古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──古図書館//発見
世界魔術連盟からわしに手紙が来たのは、休暇で行った別荘から帰ってきたときのことじゃ。
「ほう。エリオットからじゃの」
差し出し人には世界魔術連盟の名前ととともにエリオットの名前があった。
わしは早速封筒を開いて中身を見る。
「なになに? 世界魔術連盟が進めていた遺跡の発掘許可がついに出て、発掘作業が開始されたとな。今の資料で分かっているところでは、その遺跡には……」
わしは手紙を読み進める。
「なんと! 精霊魔術についてザリオンが記した書が眠っているとな!」
ザリオンはわしの弟子で精霊魔術の使い手じゃった。
そのザリオンが記した本が、その遺跡には眠っているというのじゃ。
「ふみふむ。よければわしらも発掘に加わってはどうか、と」
これは発掘作業に加わらないかというお誘いの手紙じゃったのか。
「もちろん参加するぞ。レオ坊にも知らせておこう!」
今は休暇中ということもあって、自由な時間がある。レオ坊たちを誘って世界魔術連盟の発掘作業に加えてもらおう。
何せ、わしの弟子であったザリオンの本が眠っているのじゃ。興味があるんじゃよ!
* * * *
世界魔術連盟に返事の手紙を出してすぐに世界魔術連盟から旅費と船、鉄道のチケットが送られてきた。
「レオ坊、準備はいいかの?」
「ばっちりだ、姉上」
招待されたのはわしとレオ坊。
グレイスも誘おうと思ったのじゃが、夏の休暇中にやらなければいけないことがいろいろとあるということで断られてしもうた。
ただグレイスも発掘の結果には期待しているということじゃったな。
「では、出発じゃ!」
わしらは以前と同じように船で海峡を越え、鉄道でまずは帝都ベルハルデンを目指す。そこで世界魔術連盟の人間と合流し、発掘が行われている地方に案内してもらう手筈になっておるのじゃ。
船旅を終え、鉄道の旅を終え、ベルハルデンに到着したのは以前の通り。
「アリス・カニンガム様、レオ・カニンガム様ですね」
「おお。おぬしは世界魔術連盟の?」
「ええ。アルブレヒト殿下より発掘現場にご案内するように命じられております。どうぞこちらへ」
「うむ」
駅で世界魔術連盟の人間と合流すると、わしらは別の鉄道に乗り込み、そこからエスタシアの南東部に向けて出発した。
「発掘はどこで行われておるのかの?」
「カルレンツィア地方の南部にある山岳地帯です」
「カルレンツィアというと……以前ベルハルデンでテロを起こしたグループがそんな名前じゃったのう?」
「ええ。カルレンツィア地方は分離独立を目指す民族主義者と帝国中央で争いが起きている場所でもあります。ですが、ご安心を。発掘作業には帝国陸軍の警備もついておりますので」
「ふむ」
カルレンツィアはやはり危険がある場所ではあるようじゃ。
わしが古代帝国で過ごしていたときには民族主義というものはあまり聞いたことがなかったから、あまり理解できておらぬところもある。
ただ古代帝国時代においても帝国には様々な民族がおった。
それが全て仲良く暮らしていたわけではない。帝国に反乱を起こした民族はいるし、帝国も異民族を征服しようとしたことは何度もある。
それが煮詰まったのが民族主義というものなのじゃろうか?
それから鉄道での旅が続き、わしらはカルレンツィアを目指した。
途中、帝国陸軍の検問などがあり、わしらは荷を改められた。こういうことがあるということは、カルレンツィアでは戦争が起きているのじゃろうな……。
しかし、わしらの旅は無事にカルレンツィアに到着するに至った。
カルレンツィアの駅はベルハルデンのそれとは異なる作りで、同じエスタシアという国でありながら、大きな違いを感じさせた。
「アリス、レオ!」
「おお、エリオット! 久しいのう!」
駅ではエリオットが国家憲兵隊の兵士たちとともにわしらを出迎えた。
「道中、何もなかったか?」
「うむ。しかし、ここはやはり危険なのかの……?」
「確かに安全とは言い難いな。この前も爆弾テロがあった」
「そうなのか……」
レオ坊を連れてくるべきではなかったじゃろうか?
「だが、大丈夫だ。今のところ発掘チームに被害はない。早速だが発掘現場に向かおう。既に作業は始まっている」
「了解じゃ」
わしらは国家憲兵隊に護衛された車両で、カルレンツィアの街を通り抜け、郊外に出ると山岳地帯へと向かう。
道路は流石にごとごととしておったが、それでもエスタシア製の自動車はそれを駆け抜けて山岳地帯に設置されたキャンプに到着した。
何もないような山岳地帯の麓にテントがいくつも張られた光景は確かに発掘作業が行われておるのを感じさせた。
ただ土嚢が積まれた機関銃陣地がキャンプの入り口にあるのは、ここがやはり戦場なのじゃということを感じさせていた。
「アレクサンダー先生! そちらが例の?」
「ああ。学院時代の同僚のアリス・カニンガムと弟のレオだ」
キャンプには作業服姿の男女がおり、そのうちひとりが出迎えてくれたのじゃ。
「発掘作業はどの程度進んでおるのじゃろうか?」
「まだまだ始まったばかりだ。かなり大きな遺跡らしく、古代帝国末期のものと思われている。一応地層から年代を判定して確認したが、資料と齟齬はない」
エリオットは車両を降りてわしらを遺跡の入り口に連れていく。
「ここが発掘地点だ」
「これは……!」
発掘地点では既に遺跡の入り口が見えていた。
間違いなく古代帝国時代の図書館の作りをしており、さらにはその入り口には火、風、水、土の紋様が重なった紋章が描かれていた。
これはザリオンが好んだ紋章じゃあ!
「間違いないぞ。ここはザリオンが関係しておる遺跡じゃぞ。遺跡の中には入れるのかのう?」
「そろそろ入れるようになるはずだ」
「慎重にやっておくれ。ここには精霊魔術に関する秘密が隠されておるやもしれぬ」
「もちろんだ」
発掘現場となっているキャンプには、世界魔術連盟の人間だけではなく、どうやら雇われた作業員などもおるらしくひとつの街のように賑やかであった。
発掘はほぼ手作業で行われており、スコップを握った作業員たちが埋まった遺跡を掘り返しておる。
「これまでの遺跡の発掘の経験からして、遺跡内にはガスが溜まっている可能性などがある。その点の安全を確認してから、内部の調査を始めることになるだろう」
「わしらはこの手の発掘作業は初めてじゃ。何か気を付けることはあるのかの?」
「強いて言うならば全てのものが貴重品になるということだ。遺跡に置かれた小石のひとつですら何かを示すメッセージである可能性がある。まずは遺跡内の写真撮影と記録を行い、調査はそれからという手順を守ってほしい」
「了解じゃ」
わしらは発掘の手順を確認したのちに、遺跡の入り口が開けるのが待った。
じゃが、遺跡の調査は既に始まっており、掘り起こされた遺跡の外観に記された紋様や外観から分かる建築様式が、世界魔術連盟の人間たちによって記録されて行った。
そして──。
「ついに遺跡の中に入れるようになった。行こう」
「うむ!」
わしらの遺跡の調査が本格化したのじゃ。
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