古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──古図書館//地下4階層
地下4階層へ向かう際には十分な準備が行われた。
さきの地下3階層では粘液の化け物によって被害が出ている。今のところ死者はおらぬが、用心した方が良いに決まっている。
「さて、いよいよ地下4階層じゃ」
今回はわしが先頭に立ち、カナリアの籠を持って階段を見つめる。
「姉上。気を付けて」
「もちろんじゃ」
レオ坊は心配しておるが、わしは大丈夫だ。
「行くぞ」
そして、わしはゆっくりと階段を降り始め、ランタンの明かりが地下4階層を照らす。そこはやはり図書館が続いており、いくつもの本棚が並んでいるのが見えた。
「さて、今度は何が出てくるのかのう……」
わしはランタンの明かりで周囲を照らしながら、神経を研ぎ澄ませ、これまでの地下階層同様に何かが襲ってくることに備える。
そこで何かが駆ける音が聞こえてきた……!
「レオ坊、皆のもの! 気を付けろ! やはりこの階層にもおるぞ!」
わしはそう警告を発し、いつでも魔術を放てるように準備する。
わしらが身構える中、物音の主がその姿を見せた。
「あれは……!?」
現れたのは巨大なクモであった。
がざがざと音を立ててクモはわしらの方に向かってくる!
「見た目はおっかないが、これは攻撃が普通に通じそうじゃのう!」
わしらは巨大なクモに向けて攻撃を叩き込む。
クモの化け物はすばしっこく動き回って攻撃を回避し、わしらに糸を吹きかけてきおった! その糸をわしは運動エネルギーで迎撃しながら、クモの化け物を叩こうとしたのじゃが……。
「攻撃が命中! ……ん?」
わしの運動エネルギーによる攻撃が命中したと思った瞬間、クモの化け物から何かが湧きだしてきた……?
「姉上! あれは!?」
「不味いぞ! 小さいクモをまき散らしおった!」
クモの化け物から小型のクモが無数にあふれてくる。
小型のクモと言っても人の頭ほどがあるクモじゃ。あんなのに襲われたらたまったものでないのじゃよ!
「レオ坊! クモの親玉への攻撃はおぬしに任せるのじゃ! わしはあのクモの群れを迎え撃つ!」
「了解だ、姉上!」
わしは小型のクモを近づけさせまいと、異界魔術でわしらの周囲に酸の海を生じさせる。小型のクモがそこに落ちると一瞬で蒸発したように溶けてゆく。
しかし、そこはクモじゃ。壁や天井やらを這いまわってわしらに近づいてくる!
「アリス。ここは任せてくれ」
そこで声を上げたのはエリオットじゃった。
「どうする気じゃ?」
「まとめて吹き飛ばす」
エリオットはそう言うと強力な運動エネルギーをわしらの周囲に生じさせて、クモたちを纏めて吹き飛ばし、葬りさったのじゃった!
「おおー! いいぞ、いいぞ、エリオット! この調子でデカい方も叩くのじゃ!」
わしらは再びクモの化け物に対して攻撃を集中させていく。
小さなクモをときおりまき散らしながら、クモの化け物はわしらと戦い続ける。
しかし、粘液の化け物などと違って、攻撃が通じるかどうか分からぬ敵ではない。わしらは容赦なく攻撃を叩き込んでいき、そして──。
「“
レオ坊が青白い刃を放って、クモの化け物を仕留めたのじゃ!
「おお! やったのう、レオ坊!」
「何とか仕留められた……」
わしは歓喜の声を上げ、レオ坊は安堵の息を。
それからクモの化け物は消えてゆく。
「まだだ。小型のクモが残っていないか確認しなければ」
「うむ。異界の生き物じゃからどんな毒があるのかわからぬしのう」
わしらは地下4階層の補強作業を始める前に、まずは地下4階層の確実な制圧を開始した。地下4階層に化け物が潜んでおらぬか確認してゆくと、わしらはあるものを発見したのじゃった。
「……さらなる地下への階段じゃのう」
まだまだこの遺跡は続くようじゃ。
「いつものように見張りを立てておき、補強工事を進めよう。この場所にある書籍も記録したうえで運び出さなければ」
「そうじゃな。まだまだ知識が眠っていると思えば、わくわくするものじゃ」
エリオットの言葉にわしは頷き、さらなる地下5階層のへの入り口に見張りを立て、わしらは地下4階層から書物などを運び出したのじゃった。
そんな折にキャンプにお客様がやってきた。
「やあやあ、諸君! 発掘は順調かね?」
アルブレヒト殿下じゃ。
「はい、殿下。今現在、我々は地下に向けて発掘を進めております」
アルブレヒト殿下の問いにエリオットが応じた。
「うむうむ。地下にはモンスターがいたと聞いていたが本当か?」
「ええ。報告にある通りです。異界魔術で生み出された異界の化け物が、地下には存在しておりました。我々の中にも負傷者などが生じております」
「ふうむ。しかし、どういうわけだろうか。この遺跡を発見したのは我々が最初だと思っていたのだが……」
「それはまだ分かりません。最下層までたどり着けば分かる可能性も」
「そうだな。引き続き発掘に励んでくれたまえ!」
アルブレヒト殿下はそう言って発掘チームをひとりずつ励ましていった。
「アリス! 君はもちろんモンスターを倒すのに活躍したのだろう?」
「活躍と言ってよいかは分かりませぬが、化け物たちとは戦いましたのう」
「そうか、そうか。今度会ったときに仔細を聞かせくれ。楽しみにしてる!」
わはははっとアルブレヒト殿下はそう言って発掘キャンプを去った。
しかし、アルブレヒト殿下が帰ってから暫くして爆発音がキャンプで響いた。
「テロだ! 警戒しろ!」
護衛の兵士たちが慌ただしく配置に着き、発掘キャンプの周りに展開する。
爆弾によるテロが起きたのじゃ。無人の馬車に爆弾を積んで突っ込ませたようで、大きな爆発じゃった。幸いにも負傷者は3名に留まり、死者は出なかったものの、ここが紛争地帯であることを思い知らされたのじゃった……。
「ううむ。どうにか現地の人間と話し合って安全は確保できないのじゃろうか?」
「難しいな。カルレンツィアは分離独立の急先鋒だ。歴史的背景を見れば、彼らはエスタシアの一部であった時代の方が長いのだが、エスタシアには国外に敵が多い。そういう悪意ある外国勢力も影響している」
「厄介じゃのう……」
「それに我々帝国中央に属する人間が、こうしてカルレンツィアの遺跡を発掘していることそのものにも反感は生じている。彼らの言い分を飲むならば、発掘作業を中止しなければいけなくなるだろう」
「それは困るのじゃ……」
確かにカルレンツィアの人間からすれば、この遺跡は自分たちの祖先のものじゃという意識があるじゃろう。
それを彼らが分離独立を目指すエスタシアの政府から支援されたわしらが勝手に発掘するというのは、あまり気分のいいものではないはずじゃ。
じゃが、現状カルレンツィア側に発掘の能力があるという話も聞こえず、そもそも遺跡を見つけたのは世界魔術連盟じゃ。
「どうにか平和になってほしいものじゃのう……」
わしにはただそう願うこと以外、できることはなかった。
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