古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──世界魔術連盟緊急会議
わしらが図書館の遺跡から発掘したのは、途方もない知識と歴史の生き証人でじゃった。わしらはそれを世界魔術連盟本部へと移動させた。
「このことにアルブレヒト殿下が強い関心を示している」
ベルハルデンの世界魔術連盟本部にてエリオットがそう告げる。
「それは当然じゃろうな。殿下は魔術にとても興味を持っておいでじゃからのう。わしとしてもザリオンのことを紹介しておきたい」
わしはそう言って隣にいるザリオンに視線を向ける。
ザリオンは興味深そうに世界魔術連盟本部の窓から見えるベルハルデンの景色を眺めていた。あやつにとっても数千年後の世界というのは興味深いのじゃろう。
「そうだな。アルブレヒト殿下には世界魔術連盟に多大な出資をしていただいている。今回の発掘の件はしっかりと説明しなければ」
エリオットはそう言って頷き、アルブレヒト殿下にことを報告することになった。
「姉上。ザリオンさんは今どのような状況にあるのだろうか……?」
「難しいところじゃのう。精霊に記憶と人格を移植する手段など、わしが生きていたときは生まれておらなかったからな……」
不老不死への憧れは古代帝国時代から存在したことじゃ。
しかし、それを実現できた人間はおらぬ。不老不死は夢物語じゃった。
じゃが、ザリオンのやったことは不老不死への手段ではないのか?
「ボクのことに興味があるのかい、レオ君?」
ザリオンはそう尋ねる。
「ああ。あなたはどういう状況にあるんだ?」
「それを説明するのは簡単ではないね。だけど、説明はしておこう」
そう言ってザリオンは語り始めた。
「まず本来のボクと今のボクに連続性はない。かつてのボクが精霊になったわけではなく、ただ記憶と人格を精霊に移植しただけに過ぎない」
だから、皆が望んだような不老不死ではないよとザリオン。
「そして、この精霊は炎の精霊サラマンダーをベースにしているもので、古代帝国時代から生きているものだ。長生きしているだけあって、頑丈だから、多少環境が壊れていても大丈夫」
「そうなのか。なら、今のあなたは精霊魔術を使えるのか?」
「当然だよ。ほら」
ザリオンはレオ坊にそう言い、炎を指先から立ち上らせた。
「凄いな。それだけに今は精霊が絶滅して、精霊魔術が途絶えてしまったことが残念でならない……」
「そうじゃのう。これから精霊魔術をよみがえらせるべく、行動を起こしていくつもりじゃが、それには結構な時間がかかることじゃろうしな……」
わしは精霊魔術を復活させるために環境保護などに取り組むつもりじゃが、それには莫大な資金が必要になるじゃろうし、一筋縄ではいかぬじゃろう。
「精霊の復活についてはボクに任せてください、アストリウス様。整った環境が得られれば、すぐにそこに精霊たちを宿して見せますよ」
「うむ。頼りにしておるぞ、ザリオン」
ザリオンの頼もしい言葉にわしは思わず笑みを浮かべた。
* * * *
それからアルブレヒト殿下も出席して、図書館遺跡で見つかったことについての報告会議が行われることになった。
「──以上、カルレンツィアの図書館遺跡では異界魔術、精霊魔術、そして一般魔術についての膨大な資料が発見されました。これはこれまで発掘された遺跡の中で、最大の魔術に関する発見です」
「おおっ!」
エリオットの報告を聞いてアルブレヒト殿下は満面の笑みじゃ。
「それから遺跡には資料だけではなく、古代帝国時代の魔術師そのものも存在しました。こちらはザリオンさん。古代帝国時代の精霊魔術の使い手で、今は精霊に記憶と人格を移植しています」
「初めまして、皆さん。ボクはザリオンです。正確にはザリオンの複製ですが」
エリオットの紹介を受けて、ザリオンがそう挨拶する。
「なんと! あの偉大なるザリオンなのか!?」
アルブレヒト殿下たちがざわめく。
「はい。さらに言えばザリオンさんの証言により、アリス・カニンガム女史が偉大なるアストリウスの転生した姿だということも明らかになりました」
エリオットはそう言ってわしの方に視線を向け、わしは堂々と頷いた。
「それは……本当なのか……?」
「事実だよ。あの方は魔術の開祖である偉大なるアストリウス様だ。ボクの師匠であった人でもある」
アルブレヒト殿下が身長に尋ねるのにザリオンはそう断言。
「何ということだ。その、てっきりあれはジョークの類かと……」
「うむ。仕方ないのじゃ。わしは今ではこんな姿じゃしのう」
皆が気まずそうにするのにわしはそう言っておいた。
この姿でアストリウスを名乗っても信じてもらえぬのは分かっておったしな。
「素晴らしい! アストリウスにザリオン! 古代の偉人たちと同じ時間を過ごせるとは何という素晴らしいことだろうか!」
アルブレヒト殿下は立ち上がってそう熱を込めて語った。
「偉大なるアストリウスよ! この時代に何を望むのだろうか!?」
そして、彼はわしにそう尋ねてくる。
「わしの願いは変わっておりませんぞ、殿下。わしの願いは魔術の再興。それだけなのですじゃ」
わしはその問いにこう答えた。
「であるならば、我々世界魔術連盟が全力で君たちを支援しようではないか! 必要なものがあれば何だろうと準備しよう!」
おおー! アルブレヒト殿下がここまで言ってくださるとは!
「わしは以前から教育による知識の普及と保存、そして自然環境の保護による精霊の保護を願っておりますじゃ。教育という面ではどのようなことが望めますかの?」
「そうだな。今ある魔術の教育機関を強化するか、それとも新しく学校を作るかだ」
アルブレヒト殿下はそう答える。
「それではわしが在籍しているエルダーグローブ学院の魔術学部に力を入れることも可能なのでしょうか?」
「もちろんだ。君をアストリウスと知らずとも、才能を見抜いた人間がいる教育機関ならば是非とも支援すべきだろう」
「ありがとうございます、殿下」
おっと。わしらはまだ遺跡で分かったことを全ては告げておらんかった。
「殿下。その前に申しておくことがありました。魔女学会についてです」
「あのテロリスト組織か。何かあるのだろうか?」
「あれはわしの弟子であったルナフィーナが作ったものなのですじゃ。彼女はどういうわけか魔術の継承を妨げようとしていたようなのじゃ」
「ルナフィーナ……。確かアストリウスの弟子のひとりであるとは記憶していたが、あまり歴史に名を残していない人物だな」
しかし、とアルブレヒト殿下。
「ルナフィーナは数千年まえの人間だ。今はもう存在しないのだろう?」
「それは分かりません。何せこうしてザリオンが現世に生き返り、わしが転生しているのですからのう」
「それはそうだな……」
もはや何が起きてもおかしくないというのが今の認識じゃ。
「魔女学会だけは異界魔術を継承してきた痕跡があります。今後も彼女たちが魔術が広がるということを阻止しようと言うならば、わしらと敵対することは避けられないでしょう。覚悟と備えが必要ですじゃ」
わしは列席者たちにそう言ったのじゃった。
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