古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──学期末//試験と昇進
一応わしらの実戦魔術も講義のひとつとして、単位を出すか、出さないかを決めるテストをする必要があった。
そして、学期末はそんなテストが行われる時期である。
「実技試験か、筆記試験か」
わしとグレイスは頭を悩ませておった。
「実技試験は実戦魔術には相応しい試験じゃと思う。だが、わしらが行える限りの実技試験ではそれが実戦に有効か否かを求めるのは難しいじゃろう」
「そうですねえ。私がもっと戦闘に秀でていれば、文句なしなんでしょうが……」
実技試験の実施に人手が足りないということは確かにあったのじゃ。
「しかし、筆記試験では実技を重んじてきたこの講義で得たことがあまり発揮されぬ。どうしてものかのう……」
実戦魔術では基本的に実技ばかりを行っておった。なので、今さら筆記試験で評価するというのは、あまり好ましくなかろう。
「やはりここは実技で行くべきですよ。私の伝手で実戦に強い人を探してきます!」
「うむ。そうしよう。わしも方法をいろいろと考えてみる」
やはり実戦魔術な以上は実技で行くべきじゃな。そう考えてわしとグレイスは試験の準備にいそしみ始めた。
しかし……。
「応援に来てくれたのはレオさんだけです……」
「姉上。困っているなら手を貸すぞ」
グレイスが連れて来た実技試験の監督ができそうな人物というのは、レオ坊だけじゃったのだ。
「大丈夫じゃよ。試験はそう難しくないのでの!」
わしはようやくどのような試験にするのかを決めたのじゃった。
* * * *
そして、試験当日。
わし、レオ坊、グレイスは受講している学生たちのうち、学生として単位が必要な数名の人間をグラウンドに集めた。
「諸君。これから実技試験を行うのじゃ」
わしは学生たちにそういう。
「試験内容は簡単。わし、レオ坊、グレイスの3名のいずれかに魔術を使った攻撃を命中させればよい。それだけじゃ」
学生たちはそのわしの言葉にすぐに楽観はしなかった。彼らは既にわしらがどれだけ魔術か使えるかを把握しており、侮ってはおらぬということじゃな。
「さて、では早速始めようかの!」
早速、わしらは試験を始めた。
この試験で重要な点はふたつ。
自分を守り、相手の守りを崩す。それだけじゃ。
「やります!」
名簿順に名前が呼ばれ、学生たちが実技試験に挑む。
最初の学生は女子学生で、わしらのうちに誰を攻撃するかを一瞬で考えておる。誰を攻撃するか選ぶのも駆け引きであり、試験内容のうちじゃ。
何せ実戦じゃからのう。ただ魔術が使えればよいだけではないのじゃ。魔術に加えて戦術的な思考も必要とされるのじゃよ
「はあっ!」
そして、女子学生が狙ったのはグレイスじゃった。
「まだまだっ!」
「こちらからもゆくぞ!」
しかし、グレイスは攻撃を相殺し、わしが横から反撃する。軽く撃ち込まれた運動エネルギーによって女子学生の姿勢が揺らぐ。
女子学生は自分が攻撃を受けてしまったので、不合格かという顔をする。
「大丈夫じゃよ。説明したように攻撃を叩き込めば合格であって、反撃を受けても不合格にならぬ。強いて言うならば諦めたときが不合格じゃな」
わしはなるべく不合格者を出したくなかったので試験をそう設定したのじゃ。
「では、続けます!」
それからわしらは試験を継続した。
真正面から魔術を叩き込んでも相殺されるし、隙も生まれてしまうことを理解してもらいたいと思って作った試験じゃ。
逆に言えば真正面から挑まず、不意打ちに特化すれば3名にいる試験官の誰かには攻撃を当てることができる。そう想定しておる。
「うわっ!」
わしに攻撃すると見せかけて、グレイスに背面から襲い掛かった魔術が見事グレイスに命中し、グレイスがよろめく。
「うむ。ばっちりじゃよ!」
「やった!」
ひとりこうして合格者が出た。
それからは後に続けと名簿順に試験が行われ、無事全員の合格が決まったのだった。
* * * *
これは学期末の試験も終わったころの話じゃ。
「アリスさん、アリスさん! 私とアリスさんが助教に昇進するみたいですよ!」
グレイスがそういって研究室に飛び込んできた。
「ほう! そうなのかの? どこでそれを?」
「今日、トーランド教授からそういう話があったんです。昇格の承認には人事部の許可があればいいということでして」
「そうか。わしもおぬしも責任が増えてきたのう。責任を果たせるじゃろうか……」
研究室を任され、助教になってと。ただやれることが増えたと喜べることばかりではないのう。
「大丈夫ですよ。実戦魔術の講義は好評ですし、魔術学部としてもこれからもっと実戦魔術の講義を拡大していく予定なんですから。今度は軍だけでなく、警察からも講義に参加するとか」
「そうなのかの? なら、もっと講義を充実させなければならぬの」
わしの講義が人気なのはありがたいことじゃが、それは同時に魔術によるテロの脅威を皆が認識し始めているということになる。
備えあれば患いなしとは言うものの、実際に脅威がなければ人々は備えようとはせぬ。つまり、またテロが起きるかもしれないという可能性が日に日に高まっておるということじゃ。
それは純粋に魔術を好むものとしてちと辛いものじゃ……。
「あとアイザックさんから話があるそうです。休暇を一緒に過ごさないかということでして。私も誘われているのですが」
「休暇を、かの?」
「そうです、そうです。アイザックさんの家は別荘があるそうなので避暑に行かないかと言っていましたよ」
「ふうむ。休暇中は実家に顔を見せたあとは特に予定はないがのう」
わしもレオ坊も休暇になったら必ず実家に顔を出して父上と母上を安心させておる。それが終わったあとは特にこれと言って予定はない。
「分かったのじゃ。あとでアイザックに返事をしておくよ」
「はい!」
わしはグレイスにそういったのちに必要な書類仕事を秘書と一緒に片付けて、それからアイザックに会いにトーランド教授の研究室に向かった。
* * * *
「アイザック。グレイスから夏の休暇におぬしの別荘に行かないかと誘われたと聞いたのじゃが」
わしは研究室でアイザックを見つけてそう声をかける。
「ああ。よければ避暑に行かないか? この夏は暑くなるそうだからね。レオも一緒に誘うといいよ」
「そうなのかの? では、お誘いに乗らせてもらおうかの」
というわけで、わしはアイザックのお誘いに乗らせてもらった。
「しかし、まずはわしとレオ坊は実家に一度帰って両親に顔を見せねばならん。それからでいいかの?」
「もちろんだ。構わないよ」
「助かるの」
そして、わしはレオ坊にこの話をしておくことに決めた。
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