古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──教えて、アリス先生!//演習の求め
わしは実戦魔術の講義で学生たちとともに、どのようにして学院を襲撃したような魔術師と戦うのかを議論しておった。
そこで軍人たちが着眼したのは魔術そのものではなく、魔術師という人間じゃった。
正直、魔術で何が起こせるかはわしですら簡単に想像はできぬ。じゃが、魔術師であっても人間じゃ。そして人間には何ができて、何ができないかは分かっておる。
軍人たちは魔術師が人間であるという弱点を狙うことで、何が起きるか分からない魔術に対抗しようとわしに何度も意見を述べていた。わしも彼らの意見を検討し、それが可能か不可能を教えていった。
そのような講義が行われて行く中で、ある依頼がわしの下に舞い込んだ。
「演習を行いたい、と?」
わしは講義を受講しておる軍人のひとりの言葉に首をひねる。
「ええ。この手のことは実際にやってみなければ、どのような問題があるのか分からないところがあります。なので、実際に我々が考えた魔術への対抗策が実現可能なのかを確かめたいのです」
そう言うのは陸軍中佐で、わしの講義を受けている軍事の中ではもっとも高位の軍人かつ最高齢の人間じゃ。名前はエドワード・ヴォイト。年齢は40代で、わしの父上と同じようにお洒落な髭を口に蓄えておった。
「わしとしては異論はないが、場所や日程を考えねばならぬぞ?」
「それについてはこちらで準備を。陸軍省にも問い合わせましたが、あなたの承諾があれば準備するとのことです」
「ふむふむ」
わしは魔術を純粋な武器とすることには反対じゃが、戦いに備える必要性を理解しておらぬほどの能天気ではない。
事実、前回の学院襲撃事件の際に魔術について知っており、ある程度それを使える警察の人間などがおれば、あのときの犠牲はまだ押さえられたかもしれぬのじゃから……。
「そのようなことであれば引き受けよう。わしも試してみたいことがいろいろとあるからの。よろしく頼むのじゃ」
「こちらこそありがとうございます。それでは後程、日取りと場所をご連絡します」
エドワードはそう言って頭を下げて、わしがいるトーランド教授の研究室から退室していった。
「魔術を使った実戦演習、というわけかい?」
そこでマックスがそう尋ねてきた。
「そうなるのう。このような試みは初めてなのじゃろうか?」
「少なくとも俺は聞いたことがないね。初めてなんじゃないだろうか」
「そうなるとますます興味深いのう」
現代の科学の武器を手にしている軍隊と魔術が衝突すれば、どのような結果を生みのか。それが試されるというわけじゃ。
「しかし、魔術師サイドは君とレオだけ?」
「そうなるのう。まだ演習の形式すら分からぬが……」
純粋な魔術師と軍隊が対決するのか、それともわしら魔術師サイドにも軍隊がつくのか。そこら辺はエドワードに任せるしかないのじゃ。
「もし、人手が必要なら学生たちに声をかけてくれるようにアイザックやトーランド教授に頼んでおくよ」
「おお。助かるのう、マックス」
マックスがそう請け負ってくれて、わしは安堵したのじゃった。
* * * *
そして、演習の形式がようやく分かった。
どうもエドワードと陸軍は学院襲撃事件のようなことがまた起きた場合に、どのように行動すべきかを明白にしておきたいようじゃった。
というのも、演習場所は市街地を模した特殊な場所が使用され、魔術サイドであるわしとレオ坊を相手に、陸軍の1個歩兵中隊と少数の騎兵が加わった部隊が相手になるということなのじゃ。
まさに少人数の魔術師がテロを起こした場合、軍がどう行動するかの実験じゃな。
「この形式でよろしいでしょうか?」
エドワードは演習に関する資料をわしに渡したのちにそう確認する。
「構わぬよ。お互いに怪我をせぬようにしよう」
演習と言えど事故などが起きて、怪我人や死人が出ぬようにせねば。事故はどこでどう起きるか分からないのものなのじゃから。
「ええ。安全対策は十分に行う予定です」
エドワードはそう言って演習について語る。
「まず実弾は配布しません。各部隊には演習の判定を行う人間が随伴し、その人間が攻撃の成否を決定します。あなた方、魔術師サイドにも同様の人間が随伴する予定です。よろしいですか?」
「なるほどのう。大丈夫じゃよ。わしらも手加減して攻撃するようにするからの」
「助かります」
ということで、演習の日取りなどが決定し、わしらは北部にある演習場を目指した。
* * * *
演習の当日。
わしらが陸軍の演習場に入ると既にそこにはカーキ色の戦闘服を纏った兵士たちがずらりと整列しておった。
その中から大佐の階級章を付けた人間が前に出て、わしらと相対する。
「今回の演習の相手となるノーザン・ハイランダー近衛擲弾兵連隊の連隊長を務めているオークリー・ピアーズ大佐だ。よろしく頼む」
「よろしくのう、大佐。アリス・カニンガムとレオ・カニンガムじゃ」
それからお互いに挨拶を交わし合う。
「では、今回の演習で想定する状況について説明する」
ピアーズ大佐はそう言って地図を指さした。地図には演習場の地形が記されており、中心部には市街地を想定して建てられた建物が記されておる。
「我々はこの市街地を占領した魔術師を相手に市街地を奪還するという想定で演習を実施する。こちらからは連隊に所属する歩兵1個中隊と騎兵1個小隊が奪還を目指す」
歩兵1個中隊と言うのは約100名の兵士からなり、騎兵1個小隊は30名の兵士からなる。つまり戦力的にはわしらは6倍近い相手と戦うことになるわけじゃ。
「わしら側に何か制限はあるじゃろうか?」
「使用するのは安全のために非致死的な魔術に限ってほしい。それ以外はどのような手段であろうと使ってもらって構いはしない。我々は魔術師というものについて理解を深めたいのだから」
「了解じゃ」
わしはピアーズ大佐の言葉に頷く。
「それでは演習を開始しよう。配置についてくれ」
演習が開始されることとなり、わしとレオ坊は陸軍が装備している軍用の馬車で、演習場の中心部にある市街地へと向かった。わしらには演習の判定を下す将校が一緒について来ておる。
「演習開始時刻まで間もなく」
その将校がわしらに告げる。
「姉上。作戦通りに?」
「ああ、レオ坊。わしらの魔術をしっかりと見せてやろう」
わしとレオ坊は作戦を立てておった。
銃の射程に入れば、無条件で負けと言っていいじゃろう。わしらの魔術でも銃弾の速度には即応できぬ。
よって銃を使用不可能にするか、あるいは銃の射程外からの攻撃を行う。
「作戦通り、わしは狙撃担当じゃ。レオ坊は周辺警戒を」
「了解だ」
わしは銃の射程外からの攻撃を行い、レオ坊は銃がその射程を生かせない近距離での戦闘を担当する。
「演習開始!」
そして、ついに演習が始まった。
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