古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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飛躍の年//世界魔術連盟への誘い

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 ──飛躍の年//世界魔術連盟への誘い

 

 

 わしらはエスタシア帝国の皇太子であるアルブレヒト殿下に招かれて、彼が泊ってるホテル・ロイヤルオークを訪れた。

 

「よくぞ来てくれた、魔術の道を切り開かんとする勇者たちよ!」

 

 アルブレヒト殿下の出迎えはあまりにも盛大なものじゃった。彼はホテルのレストランを貸し切りにしており、円卓を準備していた。じゃが、その円卓にいるのは、アルブレヒト殿下だけじゃ。

 

「さあさあ、座りたまえよ。私と魔術の話をしようではないか!」

 

「では、失礼します」

 

 わしとレオ坊はアルブレヒト殿下に勧められて、円卓を囲む。

 

「既に聞いているかと思うが、私は世界魔術連盟の理事長を務めている。我々の世界魔術連盟の目的は魔術の振興と発展。私はこれまで有望だと思われた多くの魔術師たちを支援してきた」

 

 アルブレヒト殿下はそう語る。

 

「加盟国の中にはアルビオンも含まれている。私たち世界魔術連盟はアルビオンの魔術師たちを支援する準備もあるということだ」

 

 アルブレヒト殿下はそう言ってわしとレオ坊を見る。

 

「君たちを支援する準備も当然ある。その上で聞かせてほしい。学院で起きた事件で、君たちはどのような魔術を使い、そして事件を解決したのかを!」

 

「もちろんですじゃ」

 

 わしはアルブレヒト殿下に学院で起きたことについて語り始めた。

 

「まずわしらが相手にした敵の魔術師は狙撃手でありました。それは異界魔術で生み出した使い魔(ファミリア)であるカラスの視界を共有することで、有視界圏外であろうと狙撃を行うという魔術師であったのですじゃ」

 

「ほう。そのようなことができるのか!」

 

「ええ。とても高度な魔術ではありますが、不可能ではありません。わしもやろうと思えばできますじゃ。ただし、わしの場合は視界を共有できる使い魔(ファミリア)は1体に限られるでしょうがのう」

 

「ふむふむ。空からの視野が魔術によって得られるというのか……。それはいろいろと常識が変わってしまいそうだな……」

 

 確かにのう。科学は発展したが、まだ人が空を飛ぶという話は聞いておらぬ。

 

 そういう意味では空からの目というのはいろいろと画期的じゃろう。空から地上を見渡せるならば地図はもっと正確なものとなり、人々の暮らしにも影響するはずじゃ。

 

 それから軍事の面でも空からの視界というのは革新的じゃろう。空から敵が見えれば待ち伏せなどの相手の軍略も回避できるのじゃから。

 

「その魔術を一般的にすることは可能だろうか、アリス君? 大勢の民が空から自由に地上を見渡すということはできるだろうか?」

 

「いきなり全ての民に普及させるのは簡単ではありませんじゃ。ですが、これから徐々に広めることはできるでしょう」

 

「そうだな。ならば、まずはこの私に教えてほしい! 私も空から地上を見下ろしてみたい! そう、鳥のように空から地上を見た光景というものが気になってしょうがないのだっ!」

 

「は、はい。分かりましたですじゃ。あとで挑戦してみましょう」

 

「頼むよ!」

 

 ううむ。このアルブレヒト殿下は魔術を広めたいというより、自分が未知の体験をしたいというのが大きいのではないかと心配になってきたのじゃあ。

 

「それで、だ。どうやってその魔術師を撃破したのだね?」

 

「うむ。まずレオ坊とエリオット・アレクサンダーという教員が、わしが霧によって使い魔(ファミリア)の視界を遮る中、敵の狙撃手が潜む時計塔に向けて駆けた。視界を塞げば、魔術が通ることも遮れますからのう」

 

「確かに魔術は有視界内でしか行使できないものだ。考えたね」

 

「ええ。しかし、大規模な霧を発生させる魔術は表面構造(テクスチャ)の復元力によってあまり長くはもちませぬ。それまでにレオ坊たちが時計塔に到達できれば、それでよかったのですが」

 

「そうはならなかったようだね。次はどのようにしたのだ? 早く聞かせておくれ!」

 

「霧が表面構造(テクスチャ)の復元力によって消えたことで、敵はまた狙撃可能になりましたのじゃ。そこでわしは相手の使い魔(ファミリア)の制御を奪い、使い魔(ファミリア)の視界から敵の魔術師を攻撃したのですじゃ」

 

「ほおっ! なるほど、なるほど! しかし、それは理論的には筋が通っているとは言えども、それほどの魔術は難しかったのでは?」

 

「容易ではないの。普通、相手の使い魔(ファミリア)の権限を乗っ取ることは困難の極み。何故ならば相手にすぐに気づかれてしまうからじゃ。しかし、今回の敵は大規模な使い魔(ファミリア)を展開させており、ひとつひとつへの注意が散漫じゃった」

 

「そうであるが故に敵に気づかれることなく、使い魔(ファミリア)を乗っ取った、と。素晴らしい! 素晴らしいぞ、アリス君!」

 

 アルブレヒト殿下は興奮しておる。

 

使い魔(ファミリア)というのはまさに異界魔術のそれであり、我々が失ったものである。一般魔術では逆立ちしても使い魔(ファミリア)は生み出せない。それをこうも高度に使いこなすとは! 何ともはや!」

 

「そうじゃのう。異界魔術でなければ使い魔(ファミリア)を創造するのは難しいからのう」

 

 使い魔(ファミリア)というものをわしはとても簡単に説明していたが、実際にその中身を見ればあまりの高度さにわしですら目を回すじゃろう。

 

 ひとつの生命を完全に再現する。複雑な細胞のひとつまで全てを、じゃ。それがどれだけ困難なことは説明するまでもあるまい。

 

 こればかりは自分の知識を使うだけの一般魔術では複雑すぎて不可能じゃ。異界の理をそのまま表面構造(テクスチャ)に上書きする異界魔術、または精霊を表面構造(テクスチャ)に記載する精霊魔術でなければならぬ。

 

「それで、狙撃手は倒したのか? どのようにして?」

 

「そこは普通の一般魔術じゃ。運動エネルギーによる攻撃で殺害するしかなかった。生かしておればレオ坊たちが狙撃されたかもしれぬからな……」

 

 本当は殺さずに無力化した方が、情報も引き出せたのじゃろうが、あの状況でそれは難しかった。わしはあの敵を殺すしかなかった。

 

「それから勝負は決したのかね?」

 

「いや。敵は伏兵を潜ませておった。学生のひとりが敵の魔術師にすり替わっておったのじゃ。その魔術師は高度な幻覚を操る魔術師であり、わしらに偽りの敵の姿を見せることや、その姿を消すことでわしらを惑わせてきた」

 

「幻覚とは! それを見せるには光を操作するか、あるいは相手の脳を直接操作しなければなるまい。その魔術師はどちらを使ったのだ?」

 

「合わせ技じゃったと思う。僅かながら映像や音にずれが生じておった。それでわしらは幻覚を見せられていると気づいたのじゃ」

 

 あのときわしらが幻覚に気づいたのは、目に見えている映像と耳で感じる音にずれがあったからじゃ。ジェシカ・ドーソンに成りすましていた魔術師は、完全にはわしらを騙せなかったのじゃな。

 

「それからエリオットが身を挺して敵をあぶりだし、レオ坊が仕留めたのじゃが、敵は自害しおった。よって襲撃者についての情報は得られなかったのじゃ。今も警察が調べておるという話じゃったな」

 

「敵は謎の高度な魔術を操る集団というわけか……」

 

 わしの言葉にアルブレヒト殿下は考え込んでおる様子だった。

 

「そのような敵に対抗するためには、我々も魔術についての知識を深めるしかない。そうでなければまたどこかで同じ襲撃が起きたとき、我々は無力なまま被害を出すだけに終わるだろう」

 

「そうですじゃの」

 

「よって君たちを世界魔術連盟に誘いたい! 君たちのような優秀な魔術師を我々世界魔術連盟は支援したいのだ! 既に君たちの話に出てきた人物も、我々の仲間になっているぞ!」

 

「はて? 誰ですかの?」

 

 わしは心当たりがなくそう尋ねる。

 

「エリオット・アレクサンダーだ。彼はこの学院を退職し、今は世界魔術連盟の研究員として帝都ベルハルデンで働ているよ!」

 

「エリオットが……」

 

 大学を辞めたとは聞いていたが、世界魔術連盟に加わっておったのじゃなあ。

 

 そこでアルブレヒト殿下の付き人がやってきて、殿下に耳打ちする。

 

「何? そろそろ時間だと?」

 

「はい、殿下。シャーロット陛下との懇談の時間となります」

 

「ううむ。我がいとことの約束を破るわけにはいかないが……。せっかく話が面白くなってきたというのに……」

 

 アルブレヒト殿下はそうぶつぶつ言いながらもわしらの方を向いた。

 

「では、申し出の方は考えておいてくれたまえ。いつでも歓迎する。それではまた会おう、魔術師にして英雄たちよ!」

 

 アルブレヒト殿下はそう言って退席し、わしらもホテルから帰ったのじゃった。

 

「しかし、皇太子殿下に会えるとは。わしらも出世したのう、レオ坊」

 

「そうだな、姉上。しかし、世界魔術連盟の件はどうする?」

 

「ううむ。今は学院での研究もあるからのう。まだ答えは出せぬ」

 

「私はどんなことになろうと姉上の傍にいるからね」

 

「ああ。頼りにしておるよ、レオ坊」

 

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