古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──学期末//海辺の別荘
この夏、わしとレオ坊、そしてグレイス、リリー、アイザックはアイザックの家の別荘で過ごすことになった。
わしらは一緒に鉄道に乗り、アイザックの別荘を目指す。
「おおー。海じゃよ、レオ坊!」
アイザックの別荘は海辺にあるということで、わしらは海の傍までやってきた。
鉄道での旅を終えると馬車に乗り継ぎ、そのまま別荘に向かう。
「ここだ」
到着した場所にあったのは、とてもお洒落な別荘じゃった。
白い壁が美しく、別荘からは海が見える。こんな別荘、わしも持ってみたいのう。
海の向こうには小さな島があり、砂浜が広がっていた。海は青々としており、本当に暑さが吹き飛ぶようじゃよ。
「さあ、ゆっくりしていってくれ」
「お言葉に甘えて」
わしらはアイザックに言われて、別荘の中に入る。
別荘は中も綺麗なもので、調度品は落ち着いており、実に快適そうじゃった。
「さてさて。どう過ごすかの?」
「海! 海で泳ぎましょう!」
わしがそう話を切り出すのにグレイスがそうはしゃぐ。
「グレイス……。おぬし、海ではしゃぐような年齢でもなかろう……」
「でも、せっかく海に来たんですし」
「それはそうじゃのう」
わしも一応水着は持ってきておる。気が向いたら泳ごうと思っての。
「そもそもここら辺の海は泳いで大丈夫なのだろうか?」
と、ここでレオ坊がもっともな疑問を呈する。
海では必ず泳げるというわけではない。潮の流れやそこにいる生き物やらで、危険で泳げない場合もあるのじゃ。
「アイザック。この辺りの海は泳げるのかの?」
「ああ。特に問題はないが、あまり沖の方にはいかないようにはしてくれ。穏やかな海とは言え危険だからな」
「了解じゃ」
アイザックに許可を取って、わしらは水着に着替えて海に行くことに。
わしの水着はサイズ的に子供向けのものじゃが、流石に子供っぽい柄がついたものは避けた。わしとしても花柄ふりふりの水着などは着るつもりにはならなんだ。
「いざ海へ!」
グレイスは随分と派手な水着じゃった。露出も多くて、よくあんなの着れるの……。
「ゆっくりしていきましょう」
リリーは落ち着いたワンピースの水着の上から上着を羽織っておる。
「姉上。海は危険な場所だから気を付けて」
レオ坊も水着姿じゃ。
「うむ。分かっておるよ」
わしらは準備万端で海辺へと向かう。
「おおー! 白い砂浜じゃあ!」
真っ白な砂浜に駆けこみ、わしらはそこから海を眺める。
「やはり海とは美しいものじゃのう……。危険が潜んでおるとしても、どこまでも美しいものじゃあ……」
わしは海は好きじゃ。海には神秘というものを感じる。
「アイザックさんは泳がないのですか?」
「ああ。あまり泳ぎは得意でないし、いざというとき誰かが助けを呼べるようにしておくべきだろう」
「そうですね」
アイザックは涼しそうなラフな格好で、海辺にシートを布いて座った。リリーもその隣に座った。この姉弟も仲がよいのう。
「アイザックさん。あの島には何かあるんですか?」
「特に変わったものはない。ただの島だ。昔は宝でも埋められていないかと思って探検したが、本当に何もありはしなかった」
「へえ」
グレイスはそう言って島の方をじっと見つめた。
「気になるならあとでボートを出してもいいが」
「そうですね。せっかくですし、冒険しましょう!」
今日のグレイスはテンションが高いのう。そういう年齢じゃあるまいし。
「どれどれ海はどのような感じかの」
わしは海で遊ぼうと思い、砂浜を進み、海の水を手ですくう。
済んだ水が美しく、そしてちょっと冷たいのじゃ。
「ほれ、レオ坊!」
「わっ! 姉上!」
わしがすくった水をレオ坊に浴びせるとレオ坊も反撃してきた。
「あー! 楽しそうですね! 私も混ぜてください!」
そこにグレイスも加わり大乱闘じゃ!
わしらは水をかけあっていつの間にかびしょぬれになっておった!
「そろそろ昼食にしないかい?」
わしらが遊んでいるといつの間にか時間は正午を僅かに過ぎており、わしらもお腹が減っているのを認識した。遊びに夢中になっておったの。
一度引き上げてわしらはシャワーを浴びて着替えると食事することに。
「おお。美味しそうじゃのう」
料理はアイザックが雇っている別荘の料理人が作ってくれるもので、海辺の別荘らしく魚介類をふんだんに使ったシーフード料理じゃった。
「アリス。実戦魔術の講義の方はどうだ? 私の聞くところによれば、政府も君の講義に注目しているということだったが」
「うむ。今度から警察も参加するそうじゃ。テロが起きた場合、初動で動くのは警察になるそうじゃからの。この前の学院襲撃事件でも、警察が動き、そして被害を出しておる。その被害を次は出さないようにせねば」
「そうだな。そうなることを政府も望んでいるのだろう」
アイザックの父であるウィリアムは政府の仕事もしておるのだったな。だから、政府の意向は気になるのだろう。
「グレイス。君の方はどうだ? トーランド教授もいきなり研究室を出ていったから、心配していたぞ」
「大丈夫ですよ! 私は実戦魔術の方で研究成果を上げるつもりです!」
「ならばいいのだが……」
グレイスも本当にいきなりトーランド教授の研究室を出てきたからの。それはトーランド教授もグレイスのキャリアを心配するじゃろう。
それからわしらは食事を楽しんだのちにまた海へ戻ったり、本を読んだり、談笑をしたりして過ごした。
* * * *
その日の夜のことじゃ。
わしとレオ坊は海に出ておった。
「姉上。夜の海も綺麗だね」
「そうじゃのう」
青い海は今は黒く、星空が海に映し出されておった。
「……姉上はこのまま大学でキャリアを積み重ねていくつもりなのか?」
「それはわしも悩んでおる。わしの目的は魔術の再興じゃ。そのために必要なことができる場所にいたいと思っておるが……」
学院という狭い世界だけでは、魔術の再興はできぬやもしれぬ。だが、今のところはわしは学院以外で地位がないというのも事実。
「私は姉上がどこに行こうとついていくよ。学院でこのまキャリアを積んでいくとしても、エスタシアで世界魔術連盟に加わるにしても、どのような道にしても。私にとって姉上は何より大切な人だ」
「ありがとう、レオ坊。じゃが、おぬしもおぬしがしたいことをしていいのじゃぞ?」
「姉上を助けることが私の一番したいことだ」
「ふうむ」
わしの我がままにレオ坊を巻き込むのは申し訳ないが、レオ坊が本当にわしを助けたいというならばそれを受け入れよう。
「では、これからもよろしく頼むの、レオ坊!」
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