古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──帝国//誓い
それから30分ほどでわしらの招かれた世界魔術連盟及びエスタシアの魔術界の人間が集まる晩餐会が始まった。
「ここに集まった諸君! あなた方は恐れることなく魔術を探求する開拓者たちだ! あなた方は日々、我々人類に新しい発見を提供している! 私はそのことを心から嬉しく思わざるを得ない!」
冒頭はアルブレヒト殿下の挨拶から始まった。
「我々人類はかつてもっと多くの魔術を使っていた。異界魔術や精霊魔術と言われるものだ。だが、それらは古代帝国の滅亡とともにほとんど失われ、我々はそれを引き継ぐことができなかった……」
アルブレヒト殿下は悔やむようにそう語る。
「だが、それでも我々は諦めない。祖先たちが無から魔術を発明したというのならば、我々もまたそうするだけだ! 我々は再び魔術の栄光を手にする! あくなき探求心と冒険心によって!」
アルブレヒト殿下はそう言って両手を大きく広げた。
「今日はそれを成し遂げた人間を招待している。アリス・カニンガムとレオ・カニンガムの両名だ。彼らは失われた異界魔術を取り戻し、それによって英雄的な活躍を成し遂げている。拍手を!」
そして、わしらが紹介されて盛大な拍手が送られた。照れるのう……。
「さて、今日の主賓であるアリス・カニンガムから挨拶をしてもらおう」
ここでアルブレヒト殿下がわしにそうバトンタッチする。
「ごほん。殿下の紹介に預かりましたアリス・カニンガムですじゃ。この度は皆様にお会いできて光栄の限りです」
わしは会場を見渡してそう言う。
「ここにいる皆様がそうであるように、わしも魔術を探求しております。魔術を再び人類の可能性とするためにですじゃ」
わしが挨拶するのを列席者たちは静かに聞いておられる。
「古代帝国に存在した魔術は残念ながら完全にはこの時代に引き継がれなかった。それによって我々が失ったのは単なるひとつの技術ではなく、人類の選択肢であり、可能性だったとわしは考えております」
わしはずっとこう訴えていた。魔術とは人類の選択肢であり、可能性じゃと。
「こうして魔術を探求する皆様と交流することで、わしが目指す魔術の再興というものに近づければ幸いですじゃ」
わしがそう言って挨拶を終えて頭を下げると、万雷の拍手が送られた。
「ありがとう、アリス。では、今日は我々が目指す魔術の再興について語り合いながら、ときを過ごすとしよう!」
それから料理が運ばれてきて、晩餐会が始まった。
「アリスさんとレオさんは異界魔術を再発見されたということですが、何かヒントのようなものはあったのですか?」
食事をしながら、世界魔術連盟やエスタシアの魔術界の人間がわしらに質問する。
「そうじゃのう。強いて言うならばアストリウスの話を読んだことじゃろうか」
「アストリウスの新しい資料を発見されたのですか?」
「違うよ。何というか、彼の魔術への探求心に影響を受けたというか……」
ここでわしがアストリウスの生まれ変わりだと言っても、また鼻で笑い飛ばされるだけなんじゃろうなあ……。
「しかし、異界魔術が蘇ったということは、あとは精霊魔術を取り戻せば我々は古代帝国の時代に栄えていた魔術を全て手にすることになりますね」
「ああ。素晴らしいことだ。とは言え、一般魔術もまだ古代帝国にはさらに高度だったという資料もある。まだまだ我々は探求を続けなければ」
列席者たちはそう言葉を交わす。
「アリス。君の魔術再興に関する計画を語ってみてはどうかな?」
と、ここでアルブレヒト殿下がわしにそう求める。
「そうですのう。わしが目指す魔術の再興にはいくつかの柱があるですじゃ」
求めに応じてわしはそう語り始めた。
「まず教育。多くの教育機関でもっと広く魔術を教え、普及させることで、魔術に対する理解を深め、同時に多くの魔術師を養成する」
教育は重要じゃ。わしも古代帝国時代には師であったから知っておる。
「それから知識の保存と継承。古代帝国の滅亡の際に魔術に関する資料が散逸したことで魔術は一度失われました。そのようなことを繰り返してはならない。わしらは知識を守り、そして引き継ぐのですじゃ」
これからも魔術を支え続けるために重要なのは知識というものを保存し、次の世代に継承すること。古代帝国の滅亡の際の悲劇を繰り返してはならぬ。
「次に自然環境の回復と保護によって、精霊を再びこの地上に蘇らせること。精霊魔術を再興するには精霊が暮らせる環境は必要で、そのような自然環境は人類の健康にとっても良いでしょう」
精霊魔術の再興には精霊が不可欠。精霊がいないのにどうやって精霊が使えるというのじゃ? その精霊をよみがえらせるには、精霊が暮らせる豊かな自然環境を整える必要がある。
「このようなものがわしの考える魔術の再興への道のりですじゃ」
そして、語り終えるとわしは列席者たちを見渡す。
「素晴らしい考えだ! まさに我々がなすべきことである!」
アルブレヒト殿下が拍手し、列席者たちからも拍手を受ける。
「しかし、しかし、だ。その理想のためには少なくない予算や政治的な伝手も必要になるだろう。それが問題だな」
「そうですのう。世界魔術連盟だけでは無理ですかな?」
「無理だろうな。ここはやはり魔術は素晴らしい人類の可能性であることを、人々に改めて示す必要があるように思われる。それによって注目が集まれば資金もコネも自然と集まるというものだ」
「やはりそうなりますかの」
実績がないものにはお金も人間も集まらないものじゃ。やはりどのようにかして、実績を示さなければならないのじゃな。
「だが、それでもアリスの魔術再興のための計画は讃える値する。そこで我々はひとつの決定を行い、誓いを立てたい」
アルブレヒト殿下がそう言う。
「我々はアリス・カニンガムの下で魔術の再興を行うと決定し、それをこの場で私は誓いたいと思う。異界魔術を再発見した彼女を旗頭にするのだ。彼女がこれまで存在した全ての魔術を再発見してくれることを祈って」
アルブレヒト殿下はそう言って列席者たちを見渡す。
「異論はありません」
「誓いましょう」
「誓いを!」
列席者たちはそれぞれそう言ってアルブレヒト殿下に賛同する。
「では、誓いを! 我々は必ず魔術を再興する! これは失われた技術としては決してならない!」
アルブレヒト殿下がそう言って誓いを立てたときじゃ。
突然、爆発音が響き、列席者たちがどよめく。
「どうした? 何があった?」
アルブレヒト殿下が控えていた侍従に尋ねると侍従は確認に向かった。
それから立て続けに銃声が響き、ホテルを警備していた治安部隊の指揮官と侍従が慌てた様子でアルブレヒト殿下の下に戻ってきた。
「で、殿下。襲撃です。このホテルは現在テロリストに襲撃を受けています!」
な、なんということじゃあ!?
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