古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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帝国//民族主義者

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 ──帝国//民族主義者

 

 

 偉大なるエスタシア帝国には異なる民族が多く暮らしている。

 

 大帝国の常として多民族国家化するという宿命があるが、エスタシアもそれを逃れたわけではなかった。

 

 18世紀まで行われた積極的な同化政策が、近年大きな批判を浴びて取り消されてからというもの、異民族の中には帝国からの分離独立を掲げる過激派は現れ始めていた。

 

 同化政策を批判されたエスタシア政府であったが、だからと言って帝国を揺るがす分離独立を認めるつもりはなく、一部の地域では治安部隊と民族主義者の内戦に近い戦闘が繰り返されていた。

 

 その民族主義者を支援しているのは外国政府だとも言われていたが、他にも彼らを支援しているものはいた。意外な存在が彼らを支援していた。

 

 それはカルレンツィア地方と呼ばれる場所で分離独立を掲げている戦線という組織においてである。

 

 カルレンツィア地方はエスタシア帝国の南東部に位置する場所で、かつては帝国の重工業を担っている場所であったが、分離独立の動きが生まれ、治安が急速に悪化すると帝国資本は引き上げてしまった。

 

 今ではテロと虐殺が横行する危険な土地だ。

 

 そのような土地にあるかつての缶詰工場であった建物の地下に、カルレンツィア民族戦線は拠点を置いていた。

 

「聞け、同志たちよ!」

 

 カルレンツィア民族戦線はヴィクトル・ドレジャルという元帝国陸軍の大佐だった人物によって率いられていた。

 

「帝国はまたしても我々に鎖を付けようとしている! 我々の土地にある重要な遺跡を掘り返そうというのだ! 我々の先祖たちが守ったものを、どうして帝国の連中に暴かせることができようか!」

 

 ドレジャルが訴えると賛同の声が地下に響く。

 

「やつらに思い知らせてやらなければならない! カルレンツィアに存在するものはカルレンツィアの民のものだと! このような墓暴きを画策している連中に思い知らせてやるカルレンツィア民族のである!」

 

 そう、カルレンツィアの遺跡こそエリオットたちが発掘を目指している遺跡だ。

 

「我々は発掘を画策しているエスタシア政府と暴君アルブレヒトの手先たる世界魔術連盟を襲撃して、連中に大打撃を与える! 連中を皆殺しにしてやるのである! 壊滅させてやるのである!」

 

「おお!」

 

 ドレジャルの演説にカルレンツィア民族戦線の兵士たちが歓声を上げた。

 

「我々に勝利を! 敵に破滅を!」

 

「我々に勝利を! 敵に破滅を!」

 

 カルレンツィア民族戦線の兵士たちは叫ぶ。熱烈に叫ぶ。

 

「攻撃目標は世界魔術連盟が晩餐会を開く、ホテル・グラン・ベルハルデン! これを我々は総力を挙げて襲撃する!」

 

 彼らの狙いはアリスたちも出席する晩餐会の会場。

 

「ひとりでも多くの帝国の人間を殺すのだ! 帝国に血を流させろ! 夥しい血を流させるのだ! それが勝利へとつながる!」

 

「勝利を!」

 

 おおおおっと場が湧き、ドレジャルは満足げに頷いて演台を降りた。

 

「同志ドレジャル。手筈は整っていますよ」

 

 そこで不意にドレジャルの傍に姿を現したのは、ひとりの若い女性で、長い金髪をぼさぼさに伸ばしていた。また、その体には医師のような白衣を纏い、その下には黒いワンピースを身に着けている。

 

「ありがとう、同志ヒルデリカ。我々カルレンツィア民族戦線は君たち()()()()の協力に感謝する」

 

 ドレジャルはヒルデリカと呼ばれた女性にそう述べた。

 

「いえいえ。我々は正義のために戦っている人々を援助しているだけです。あなた方のような理想を抱いた人々は支援されるに値する」

 

 ヒルデリカはそう不気味な笑みを浮かべてドレジャルに告げた。

 

「我々魔女学会もあなた方の勝利を願っています。襲撃は私の計画した段取り通りに」

 

「ああ。帝国に大打撃を与えてやろう」

 

 それからカルレンツィア民族戦線は動き出した。

 

 密かにカルレンツィアの内戦地域を囲む帝国の治安部隊が設置した警戒線を越えて武器が帝都ベルハルデンへと運ばれ、人員もばらばらのルートを使ってベルハルデンに入っていく。

 

 鉄道で、馬車で、徒歩で。兵士たちは身分を偽り潜入する。

 

 そしてヒルデリカもいつの間にはベルハルデンへと入っていた。

 

「この晩餐会に例の天才姉弟が出席、と。それに加えて()()()()を嗅ぎまわる厄介なアルブレヒトも出席する」

 

 ヒルデリカはベルハルデンの安いホテルの部屋でそう呟く。

 

「あそこを暴かせるわけにはいかない。あそこは我々魔女学会のもの。禁断の知識が眠る場所。大図書館の発掘を阻止するためならば、カルレンツィア民族戦線だろうと他のどんな人殺しにだろうと手を貸しましょう……ふふふ」

 

 ヒルデリカはそう不気味に笑った。

 

 カルレンツィア民族戦線の兵士たちは配置に着き、合図を待っている。

 

 ベルハルデンを燃え上がらせる合図を。

 

 

 * * * *

 

 

「おお。ここがホテル・グラン・ベルハルデンかのう!」

 

 わしらはアルブレヒト殿下に招待された晩餐会が開かれるホテルにやってきた。そう、それはホテル・グラン・ベルハルデンじゃよ。

 

 ホテル・グラン・ベルハルデンは宮殿のように立派な作りをしておるもので、馬車に混じって少なくない自動車が停車しておった。ここに来る人間はなかなかに最近の流行に敏感なのじゃのう。

 

「ううむ。エスタシアはやはり自動車化が進んでいるのですね。重工業に力を入れているとは聞いていましたが」

 

 グレイスは並ぶ車を見てそう呟いておる。

 

「今日の晩餐会にはどのような人間が出席するのかのう?」

 

「世界魔術連盟のメンバーとエスタシア魔術界の人間が出席すると聞いていますよ。それからアルブレヒト殿下ですね。アルブレヒト殿下が橋渡しをしてくださるわけです」

 

「そうだったのう。アルブレヒト殿下にはお世話になるわい」

 

 アルブレヒト殿下のおかげでエスタシアの魔術師たちとも繋がりができる。それは魔術の再興を考えるわしにとって何よりのことじゃ。

 

「姉上は魔術を再興するための組織が必要だと考えていたみたいだけど、それは世界魔術連盟でいいのではないか?」

 

「そうじゃな。ここでそれを見定めるつもりじゃ。世界魔術連盟がそれに値する組織ならば、わしはこの組織を通じて魔術の再興に着手しよう。じゃが、そうでなかったならば、別の方法を考えねばならぬのう……」

 

 世界魔術連盟は今のところ、そこまで大きな問題のある組織には見えないのじゃ。アルブレヒト殿下が仰るように魔術の発展を促進するという、崇高な使命に従事しておるように思えた。

 

「さて、いろいろと考える前に受付を済ませましょう、アリスさん、レオさん!」

 

「そうじゃの」

 

 わしらは招待状をホテルのカウンターに持っていって、そこで受付を済ませる。

 

「アリス・カニンガム様、レオ・カニンガム様、グレイス・イーストレイク様ですね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

 

 さあ、晩餐会の時間じゃ!

 

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