古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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教えて、アリス先生!//講義の始まり

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 ──教えて、アリス先生!//講義の始まり

 

 

 わしの初講義の日が訪れた。

 

 最初の講義が行われるのは魔術学部の講義室じゃ。

 

 わしは緊張しながらレオ坊を一緒に講義室に入る。

 

「おほん! 今回からこの実戦魔術の講義を担当するアリス・カニンガムじゃ。よろしく頼むの、諸君!」

 

 わしがそう言って挨拶する相手は20名ばかりの男女じゃ。

 

 アルビオン陸海軍の将校も出席するという講義じゃったが、軍服姿の人間は12名程度じゃろうか。男性ばかりで軍人らしい逞しい肉体の持ち主たちじゃった。

 

「子供……?」

 

「小さいな……」

 

 軍人たちはわしを見るのは初めてのようで、わしがちんまいのに驚いておった。

 

 あとは魔術学部の中で興味を持った普通の学生たちであり、彼らは魔術学部では有名となったわしらのことを知っておるので、驚く様子はない。

 

「さて、諸君に実戦で使用される魔術への対応を教えるのがわしの務めじゃ」

 

 わしは胸を張ってそう言う。

 

「その前に魔術の常識というものを確認していこうではないか」

 

 魔術を知らずして、魔術に対抗することは不可能。なので、まずは魔術について教える必要があるじゃろうな。

 

「まず魔術の理論じゃ。魔術は様々な力を使って表面構造(テクスチャ)と呼ばれる世界の理を書き換えるものじゃ。この書き換えは永久的なものではなく、表面構造(テクスチャ)の復元力によっていずれ修正されるものじゃ」

 

 わしは表面構造(テクスチャ)への上書きのための手段を説明し、表面構造(テクスチャ)への書き換えは元の記述から外れる規模が大きければ大きいほど強く復元力が働くことを説明した。

 

 ここまでは基本じゃの。

 

「さて、ここまでの話で分かったじゃろうが、魔術はこの世界の理を書き換えるものじゃ。諸君らはこの世界の理に従って生きており、その理を常識として生きてきたじゃろう。じゃが、魔術はそのような常識を根底から覆すものじゃ」

 

 わしはそう説明しながら、魔術を使って持ってきた教科書の束を重力に反する方向へと浮かべる。その様子を見た軍人たちは魔術というものを始めてみたのじゃろうか。とても驚いておった。

 

「このように魔術は諸君の常識を超えてくる。それに備えるにはどうすればよいのかと疑問に思うじゃろう」

 

 わしらは常識を下に生活し、行動しておる。それから大きくそれた生活をするのはある種の天才か、またはある種の狂人だけじゃ。

 

「答えは魔術を認識したら、全ての常識を一旦リセットすることじゃ。そのときだけは常識に囚われずにに行動せよ。魔術師が相手である以上、何が起きても不思議ではないのじゃから」

 

 わしはそこで一旦話を区切る。

 

「ここまでで質問は?」

 

 わしが尋ねると陸軍の紺色の軍服を着た男性が手を上げる。

 

 20代後半という年齢じゃろう若い軍人で、階級章は陸軍中尉じゃった。軍人らしく黒い髪を短く切りそろえておる大柄な若者じゃ。

 

「先生。常識を捨てろと仰いますが、我々の戦術や武器はその常識に従って作られてきました。それを破棄して戦うというのは困難です。その点は我々はどのようにすべきなのでしょう?」

 

 その若い軍人はそう質問した。

 

「うむ。なかなかに良い質問じゃ。わしは今までの常識を一度捨てるべきだと言ったが、その代わりになる常識をこれから教えてゆく。その新しい常識とさらに諸君らの観察眼によって、戦い方を新たに生み出してほしい」

 

 わしはそう言って、魔術の常識についてのレクチャーを始める。

 

「まず魔術は何でもできるように見えるが、そうでもない。限られていることはある。その最たるものが、魔術は行使できるのは自分の目の届く範囲内ということじゃ」

 

 これは基本じゃな。

 

「魔術で自分から遠く離れた場所の表面構造(テクスチャ)を書き換えることは基本的にできぬ。魔術師はその射程が限定されておるというわけじゃよ」

 

 何も魔術師はあらゆるものを好き勝手に改変できるわけではない。その力にもちゃんと限りがあるのじゃ。

 

「それから先ほど述べたように大規模な改変ほど、表面構造(テクスチャ)の復元力を強く受ける。それゆえ大規模な改変ほど永遠に続くことはない」

 

 わしの説明に講義を受けておるものたちがノートを取ったり、頷いたりする。

 

「そして、何より魔術師も人間だということじゃ。魔術師にも注意をそらすことや、複数の方向から攻撃を仕掛けることは有効じゃ」

 

「なるほど」

 

 魔術師に対しても人間と同じような戦術は通用するのじゃよ。

 

「さて、おぬしらは魔術を見たことのないものもおるじゃろう。百聞は一見に如かずともいう。そこでわしがいろいろと魔術を披露しようではないか」

 

 わしはにやりと笑うと学生たちを連れて、グラウンドへと向かった。

 

 

 * * * *

 

 

 グラウンドに集まった学生たちを前にわしが立つ。

 

「諸君はどのような魔術が見てみたいかの?」

 

 わしは学生たちにそう尋ねる。

 

「よろしければ、以前の学園襲撃にかかわった魔術を教えていただきたい」

 

 講義に参加しておる30代ほどの海軍将校がそう頼んできた。

 

「よろしい。では、あのときの戦いで使われた魔術をひとつずつ再現しよう」

 

 わしはそう言ってレオ坊の方を見る。

 

「レオ坊。適当な的を用意してもらえるかの?」

 

「了解だ、姉上」

 

 わしが頼むとレオ坊は一般魔術を使って人型の石像を生み出した。

 

「まずはわしが相手を攻撃した際の方法じゃ。運動エネルギーを操る魔術であり、魔術の中でもシンプルな攻撃になる」

 

 わしはそう言って運動エネルギーを生み出す魔術を使い、レオ坊の生み出した石像を攻撃する。無数の運動エネルギーが一瞬で石像に叩き込まれて、石像は瞬く間に破壊されて行ったのじゃ。

 

「おお……っ!」

 

「これはすさまじい……」

 

 魔術を始めてみた軍の将校たちほど、わしの魔術に驚いておった。

 

「次に相手が使った魔術を再現してみよう。使い魔(ファミリア)の創造じゃ」

 

 ここでは有視界圏外への攻撃を披露しても、それを学生たちに実感させるのは難しい。そこで使い魔(ファミリア)の創造だけを披露しておくとしよう。

 

使い魔(ファミリア)は異界魔術で生み出される。このようにな」

 

 わしは異界に存在する生き物を表面構造(テクスチャ)に上書きすることによって生み出した。

 

 生み出されたのは一本の角を持った逞しい馬、一角獣じゃ。異界に存在する生き物ということが分かりやすい特徴を持った使い魔(ファミリア)として適切だろう。

 

「どうじゃ? 魔術ではこのように使い魔(ファミリア)を生み出すことが可能なのじゃ。術者の技量にもよるが、自在に操ることともできる」

 

 わしはそう言って召喚した一角獣をグラウンドに走らせた。一角獣は躍動感のある動きで、軍馬のようにたくましくグラウンドを走りまわり、学生たちを驚かせた。

 

「しかし、このような使い魔(ファミリア)も有視界圏外に出れば消滅する」

 

 わしは一角獣を遠くまで走らせると、学生たちの前から一角獣は消えていった。

 

「これが魔術というものじゃ。諸君らはこの魔術を取得するか、この魔術に対抗することを考えておるじゃろう。そうであるならば、わしが丁寧に教えよう」

 

 しかし、とわしは一応前置きする。

 

「わしは魔術をただの殺しの道具とは思ってほしくない。魔術は人類の可能性における選択肢じゃとわしは思っておる。可能であるならば魔術を殺すことや傷つけることだけに使わず、人々の幸せのために使っておくれ」

 

 わしがそう言うと学生たちはしっかりと頷いてくれた。

 

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