古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──子供時代//今世で初の魔術師と遭遇
わしにぶつかった女性はブルネットの髪を肩まで伸ばした長身の女性じゃった。整った顔立ちに丸いレンズの眼鏡をかけており、とても女性らしい体のラインをしておる美人さんじゃ。
「そうです、そうです! 私
女性はそう言って胸を張って見せた。胸のサイズも凄いのう。
「私はグレイス・イーストレイクと言います。あなたは?」
「アリスじゃ。アリス・カニンガムと言う。よろしくの、グレイス」
わしはグレイスに自己紹介にそう応じる。
「アリスさん。あなたはどこで魔術を? どの家の子ですか? 使える魔術はどれくらいです? あと何歳ぐらいから魔術の訓練を? それからそれから……」
「お、落ち着くのじゃ。質問はひとつずつ頼む!」
興奮した様子のグレイスをわしは必死に制止した。
「アリス? どうしたんだい?」
と、ここで父上がわしがグレイスを話しているのに気付いて戻ってきた。
「あ。アリスさんのお父様ですか? 私はエルダーグローブ学院非常勤講師のグレイス・イーストレイクと言います」
「これはどうも、グレイスさん。うちのアリスに何か御用ですかな?」
「お子さんの魔術の才能にはお気づきでしょうか?」
「ええ。6歳のころから魔術の練習をしていましたから」
「ろ、ろ、ろ、6歳でっ!?」
グレイスが目玉が飛び出そうなほどに驚いておる。あまりに大きな声で叫んだので、周りの通行にもしげしげとこっちを見てきて、『何をやってるんだ、あの連中』という感じの視線がいたいのじゃぁ……。
「し、失礼ですが、血統魔術師の家系であられますか?」
「まさか! うちは子爵家ですが、私も妻も魔術は一切使えません」
グレイスが少し畏まった様子で尋ねるのに父上は苦笑して否定する。
「では、どのようにして魔術を……?」
「自然と覚えたそうなのです」
いやいや、父上! わしは前世があるからと言ったであろう!?
「そ、そのような天才が存在するとは……!」
まあ、前世云々の話をよそ様にする気にならないというのは分からんでもないが。
「ぼくも魔術は使えるよ! ほら!」
そこでレオ坊がそう言うと彼は水玉を浮かべ、自在に操って見せた。レオ坊は覚えも早く、わしからみるみると魔術について吸収していった。今ではこのように自由に水を操作することもできる。
「お、おおっ!? これも自然に覚えたのですか!?」
「いや。レオ坊にはわしが教えたのじゃよ」
またしても目を見開くグレイスにわしがそう言って小さく笑った。
「お、お、教えたあっ!? 魔術をただ使うだけではなく、他者にそれを教えられると……!? つまりアリスさんは理論的に魔術を理解しているということですよね!? ですよね!?」
「う、うむ。そうなるの、一応」
「な、なんと……!」
それからグレイスは暫し放心状態だったが、やがて父上の方を血走った目で見た。
「お父さん! すぐにアリスさんとレオさんをエルダーグローブ学院に通わせましょう! 私が懇切丁寧にふたりを教育して、いや共同研究しますから! 絶対に、絶対に、ぜーったいにそうするべきです!」
「い、いや。うちは家庭教師を招いているから、学院に興味はないんだが。それにエルダーグローブ学院は首都の学校だろう? うちは西部の方に暮らしているし、まだふたりは自分たちでやっていくには幼い」
父上は困惑しきっておる。わしも同様で、レオ坊だけきょとんとしておった。
「で、ですが、この才能をこのまま放置するのはアルビオンの魔術界、いや世界の魔術の発展において甚大な損失です! この才能は必ず、絶対に、確実に伸ばさなければなりません! どうかご決断を! 魔術の発展と繁栄のために!」
「そう言われてもね。今は無理だよ」
そう言って父上は懐から懐中時計を取り出して時間を確認。
「私たちはそろそろ用事があるから失礼するよ、グレイスさん。まあ、気が変わったら連絡するので連絡先を交換しておこうか?」
「ええ、ええ! 是非ともお願いします!」
それから父上とグレイスは連絡先を交換し、別れた。
「アリスさーん! レオさーん! 絶対にまた会いましょうねー!」
グレイスはぶんぶんと手を振ってわしらを見送っておった。
なんともエキセントリックな女性じゃったが、わしも少し考えておった。魔術は確かに衰退したのかもしれないが、古代には分かっていなかったことも新たに分かった可能性もある。
だから、新しい知識を取り入れるのに、この時代を生きる魔術師と意見を交換するというのは、決してわるいことではないじゃろう。
ただ、父上が言ったようにわしらの暮らすオールデンウィック領から首都までは遠く、首都にあるというエルダーグローブ学院に通うのは難しいということじゃ。
わしは前世がある故一人暮らしをする自信はあるが、レオ坊は無理じゃろう。そして、レオ坊をおいてわしだけ首都で暮らすというのはレオ坊に悪い。レオ坊はわしに一番弟子になったのじゃからな。面倒を見てやらねば。
「さあ、行くよ、アリス、レオ」
「はいじゃ、父上」
わしらは父上の商談に向かうために馬車に乗り、商談場所のホテルに向かった。父上は貴族であり、実業家なのでロンディニウムで商談をすることは度々あるらしく、ロンディニウムについては勝手知ったる様子であった。
ホテルまでは馬車でに向かうのじゃが、そこで見える街並みはまた凄かった。
このロンディニウムが位置してた場所は、古代帝国時代には北の蛮族の動きを見張るための小さな砦があっただけじゃと記憶しておったのだが、今では古代帝国のどのような都市よりも反映しておる。
「父上、あれは!?」
さらにわしはそこで馬車以外の乗り物も見つけた。馬車とは異なる形状ながら人が乗っており、そして馬車と同じくらいの速度で走る謎の車両じゃ!
「あれは自動車だよ。ロンディニウムでは珍しくなくなってきたが、私たちの暮らす場所だと珍しいね」
「自動車……」
これもまた科学が生み出したものなのじゃろう。
ただ、ひとつ気づいたが自動車というものが通ったあとは煙たい。恐らくは鉄道と同じように蒸気を燃料にし、そのために燃料を燃やしてるから煙が出るに違いない。
「自動車も木炭を燃やして走るのかの?」
「いいや。あれは石油で動くはずだ。蒸気機関とは違う内燃機関で駆動するものだよ」
「ないねんきかん……」
「そう。蒸気機関は燃料を燃やして水を沸騰させることで生じた蒸気を利用するけど、こっちは燃料を燃やした際に生じる力そのもので動くものだよ」
ううむ。わしの予想は外れたが、自動車というものが興味深いものであることには変わりがない。わしも早くこの世界に適応するために新しい物事をどんどん吸収していかねばならぬの!
と、わしが決意を秘めたのちに馬車はホテルの前で停まった。
ホテルはわしが前世で見た宮殿のように豪華なものじゃった。これを皇帝やその血筋に連なるもの以外が利用できるとは、本当にこの時代には驚かされてばかりじゃ!
「それじゃあ、父さんは商談をしてくるから、アリスとレオは部屋にいなさい。あとで街を案内してあげるからね」
「はい、父上」
この街に興味は尽きぬが、今は幼子して親に迷惑をかけぬようにしておこう。
「レオ坊、ここから通りが見えるぞ。馬車に、自動車に、人がたくさんじゃ」
「わー! 凄い、凄い!」
わしとレオ坊はホテルの窓から華やかで、賑やかなロンディニウムの景色を眺めながら、父上の大事な商談が終わるのを待ったのだった。
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1章分書き終えているので毎日更新で出していきます。