古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──事件ののちに
のちの捜査で事件を起こしたのはカルレンツィア民族戦線という民族主義系のテロリストであったことが分かった。
そして、それにまたしても謎の組織である魔女学会が加担しておったことも。
「魔女学会はどうして今も異界魔術を使え、そして世界に牙をむいておるのか」
わしは帝国からアルビオンへと変える船の中でそう考える。
「連中が姉上と同じように自力で異界魔術に至った可能性は?」
レオ坊がわしにそう尋ねる。
「全く可能性がないとは言わぬが、それにしては異界魔術の幅が広い。一朝一夕で成し遂げられることではないのう」
「何者かが密かに古代帝国時代から魔術を継承しておったという方が、まだ可能性としては高いやもしれぬ。わしには前々から不自然に感じておったのだ。どうして異界魔術だけが完全に消滅したのじゃろうかと」
わしはルナフィーナに異界魔術を託した。
しかし、異界魔術は魔女学会を除けば、他のどの人間にも残されておらなかった。
継承の途絶えた異界魔術。それを唯一使用する魔女学会。
全く関係がないとは言えぬじゃろう。
「彼らが異界魔術を独占するために、意図的に異界魔術の継承を断った、と?」
「うむ。わしはそれも考えておる。前世のわし──アストリウスは異界魔術は信頼できる弟子に託した。その弟子が継承を怠ったとは考えにくい。となると、何ものかが妨害した可能性がある」
ルナフィーナは信頼できる弟子のひとりじゃった。あやつが異界魔術の継承を放っておくはずがない。
じゃが、誰かにそれを妨害されたのだとしたら?
原因がルナフィーナではなく、その後に人間に関わっているのやもしれぬ。
「では、彼らの目的は?」
「学院での狙いはわしらだった。連中は異界魔術や他の魔術が再び世に広まることを阻止しようしているのかもしれぬ」
「それが異界魔術を手にした私たちを襲い、魔術の振興を図った世界魔術連盟を襲った理由というわけか」
魔女学会は異界魔術の継承を断っただけでは飽き足らず、この世に再び魔術が広まるのを阻止しようとしている。そう考えると納得がいく。
「しかし、その理由は? 魔術が広がると彼らに何の問題があるのだろうか……」
「それは分からぬ。魔術そのものに問題はないと思うのじゃが……」
わしが世を去ったあとで魔術に大きな問題が見つかり、その門外が拡大するのを防ぐために魔女学会が魔術の広まりを阻止しようとしていることも考えた。じゃが、そう断言するに足る証拠はない。
「今はまだ何もわからぬの。これからの捜査に期待じゃ」
ここでいくら考えても、証拠がない以上妄想に過ぎぬ。わしらはここであれこれ考えるのを止めて、今はただ学院襲撃時間とホテル襲撃事件の捜査から何かが分かることに期待したのじゃった。
それから船はアルビオンに到着し──。
「父上、母上!」
港では父上と母上が待っておった。出迎えに来てくれたのかのう?
「アリス、レオ! また事件に巻き込まれたと聞いたよ。大丈夫だったかい?」
「心配ないよ、父上。こうして無事ですじゃ」
どうやらニュースでわしらが出席していたパーティが襲撃されたと聞き、心配して見に来てくれたようじゃ。
父上と母上には毎回心配をかけてしまっておるのう……。
「無事ならばよかったよ。それからね。昨日、女王陛下からまたアリスたちを宮殿に招きたいという招待状が来ていた。恐らくはパーティに関することだろう」
「おお。女王陛下から! 光栄ですじゃ!」
「うん。今日はゆっくり休んで、招待状の返事を書こう」
そして、その日は父上と母上とともに実家へと帰った。
それから女王陛下の招待状に返事を書き、わしらは女王陛下の招きで再びアルビオン宮殿を訪れたのじゃった。
アルビオン宮殿はいつ来ても緊張する場所じゃ。ここにアルビオン連合王国の君主である女王陛下がいらっしゃるのだからのう。
「ようこそ、アリス・カニンガム様、レオ・カニンガム様。どうぞこちらへ」
侍従に案内されてわしらは応接間に通された。
「緊張するのう、レオ坊」
「そうだね、姉上」
わしらが応接間で待つと侍従長が入ってきたので立ち上がる。
そして、シャーロット陛下がおいでになられた。
「アリス、レオ。この度はお礼を言わなければなりませんね」
シャーロット陛下はまずそう切り出された。
「あなたたちが守ったエスタシア帝国皇太子アルブレヒトは私のいとこです。あなたたちには私と血のつながった人間を守ってもらったことになります」
アルブレヒト陛下はシャーロット陛下のいとこだったのか。どこかで聞いたような気もしておったが忘れておったのかもしれぬ。
「アルブレヒトが殺害されていれば、帝国はより強固な諸民族への締め付けを始め、それによって戦争すら起きたかもしれません。あなた方の果たした役割は大きい」
「光栄ですじゃ、陛下」
陛下にそこまで評価してもらえたのは嬉しいことじゃ!
「今は首相から相談がありませんので私からあなた方に何かしらの栄誉を授けることはできません。ですが、エスタシアの方ではあなた方をアルブレヒトの命を救ったとして受勲の話があるそうです」
ほう! エスタシアから勲章かの!
「それはあなた方に相応しい栄誉でしょう。両国の友好のためにもぜひ受けていただきたい。よろしいですね?」
「当然ですじゃ、陛下」
わしとレオ坊がアルビオンとエスタシアの友好の懸け橋にもなるという話じゃな。
しかし、エスタシアの内紛の話を聞くと、どうにも手放しに喜べるとは思えぬのじゃが。わしらは別にエスタシアの異民族を憎んで、戦ったわけではないのでの。
「では、これからのあなた方の活躍を期待します」
シャーロット陛下は微笑んでそういったのじゃった。
わしらはそれから昼食をシャーロット陛下と一緒にするという栄誉をいただき、わしとレオ坊はエスタシアでどのようなことがあったのかを陛下に語った。
そして、わしらは宮殿を出たのじゃった。
「エスタシアから勲章が貰えるとはのう」
帰りの馬車の中でわしはレオ坊にそういう。
「姉上には魔術を再興するうえで、人脈が必要なのだろう? 勲章はその人脈を得る上で重要なものだと思う」
「そうじゃの。勲章を持っておれば、力のあるものたちにも無視されぬかもしれぬ」
「そうだよ。きっと尊敬されるに違いない」
レオ坊の言っているようにわしには魔術を再興するに当たって、人脈というものが必要になっておる。それがなければ、恐らくわしの考えている壮大とも言える事業を成し遂げるのは不可能じゃろう。
「レオ坊もわしのことを手伝ってくれるか?」
「もちろんだ、姉上。私はいつでも姉上の力になる」
「ありがとうな」
わしはレオ坊にも感謝しながら、学生寮へと戻っていった。
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