展に貢献した科学者の授与は年々高まっておるのにである。

 

 わしらがこの名誉を授かることで、あとに続くものが出てくれば良いのじゃがのう。

 

「やっぱり女王陛下から勲章は授かるのかね」

 

「そのようじゃな。授与はアルビオン宮殿で行われるとあるからの」

 

「へえ。それならちゃんとおめかししていかないとな。どんな感じだったのか、あとで教えてくれよ!」

 

「もちろんじゃ」

 

 わしはライリーとマヤにそのような事情を話し、それから研究室でも似たような話をすることになった。

 

「女王陛下から騎士爵を授与されると聞いたが、アリス。本当なのか?」

 

「ああ。そうじゃよ、アイザック。授与は次の週にアルビオン宮殿で行われるそうじゃ。楽しみにしておる」

 

「そうか。名誉なことだな」

 

 アイザックはあまり表情は変えないが喜んではおるようじゃ。

 

「まあ、授与は当然だろうね。アリスたちは学院を救ったんだから、それぐらいはないと。あのときは本当に絶望的だったのを思い出すよ……」

 

「そうね。私たちは辛うじて被害を逃れたけど、あの襲撃で大勢が犠牲になった。アリスたちが動いていなければ、もっと酷い被害が出ていたかも。アリスは本当に大勢の命を救ったのよ」

 

 マックスとリリーもそう言ってくれる。

 

「そう言えば襲撃のときにふたりはここにいたのかの?」

 

「研究室のメンバーがトーランド教授以外、全員ここにいたわ。トーランド教授はアレクサンダー教授の処分に関する会議に出ていたからいなかったけど、襲撃が終わったらすぐにここに来てくれた」

 

「そうか。本当におぬしらが怪我などしなくてよかったよ」

 

 わしはそう言って改めて安堵したのじゃった。

 

 と、そこでがらがらっと研究室の扉が開かれた。

 

「聞きましたよ、アリスさん! 騎士の爵位を授与されるとか!」

 

「おお、グレイス。おぬしも祝いに来てくれたか」

 

 入ってきたのはグレイスじゃ。アイザックと違って表情がはっきりとしておる。もちろん、その表情は喜びと歓喜のそれじゃった。

 

「もちろんですよ! アリスさんとレオさんがともにその魔術を評価されたことは魔術界にとって何よりの名誉! 何とですね、魔術師が魔術の功績でこの手の栄誉を得たのは、85年ぶりなのですよっ!」

 

「お、おう。そうじゃったな。名誉なことじゃ」

 

「アリスさんっ! もし女王陛下にお会いしたら、陛下にアルビオンの魔術界の未来は投資を必要としていることをぜひ訴えてきてください! まだまだ埋没してしまっている人材がいることも!」

 

「仮にも君主にその手の直言は許されぬじゃろう……」

 

 グレイスが興奮しすぎておる。じゃが、気持ちは分からんでもない。

 

 わしも正直テンションが上がっておるからの。これで魔術再評価の流れがくるのではないかとな。

 

 しかし、今回の事件はそう単純ではない。

 

「言い忘れていた。アリス、例の襲撃者たちの身元は結局分からなかったそうだ」

 

「何じゃと。ジェシカはここの学生じゃったろう?」

 

「そのはずだったが、彼女の実家であるドーソン家に警察が踏み込んだところ、白骨死体が残されているだけだったそうだ。さらにそこで本来のジェシカ・ドーソンの白骨死体も見つかっている」

 

「……あれはジェシカ・ドーソンに成りすました全くの別人じゃったか……」

 

「ああ。それからもうひとりの襲撃者については、もっと奇妙なことが起きた。死体安置所(モルグ)に移送される途中で死体が消えたんだ」

 

「誰かが襲撃したのかの?」

 

「いいや。忽然と姿を消したとだけ」

 

 ふうむ。あの不気味な目について原因が分かればと思っておったが、どうやら敵はそうはさせまいとしたようじゃな。

 

「魔女学会についても今のところ分かったことはない。分かっているのは高度な魔術で学院を襲撃したということだけ」

 

 そうなのじゃ。魔術が命を救った反面、襲撃者たちも魔術で命を奪っておるのじゃ。だから、手放しに魔術が評価されるとはわりは思えなかったのである。

 

「ぐれぐれも用心はしてくれ。君は魔術界の未来に欠かせない人材だ」

 

「もちろんじゃよ。そう簡単にやられるつもりはない」

 

 アイザックが信頼のまなざしでわしを見るのにわしも頷いて返した。

 

 さあ、来週は女王陛下にお会いできるぞ!

 

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