古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──子供時代//家庭教師襲来
グレイスが家庭教師として我が家にやってきた。
まあ、別にグレイスであると困るというわけでもないのでいいのじゃが、学院の講師を辞めたということだけはちょっと引くの……。
「まずはご両親からお尋ねしたいことがあるとか?」
「ええ。この子たちは6歳から魔術を使い始めたのだけれど、そのことで何かしらの障害を負ったりすることはないのかしら? それが心配で……」
応接室でお茶を出されたグレイスがそう切り出すのに、母上が尋ねた。これはわしも知っておきたかった問題じゃ。何せわしだけではなく、レオ坊も6歳から魔術を使い始めておるからのう。
「全然大丈夫ですよ! 血統魔術師の家庭では、それこそ4歳から魔術の訓練が始まるところもありますから。そのことで障害を負ったという話は全く聞きません」
「そう。ならよかったわ。心配していたから」
母上はグレイスの答えに安堵の息を漏らしていた。
「では、私からもアリスさんたちに質問をいいでしょうか?」
「うむ。答えよう、グレイス」
「あなたが考えている魔術の理論について聞かせてください!」
「理論、か」
確かに魔術を含めていかなる技術にも理論は存在する。蒸気機関や内燃機関にもちゃんとどうしてそれが動くかの理論があったじゃろう?
「ふむ。わしは魔術を
「なるほど。かつて偉大なる魔術師アストリウスが唱えたそれですね?」
「まさに、まさにじゃ、グレイス! 何を隠そうこのわしこそアストリウスの生まれ変わりなのじゃからな!」
わしをいい加減アストリウスの生まれ変わりと認めてもらいたいのじゃー!
「ははは。アストリウスに憧れるのは分かりますよ。私も昔はアストリウスの血が流れているとか空想したりしてましたから」
ガーン。またしても子供の戯言として流されてしまった……。いつになったらわしはアストリウスであると認めてもらえるのじゃぁ……。
「それはともかく
グレイスはわしをアストリウスの生まれ変わりとは信じないものの、優れた魔術師だとは認識してくれたようだ。今はそれでよいだろう。
「しかし、わしが知っておるのは古代帝国時代の古い理論じゃから、何か新しく見つかったことがあれば教えてほしいのじゃ。
「いえ。あまり変わりはありません。アストリウスの理論は完成していました。
しかしです、とグレイスが身を乗り出す。
「
「なんと!
「ええ。それによって自分たちが
「ほお。それは大きな発展じゃのう」
前にも説明したように
じゃが、科学の発達がその状況を覆したとグレイスは言っている。
「かつて、炎がただ燃えている高温の物質という認識でしかありませんでした。しかし、化学が燃焼とはすなわち酸化であると突き止めたのです。鉄が錆びるのと、炎が燃えるのは似たような現象だと突き止めたのです」
「鉄が錆びるのと、炎が燃えるのが同じ!?」
「酸素という物質をやり取りする点で同じなのです。そのように分かってきた自然科学の事象を、我々が見た
「おおーっ!」
驚きじゃあ! 科学は魔術に代替するだけのものではなく、魔術の理解をさらに深めるものじゃったのか!
「ねえ、姉上。これは魔術の授業じゃないの?」
「レオ坊。これも立派な魔術の授業じゃぞ。しっかりグレイスのいうことを覚えておくのじゃ。きっとあとで役に立つ」
「はーい」
レオ坊には少し退屈な話だったかの。
「他にも医学の発達で人体に関わる魔術も生み出されました。しかし……」
「しかし?」
「魔術師そのもの数が減少傾向にあるせいで、発達は止まっているのです。私が語った
そう語るグレイスは本当に悔しそうであった。
その気持ちはわしにもわかる。魔術はわしの人生そのもので、わしの全てを捧げてきた。なのにそれが未来では役に立たない陳腐化した技術として扱われているのは、どうにもやり切れぬ話じゃぁ……。
「では、わしらで魔術を再興しようぞ、グレイス。魔術が有用なものであると示し、人々の関心が魔術に集まるようにしようではないか」
「ええ、ええ! 是非ともそうしたいと私はずっと思っていたのです! ですが、問題はいろいろとあります……」
「問題とは科学の方が利便性が高いということか?」
「それもある程度あるのですが、魔術が閉じたコミュニティのものになっているということなのです。そう、魔術師になるのは血統魔術師の家系の人間だけになってしまっているという問題です」
「そうじゃった。この時代では魔術は血統で使える使えないが決まるという考えがあるのじゃったな」
最初にグレイスもわしとレオ坊が魔術師の血に連なるものだと考えておったな。
「血統魔術師たちは他所の人間が魔術界に入ってくるのを嫌い、閉鎖的なコミュニティを作ってしまいました。そのせいでだんだんと魔術師の人口は減少し、その発展も衰退へと変わってしまったのです」
「なんと。魔術の才は血筋では決まらぬぞ。魔術師たる資格は親から渡されるものではなく、ただひたすらに自らの努力あるのみじゃというのに。どうしてそのような考えが広まってしまったのか……」
「発端は私にも分かりません。ですが、今の魔術界は血統魔術師が支配しており、彼らが全てを取り決めてしまいます。近年では彼らは新しい考えや人材も拒絶するようになっており、魔術はこのままでは衰退するばかりです!」
「困った話じゃのう……」
技術とは大勢で分かち合った方が発展する。前世のわしも貧富の差を気にせず、異民族であろうと才能があれば弟子にしたものじゃ。
「しかし、しかしです! もしも、血統魔術師でもなく、幼いころから魔術を使いこなした子供がいたら? 自分たちこそが最高の魔術師と思っている血統魔術師たちよりも高度な魔術をその子供たちが使うとしたら?」
「考えは変わるじゃろうな」
なるほど。どうしてグレイスがわしとレオ坊の先生になりたがったか分かったぞ。
「そうです。アリスさんとレオさんには魔術界の未来を背負っていただきます。どうか魔術の発展のために、その力をお貸しください!」
「無論じゃ。わしとレオ坊に任せておけ!」
グレイスが改めて頭を下げるのにわしは胸を叩いて請け負った。
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