古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──飛躍の年//常勤講師
「アリス。アルブレヒト殿下とはどうであった?」
翌日、研究室でわしにそう尋ねるのはトーランド教授じゃ。
「殿下は感心しておられました。それから世界魔術連盟へと誘われましたの」
「ほう。殿下から直々にかね」
「ええ。光栄なことですじゃ」
アルブレヒト殿下はハイテンションな方じゃったが、あの魔術に対する情熱は確かなものじゃと感じた。そんなお方の運営する世界魔術連盟というのは、この魔術の衰退した時代においても熱意あるものなのじゃろう。
「では、その申し出を受けるつもりか?」
「いいえ。今はまだ学院でやることがあるからのう。じゃが、せっかくなので将来の選択肢にはいれておりますじゃ」
「そうすべきだろう。世界魔術連盟は学術組織としては、まだそこまでの存在ではない。確かにアルブレヒト殿下が率い始めてから存在感を出し始めたが、これまではほとんど無名とも言える組織だった」
「そうなのですかの?」
「ああ。人々が普遍的に、そしてより容易に使える科学が台頭し、魔術というものが顧みられなくなってから生まれた組織だ。歴史はそう長くもなく、組織が生まれたきっかけもエスタシア皇室の気まぐれだったからね」
その世界魔術連盟の名に反して、その活動はエスタシアに留まっていたとトーランド教授が言っておった。
「しかし、今はその活動は急速に拡大している。アルブレヒト殿下がこうしてあちこちから優秀な魔術師をスカウトし、援助し、組織は拡大していると聞く。将来の選択肢に入れておくのはいいだろう」
「了解ですじゃ」
「それに君には学院からも申し出がある」
「と言いますと?」
なんじゃろうか?
「学院は君に常勤講師の地位を提案したい。これは理事長からの提案でもある」
「ほう! わしを講師に、と」
「ああ」
興味深い話になってきたのう。
「しかし、わしはどのようなことを教えればよいのでしょうか?」
「君は学院を襲撃してきた魔術師たちを退けた。戦闘に魔術を使うというのは、これまであまり重要視されていなかった。魔術を使うよりも科学で作られた銃火器や火砲を使った方が効率がいいと思われていたからだ」
「つまり、魔術を使った戦闘について教えるわけですの?」
「そうだ。それを必要としている」
ううむ。あまりわしの好むところではないが、確かに魔術を使って戦闘というのは、この時代ではあまり重要視されておらなんだ。
「君の講義は大学から陸海軍士官になる人材を養成する過程で使用されるのと現役の陸海軍士官を相手にしたもので行われる予定だ。軍は特に今回の学院の襲撃事件に対して衝撃を受けている」
「なるほど。軍事教練というわけですかのう……」
「嫌かね?」
「いえ。ただ魔術を武器として扱うのはあまり……」
「大丈夫だ。講義に参加するのは魔術師だけではなく、求められるのは主に強力な魔術師を相手にして、一般人がどのように対応するかという話になる」
「ふむふむ。確かに前回のような魔術師の襲撃事件の際に、魔術について知らなければ対応できませんからの」
「そういうことだ。これは政府筋からの依頼でもある」
前回起きた学院襲撃事件では、相手の魔術を前にして警察などの従来の治安部隊は無力じゃったと聞いておる。
こういうことが度々起きてしまっては国の統治はおぼつかぬじゃろう。
じゃから、わしにもその必要性は分かった。
「分かりました。お引き受けしますのじゃ」
「ありがとう、アリス」
ということで、わしは学院の常勤講師となったのじゃった。
* * * *
「姉上が講師に?」
「そうなのじゃよ、レオ坊」
わしは学生寮の食堂でレオ坊たマヤ、ライリーたちに講師になったことを告げた。
「魔術戦の講師が必要なようなのじゃ。ほら、先の学院襲撃で警察は無力であったからな。これからも同じような事件が起きた場合、対抗できるようにしておきたいのじゃということだ」
「なるほど。姉上の講義は私も受講できるのかな?」
「できるじゃろう。ただ政府からの要望で、軍人も受講するようじゃ」
「なら、学ぶいい機会だね」
レオ坊は先の襲撃のあともひたすらに強くなりたいと望んでおった。軍人たちと肩を並べて講義を受ければ、魔術師としての強さだけでなく、精神的な強さも身に就くと考えたのじゃろう。
レオ坊はどこまでも向上心がある子じゃな。いいことじゃ。
「あたしは実戦にはあまり興味はないかな。あたしが好きなのは魔術史だから」
「俺は興味あるぜ。この前は活躍し損ねたからな」
「そんなこといっちゃって。危うく死ぬところだったのに」
ライリーが冗談めかしていうのにマヤが肘でライリーをどついた。
「しかし、研究員から常勤講師になるって、このまま上手くいけば教授になれるかもね。これからの研究成果次第ではあるだろうけど」
「そうじゃのう。まだまだ新しい発見はないからのう」
研究者として評価されるには、当然研究成果を示さなければならない。
わしは実技でこそ確かな成績を残してきたが、研究者としては微妙なのじゃ……。
わしが取り組んでおるのはトーランド教授の下で行われている
「ううむ。講師として教えるのはよいが、自分の研究もおろそかにはできぬな」
「忙しくなるだろうけど、頑張って、アリスちゃん!」
「ああ。ありがとう、マヤ」
マヤたちが励ましてくれるのにわしは微笑んで返したのじゃった。
* * * *
それからわしは講師となったのものの、トーランド教授の研究室には所属し続けることになった。グレイスと同じような立場じゃな。自分で部屋を持つほど、研究に独自性があるわけではないということじゃ。
しかし、一応講義にはいろいろと準備が必要なので、手伝いをしてくれる人間をアルバイトとして雇ってよいとのことじゃった。
ならば、わしが雇うのはひとりじゃ。
「レオ坊。これからよろしく頼むの」
「もちろんだ、姉上。任せてくれ」
レオ坊をアルバイトで雇ったのじゃ! レオ坊が講義を手伝ってくれるならば、わしとしても助かるからのう。
「アリスさん。私も手伝えることがあるならば手伝いますからね!」
「おお。助かるぞ、グレイス」
わしとグレイスは今は同じ常勤講師の地位だ。同時にグレイスは講師としてはわしの先輩でもある。グレイスから講師としての秘訣などを聞いておくのもよいかもの。
わしは古代帝国時代には師として弟子たちに教育をしておったが、古代帝国時代から教育についても進歩があったじゃろうからな。どんなものでも過去より発展したものはどんどん取り入れていきたいものじゃ。
そのようなことを考え、レオ坊やグレイスに手伝ってもらいながら、わしは講義に向けて準備を進めたのじゃった。
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