古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──アストリウス・アカデミー//提案
「おや? 世界魔術連盟からの手紙じゃ」
学院に復帰したある日、世界魔術連盟からわしに向けた手紙が届いた。
「なになに? 『アルブレヒト殿下がエルダーグローブ学院を訪問され、同学院の魔術学部に対する支援を行う相談をされます。是非とも御同席ください』と」
おお。アルブレヒト殿下がエルダーグローブ学院に!
「グレイス、グレイス。学院に再びアルブレヒト殿下がいらっしゃるそうじゃぞ」
「おおー! そう言えばアルブレヒト殿下は世界魔術連盟として教育の拡充に力を入れてくれるという話でしたね」
「そうじゃ。それで新しい教育機関を作るか、今あるものを拡充するかという話じゃったのだが、できればわしが在籍しているエルダーグローブ学院の拡充をと求めたのじゃ」
「もし、この学院の魔術学部が拡充されるとなると、どうなるのでしょうね?」
「まだ分からぬのう」
わしらは期待を胸にわくわくしながら、アルブレヒト殿下が訪れるのを待った。
* * * *
そして、アルブレヒト殿下が訪れる当日。
今回は公式な訪問らしく、アルビオンの警察などが学院でしっかりと警備を固め、教職員たちが出迎える中でアルブレヒト殿下はいらっしゃった。
「アリス、アリス! それにレオ! 会いたかったぞ!」
「ようこそ、アルブレヒト殿下」
アルブレヒト殿下は魔術学部のわしの研究室にいらっしゃると、大きな声を上げてわしらとの再会を喜ばれた。
「さて、今回は君たちに会いに来ただけではないのだ。手紙で知らせておいた通り、学院への支援の相談をするためにやってきのたのだよ」
「ええ。聞いております。理事長や学部長のトーランド教授と話し合うのですかの?」
「そうなるな。私には大きな構想がある。このエルダーグローブ学院の魔術学部を世界的な魔術教育の中心地にするという考えだ!」
「おおー! しかし、それは一体どういうものなのですかのう?」
「うむ。これを見たまえ!」
そう言ってアルブレヒト殿下は分厚い紙の束をわしに差し出した。
「……アストリウス・アカデミー……?」
「そう! 伝説の魔術師の名を冠した、伝説の魔術師その人が在籍する学校だ!」
「何と……」
アストリウス・アカデミーとは。何とも凄い話になってしまっておる!
「し、しかし、本当にそのようなことが通るのですかの?」
「もちろんエルダーグローブ学院の意見も聞かなければならない。彼らが拒めば、我々としても手を引くことになるだろう。だが、伝説のアストリウスの名を、正当性を持って授かる機会を彼らが逃すとは私は思えない」
アルブレヒト殿下は自信満々にそう言っておった。
「とは言え、まずは話を聞いてみねばならん。君たちにも同席してもらいたい」
「もちろんですじゃ」
わしらは早速アルブレヒト殿下とわしらは設けられた理事長とトーランド教授との話し合いの席に出席することになった。
場所は学院の応接間で、理事長たちはアルブレヒト殿下を頭を下げて出迎える。
「ようこそ、殿下。この度は当学院を訪れていただき光栄です」
理事長は緊張した面持ちでそう言ったのじゃった。
「私もこのように優れた魔術の教育機関を訪れられるのは光栄だ」
アルブレヒト殿下は微笑み、着席した。
「さて、この度の訪問の目的は事前に通知していた通りだ。世界魔術連盟の理事長として、この学院の魔術学部を支援したい。ここを世界中から訪れる魔術の魅力にひかれた学生たちを教育する一大拠点にしたいのだ!」
「おおっ!」
アルブレヒト殿下の言葉に理事長が驚きの声を上げる。
「資金的な援助から人材面での支援まで、我々世界魔術連盟は全力で支援しよう。このエルダーグローブ学院魔術学部をアストリウス・アカデミーとして再編成するのだ」
「アストリウス・アカデミー……。た、確かに当学院の魔術学部にはアストリウス氏──というよりもアリス・カニンガム女史が在籍しておられますが……」
「そうだ! 魔術史を語るうえで外すことのできない英雄アストリウスの名を冠した教育機関を作り、民衆にアピールするのだ! 魔術の楽しさとその可能性を!」
アルブレヒト殿下はそう熱く語ったのじゃった。
「どうだろうか? 名前の変更を含めて、我々の支援を受ける気はないか?」
「トーランド教授。あなたから意見はありませんか?」
ここで理事長からトーランド教授に意見が聞かれる。
「私としては反対する理由は特にありません。魔術学部は年々学生数が減少しており、将来に魔術を継承するという面において、その役割を果たせなくなりつつありました。今回の世界魔術連盟からの提案でそれが変わるならば何よりです」
「確かに魔術学部の志願者は減少傾向にありますな」
学院の襲撃などの件で魔術によるテロに対抗しなければという危機感は生まれたものの、まだまだ魔術を科学と同じレベルで尊重しようという空気はないのじゃ。
「であるならば、是非とも我々の申し出を受けてほしい! どうだろうか?」
「一応理事会で審議することになるかと思いますが、私の方からも強く勧めておきます。理事会も殿下の仰ることに協調するはずです」
「うむ。よろしく頼む!」
理事長はそう言って緊張しながらも笑い、アルブレヒト殿下は理事長の返事に満足そうにしておった。
「では、具体的な支援について話しておこう」
アルブレヒト殿下がそういうと侍従が理事長やわしらに資料を配る。
「まず私が提案するのは北部に精霊魔術の研究施設を新たに作ることだ」
「精霊魔術の……?」
わしは聞かされていなかった話に首を傾げる。
「うむ。精霊魔術は肝心の精霊が自然破壊で姿を消してしまっている。そこでアルビオン北部のまだ自然が残る場所に研究施設を作り、そこで自然環境の回復を図りながら、精霊の復活を目指すのだ!」
「なるほどですの!」
いきなり全世界で自然環境を回復させようとしても難しい。
だからまずは北部の限られた場所を回復させ、そこで精霊の復活を目指す。段階的でとてもいい計画邪と思うのじゃ。
「この研究施設の建設にはザリオン氏にも手を貸してもらいたい。精霊魔術の使い手であったザリオン氏ならば、どのようにすれば精霊が再びこの世界に宿るかということについて知識があられるはずだ」
「ええ。ボクも精霊魔術の復活は悲願です」
精霊魔術のことはザリオンに任せれば問題ない。それは間違いない。
「他にも提案したいことはいろいろとある。世界魔術連盟との共同研究や発掘、それに国際的な人材交流などだ。詳しくは資料を読んでくれたまえ!」
アルブレヒト殿下はそういって説明を終えたのじゃった。
「実に、実に興味深い提案だと思います、殿下。このような提案を理事会が断ることはないでしょう」
「それは何よりだ!」
理事長は学院に多額の投資が来ることに喜んでおる様子じゃった。
「私としても精霊魔術の復活には興味があります。魔術学部の責任者としてできる限りのことをしましょう」
トーランド教授もそう言ってくれたのじゃ。
「では、私は暫くの間、アルビオンに滞在するか理事会の返事を待っているよ!」
アルブレヒト殿下はそう言い、わしらとともに応接間を出た。
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