古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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名誉//女王

……………………

 

 ──名誉//女王

 

 

 わしとレオ坊、そして父上と母上は揃って、王室で準備してくださった馬車に乗ってアルビオン宮殿へと向かった。

 

「アリスたちが騎士になるなんてなあ。父さんたちは想像もしていなかったよ」

 

 父上はずっとそう繰り返しておる。まだ現実感がないという感じじゃ。

 

「アリス、レオ。女王陛下の前では礼儀正しくね」

 

「はい、母上」

 

 レオ坊はどこに出しても恥ずかしくない礼服姿で、わしもちゃんとしたフォーマルなブラウスとスカート姿じゃ。本当はわしもタキシードでばっちりと決めたかったのじゃがのう。依然としてわしは幼女のままじゃからのう……。

 

「そろそろアルビオン宮殿だよ」

 

「いよいよじゃな」

 

 わしらを乗せた馬車がアルビオン宮殿の大きなゲートを潜る。

 

 12歳のときにロンディニウムを訪れて初めてこの宮殿を見たことを思い出すが、、まさかこのゲートを潜る日が来るとはのう。

 

 近衛兵が警備する宮殿の前に馬車は止まり、わしらは宮殿に迎え入れられた。

 

「アリス・カニンガムさん、レオ・カニンガムさんとそのご両親ですね」

 

「そうじゃ。今回はよろしく頼むのじゃ」

 

「ええ。どうぞこちらへ」

 

 今日はわしらの叙勲の他に晩餐会が開かれる予定じゃ。その食事会には女王陛下に招かれた魔術関係者などが出席すると聞いておる。

 

 ううむ。畏まった食事の場など久しぶりすぎて大丈夫かちょっと心配じゃのう。

 

「こちらでお待ちください」

 

 それからわしらは大きな広間に通された。格式高い調度品に飾られた厳かな場所じゃ。ますます緊張してきてしまったぞ。ちゃんとやれるじゃろうか……?

 

 そう不安になってレオ坊の方を見るとレオ坊はしゃきっとしていたが、手が僅かに震えておった。やはりレオ坊も心配になっておるのじゃろう。

 

「レオ坊。わしがついておるからな」

 

「ああ」

 

 わしはニッと笑ってそう言い、レオ坊も安堵したように小さく笑った。

 

 しかし、エリオットにも同じ話があったはずなのじゃが、姿が見えぬぞ……?

 

「女王陛下がいらっしゃいます」

 

 ここで侍従長がそう言うと広間の扉が開き、そこから年若い女性が姿を見せた。

 

 彼女がこのアルビオンの君主たるシャーロット陛下なのか。思っていたよりもずっと若いのう。しかし、若けれど威厳にあふれた出で立ちとオーラをしておる。

 

 そのカリスマを纏った姿を前にして、思わず身が引き締まるわ。

 

「ようこそ、アリス・カニンガム、レオ・カニンガム」

 

 シャーロット陛下は優しげに微笑んでそう話しかけてくれた。

 

「この度はあなた方の功績を讃え、ここにグレート・アルビオン騎士勲章を叙勲とともに騎士爵を叙爵いたします」

 

 控えていた侍従が勲章の入った箱のふたを開け、シャーロット陛下に差し出す。

 

 勲章は十字の記号を基本にしたそれで金と銀に輝いておった。このような勲章を授かるのは前世を含めても初めてのことじゃあ!

 

「これからもアルビオンとこの国に住まう臣民のために尽くしてください」

 

 シャーロット陛下はそう言って屈むと、わしの胸に勲章を授けてくださった。

 

 それからレオ坊にも同じように勲章がその胸に授けられ、レオ坊はとても緊張している様子じゃったな。

 

「あなた方はとても優秀な魔術師だと聞いています。そして、今回の事件の解決には魔術が用いられた。わたくしはこのことをとても重要視しています」

 

 シャーロット陛下はそう語る。

 

「今の時代において魔術は軽んじられていました。我々は科学で全てを知った気になっていた。だが、そうではなかったのだと良くも悪くも証明されました。これからは我々は魔術に目を向ける必要がある」

 

 おお。シャーロット陛下は魔術の重要性を理解してくださるのか!

 

「その上で有望とされるあなた方に尋ねます。将来、あなた方が魔術に関わる上でわたくしの力を必要とするのはどのような場面かを」

 

 シャーロット陛下は笑みを浮かべてそう尋ねたが、侍従長の方は厳しい顔つきじゃ。恐らくこれは政府も認めた正式な話ではなく、あくまでシャーロット陛下の厚意の上での話なのじゃろう。

 

「陛下。わしは魔術を人類の選択肢のひとつとしたいと思っております」

 

 そのようなシャーロット陛下の厚意に甘えてわしはそう語る。

 

「魔術か科学かではなく魔術と科学というふたつの選択肢を今の世代の人類に与えたい。そう願っております。少なくとも古代帝国時代にはこのふたつは選択肢として存在していたのですじゃ」

 

 シャーロット陛下は頷き、続けるように促す。

 

「しかし、古代帝国が滅び、魔術の継承は途絶えた。これは大きな損失です。人類は選択肢のひとつを失った。わしはもうそのようなことが決してないように、そしてかつてのように魔術の地位を押し上げたい」

 

 わしは語る。

 

「そのためにわしは魔術の教育をもっと充実させたい。継承が途絶えぬように学校と図書館を整備したい。精霊魔術を再び復活させるために、自然環境の保護と回復にも力を入れたい。それは人々のためにもなります」

 

 そして、とわしは最後に続けた。

 

「それを成すうえで助力が必要になったときに、陛下の助力が得られればそれはとても光栄なことでございますじゃ」

 

 わしはそう述べるとシャーロット陛下の方をじっと見上げた。

 

「素晴らしい理想です。若くしてそれだけの理想を抱ける人間は少ないでしょう」

 

 シャーロット陛下はやはり約束はできぬのか、絶対に手を貸すとは言わなかった。

 

「レオ。あなたはどうですか?」

 

 それからシャーロット陛下は緊張しているレオ坊にそう尋ねる。

 

「私の理想は、姉の理想です。私は生涯をかけて姉を支えていきたいです、陛下」

 

「まあ、姉弟でとても仲がいいのね。羨ましいわ」

 

「光栄です」

 

 レオ坊の言葉にシャーロット陛下は微笑んでおられた。

 

「では、晩餐会でまたお会いしましょう。ゆっくりしていかれてね」

 

 そう言ってシャーロット陛下は退室し、わしらもちょっと緊張が解けた。

 

「侍従長殿。エリオット・アレクサンダー教授にも同じ申し出があったと思ったのじゃが、この場には呼ばれておらぬのかの……?」

 

 そこでわしはこの場に残った侍従長に気になっておったことを尋ねる。

 

「アレクサンダー教授は辞退なさりました。自分には相応しくない名誉だと」

 

「そうじゃったか……」

 

 エリオットもともに学院を救った仲間なのじゃがな。

 

「ああ。よかったね、アリス、レオ。これでお前たちの才能が広く認められただろう」

 

「緊張したでしょう?」

 

 父上と母上がやってきてわしとレオ坊の頭を撫でる。

 

「これでお前たちも騎士だね。父さんたちもアリスたちの成長と活躍に期待しているよ。これからも学院で頑張ってくれ」

 

「はいじゃ、父上」

 

 

 わしらはこうして君主にもその才能を認められた。

 

 

 しかし、わしの魔術を再興するというは話は、まだまだスタート地点に立っただけに過ぎないのじゃった。

 

 

 魔術の知識を継承することも、精霊を復活させることも、まだまだこれからじゃ!

 

 

……………………




次回より月・水・金の週3回更新になります。
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