古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
……………………
──暗殺計画//“悲観”のヒルデリカ
死者たちが蘇り、わしに襲い掛かる。
銃を握った国家憲兵隊の兵士の死体が、狙いをわしに定めて引き金を引き、さらには将校の死体がサーベルを抜いてわしに襲い掛かる。
「何の!」
わしは運動エネルギーを叩き込み、死者たちを退けようとした。
しかし、死者たちはすでに死んでおる。死んでおるものをそれ以上傷つけることは難しく、わしがいくら攻撃しても死者たちは立ち上がってまたわしを攻撃してきたのじゃ。
これではらちが明かぬ!
「やはり術者を直接狙うしかないのう!」
わしは狙いを死者たちから、ヒルデリカへと移した。
「覚悟してもらうからの!」
そして、運動エネルギーを一斉にヒルデリカに向けて放つ。
「おっと。それは既に報告を受けて、対処済みです」
しかし、ヒルデリカはわしの攻撃を相殺し、平然と佇む。
「なるほど。わしらが学院で使った魔術には対処してきたか。となると、他の方法を使わなければならぬのう」
「ふふふ。その前に葬り去ってあげますよ」
ヒルデリカは再び死者たちをけしかけてくる。今度は死亡したテロリストたちに死体まで混じっている状態じゃ。
「わしも学院で無為に過ごしておったわけではない。見よ!」
わしは
オレンジ色の炎が吹き上げ、周囲に爆風が走る。
そう、爆発を生じさせたのじゃ!
昔は爆発などという現象は未知の現象じゃった。それゆえにそれを魔術で引き起こすこともできなんだ。
だが、科学の発展が爆発とはどのようなものかを突き止めた。
わしはそれを学問として学び、
それによって生じた爆発は強大で死者たちを吹き飛ばした。
「やったかの!?」
わしはヒルデリカの状況を確かめようと、爆発の粉塵が舞う中で目を凝らす。
「危ないところでした」
ヒルデリカが生きておった。
その理由はシンプルじゃ。
「それは……異界の死者か……」
ヒルデリカの前に立って、彼女を爆風から守ったのは、巨大な生き物。人型をして装甲を身に着けているが、その首は存在しない。首のない人型が巨大なハルバードを構えて、わしの方を向いておった。
「ええ。異界の騎士の死体です。これからのこの方がお相手しましょう」
ヒルデリカがそう告げると首なし騎士が動き始めた。
ハルバードを高らかと振り上げて、わしを狙って振り下ろす。
「厄介じゃのう……!」
異界の死者は異界の存在ゆえにどのような性質を持つのか測りづらい。どれほどの打撃を与えれば倒れるのかも、そもそも攻撃が有効かもわからぬ。
「さあ、その首を刎ね飛ばして差し上げましょう」
ヒルデリカのその言葉と同時に首なし騎士の動きが加速し、わしを狙った猛攻を仕掛けてくる。わしは押されながらも攻撃を弾き続け、反撃のチャンスをうかがった。
恐らくはこの1体の騎士を退けても、ヒルデリカはまた新しく生み出すじゃろう。そうなればわしは消耗した状態で新手と戦うことになってしまう。
ならば、狙うべきはこの首なし騎士ではない!
「レオ坊! 手は空いておるか!」
「余力はある、姉上!」
「ならば、ちいとこの首なし騎士の相手をしておいておくれ!」
「任された!」
レオ坊はわしと首なし騎士の間に滑り込み、振り下ろされたハルバードを“
レオ坊はそのまま首なし騎士との交戦を開始。
「さて、ヒルデリカ。やらせてもらうぞ!」
わしはヒルデリカに向けて再び運動エネルギーをありったけ叩き込む。四方八方からの攻撃にヒルデリカは防戦状態になるも、わしの攻撃は彼女によって完全に迎撃されてしまっておった。
「この程度の攻撃、脅威にもなりません」
わしも理解しておった。この攻撃ではヒルデリカを叩けぬ、と。
しかし、これにも意味はあるのじゃ。
「では、次の騎士に来ていただきましょう」
ヒルデリカが新手を召喚しようとした、そのときじゃ。
銃声が響いた。
「え…………?」
ヒルデリカの胸が赤く染まり始め、血液が留めなく溢れる。
「な、何をしました……!?」
「簡単なことじゃよ……」
わしがやったのは倒れていた国家憲兵隊の兵士が持っていた銃の銃口を、
「魔術師としては外道かもしれぬが、使えるものは何であろうと使うのが戦いじゃ」
「そう、ですね……。残念でした……」
ヒルデリカはそういって倒れる。
「同志ヒルデリカ! おのれえっ!」
テロリストの指揮官であるドレジャルが逆上してわしに拳銃を向けた。
しかし、その拳銃の銃身が引き裂かれる。
「やらせない」
「レオ坊!」
攻撃を阻止したのレオ坊じゃ。レオ坊は既にテロリストの大半を制圧しておった。
そして、さらにここで頼もしい存在が現れた。
「国家憲兵隊だ! 手を上げろ!」
国家憲兵隊の応援じゃ! ついに間に合ったのじゃ!
「チェックメイトじゃよ、テロリスト。投降することじゃ」
「おのれ、おのれえ……! だが、私たちを倒しただけでカルレンツィアの民が帝国に屈することはない。カルレンツィアよ、永遠なれ!」
次の瞬間、ドレジャルの身に爆発が生じ、周囲に爆風が吹き荒れた。
「な、なんじゃあ!? じ、自爆したのか……!」
「全員! 残りの人間を確保しろ! 急げ!」
わしが呆然とする中、応援の国家憲兵隊が残ったテロリストたちを制圧していく。
それからテロリストたちは逃げ散り、ホテル・グラン・ベルハルデンを巡る戦いは終わったのじゃった。
「アルブレヒト殿下。ご無事で何よりです」
「うむ。アリスとレオのおかげだな。彼らに感謝せねば。彼らはまたしても英雄となったのだ!」
国家憲兵隊の将校がアルブレヒト殿下確認するのにアルブレヒト殿下はそう笑っておった。しかし、パーティに招かれた客人たちには被害がなかったのは不幸中の幸いじゃろうな。
「このテロリストたちの目的は何じゃったんだろうか……?」
しかし、わしにはどうしてホテルが襲撃されたのかが分からぬ。
「恐らくは民族主義系のテロリストだろう」
それに答えるのはパーティに招待されていたエリオットだった。
「帝国は多くの異民族を内包している。いくつかの場所では民族同士の対立は深刻だ。帝国からの分離独立を目指す勢力のテロは帝国ではさほど珍しくもない」
「そうなのか。それは残念なことじゃのう」
エリオットの語るのを聞いてわしは肩を落とした。
「ところで、君はまだちゃんと謝罪していなかったな。学院でのことはすまなかった」
「気にしてはおらぬよ」
「それでもだ」
エリオットはそういい、立ち去っていった。
こうしてわしらの帝国での滞在は波乱に満ちたものになったのじゃった。
……………………